171 ________________ ‐2nd part‐
文字数 1,368文字
サイトでのDGメンバー同士という関係も、上辺を変えた出会い系サイトで知り合ったバカップルへと曲解され、根上が勝庫織莉奈へ緑内の殺人教唆を行ったという極言が、まるで二つの事件の濫觴 であるかのごとく広まった。
今度ばかりは、週刊誌もあることないこと一斉に書き並べ、各誌の広告や表紙に踊った惹句からでも、朧げなストーリーが組みあげられてしまうほど。
それがまた、独り歩きに瀰漫 を続けて、人人の野次馬根性をくすぐりまくる筋立てとなっていった。
──初恋相手だった根上からいいように玩 ばれ、苛虐趣味の狎奴 と化していた勝庫織莉奈は、根上に捨てられたくない一念で緑内を襲撃した。
根上は、成績で緑内に負けるわけにはいかない、必要な勉強時間を割いてまで、勝庫織莉奈と遊んでなんかいられない。
根上が、そう勝庫織莉奈へニオわせれば、もはやそれは教唆も同然。
緑内を殺せば、もっと根上に会ってもらえると、うら幼い勝庫織莉奈が、凶行に走ってしまったに違いない──。
そんな、チャチな愛憎劇の典型が、事件のあらすじとされている。
何せ、在栖川の附属あがりが二人も絡むし、さらに理工学部の学生ならば、充分あり得るという思潮が強く、そこには、大学自体への非難も交えてコきおろそうって意趣までが窺えてくる。
──緑内が殺されて、根上は、勝庫織莉奈の態度から疑念を懐き、焦り、悩んだ。
それで三月一二日、根上はとうとう、勝庫織莉奈の地元まで出向くことにした。
クルマに乗せて引き廻しても、何も語ろうとしない勝庫織莉奈に、根上はいつもの手を使うことにする。
雑木林へ連れ込み、ダクトテープで木に縛りつけて甚振 る、なんてセンセーショナルにフザケた手口だ。
勝庫織莉奈にしても、それは心待ちにしていたことだから、とされちまっている。
結果、それが高じて、根上は変質的とも言える、それまでよりもハードな拷問に及んでしまった。
それゆえ、包丁を奪いとられて反撃を受けた。全てを白状した勝庫織莉奈を、木から下ろした際に、油断が生じて、ケダモノ根上の息の根まで止めてしまった勝庫織莉奈は、やはり極度のショック状態。
それに加えて、罪悪感と受けた傷からの羞恥心で、助けを求めるなんてことは考えられず、自殺を選んでしまったのだろう──。
誠にナンセンスながら、草豪が語る中でも、それが事件の全容。世間大方の、臆見にまで成りあがっていることまでもがカンジられた。
無論、現場である両脇が広大な雑木林という道端に、根上と勝庫織莉奈の、二人きりしかいなかったことが大前提なんだけれど。
そのスグ手前はアスファルトの道路なので、室内ならまだしも、強い風に吹き晒されて、証拠という証拠が、朽葉や土埃とともに舞い散ってしまう場所での惨事。
その、第三者の存在を証明する決め手は、ないに等しい。
当然、緑内が殺されるまでもが洗いなおされた。
犯行当日、勝庫織莉奈にとっては学習塾に行く曜日であったのだけれど、今月に入ってからはサボりがちになっていて、まさにその日もサボっていた。
そうなると勝庫織莉奈は、放課後から帰宅まで、六時間以上もほっついていたことになる。
彼女のアリバイになるような証言は、全く得られていないため、東京に出て来て、緑内を殺害してから家に帰ることは、充分可能と言えるのだった。
今度ばかりは、週刊誌もあることないこと一斉に書き並べ、各誌の広告や表紙に踊った惹句からでも、朧げなストーリーが組みあげられてしまうほど。
それがまた、独り歩きに
──初恋相手だった根上からいいように
根上は、成績で緑内に負けるわけにはいかない、必要な勉強時間を割いてまで、勝庫織莉奈と遊んでなんかいられない。
根上が、そう勝庫織莉奈へニオわせれば、もはやそれは教唆も同然。
緑内を殺せば、もっと根上に会ってもらえると、うら幼い勝庫織莉奈が、凶行に走ってしまったに違いない──。
そんな、チャチな愛憎劇の典型が、事件のあらすじとされている。
何せ、在栖川の附属あがりが二人も絡むし、さらに理工学部の学生ならば、充分あり得るという思潮が強く、そこには、大学自体への非難も交えてコきおろそうって意趣までが窺えてくる。
──緑内が殺されて、根上は、勝庫織莉奈の態度から疑念を懐き、焦り、悩んだ。
それで三月一二日、根上はとうとう、勝庫織莉奈の地元まで出向くことにした。
クルマに乗せて引き廻しても、何も語ろうとしない勝庫織莉奈に、根上はいつもの手を使うことにする。
雑木林へ連れ込み、ダクトテープで木に縛りつけて
勝庫織莉奈にしても、それは心待ちにしていたことだから、とされちまっている。
結果、それが高じて、根上は変質的とも言える、それまでよりもハードな拷問に及んでしまった。
それゆえ、包丁を奪いとられて反撃を受けた。全てを白状した勝庫織莉奈を、木から下ろした際に、油断が生じて、ケダモノ根上の息の根まで止めてしまった勝庫織莉奈は、やはり極度のショック状態。
それに加えて、罪悪感と受けた傷からの羞恥心で、助けを求めるなんてことは考えられず、自殺を選んでしまったのだろう──。
誠にナンセンスながら、草豪が語る中でも、それが事件の全容。世間大方の、臆見にまで成りあがっていることまでもがカンジられた。
無論、現場である両脇が広大な雑木林という道端に、根上と勝庫織莉奈の、二人きりしかいなかったことが大前提なんだけれど。
そのスグ手前はアスファルトの道路なので、室内ならまだしも、強い風に吹き晒されて、証拠という証拠が、朽葉や土埃とともに舞い散ってしまう場所での惨事。
その、第三者の存在を証明する決め手は、ないに等しい。
当然、緑内が殺されるまでもが洗いなおされた。
犯行当日、勝庫織莉奈にとっては学習塾に行く曜日であったのだけれど、今月に入ってからはサボりがちになっていて、まさにその日もサボっていた。
そうなると勝庫織莉奈は、放課後から帰宅まで、六時間以上もほっついていたことになる。
彼女のアリバイになるような証言は、全く得られていないため、東京に出て来て、緑内を殺害してから家に帰ることは、充分可能と言えるのだった。