132 _____________ ‐3rd part‐

文字数 1,202文字

 しかもそれは、オレに、ミラノさんあしらいでも年季の違いも見せつけてくれる。

「……ん、ゴメンね。ジェレさんもすみませんでした。たぶん、もう少し時間が経ったら、その愉しさってヤツが、実感できるんだと思いますけれど」

「いいえ、私はもう充分愉しませていただきましたから。それよりも、早く跡を追い駆けなくてよろしいのかしら? バッグやら何やら、全部置いて行ってしまって」

「そうだよ。それじゃあ水埜楯、ヴィーの追撃‐捕獲作戦の開始開始だよっ」

 作戦って……まあ、ヴィーが遁走(とんそう)しやがったせいで、歓喜を表に出す(いとま)もなくて、ミラノさんたちには悪いことをしてしまったし……けれど、案外オレ以上に、ヴィーの方が度肝をぬかれていたとも考えられるな。

 わかるわかる、それでオレよりも先に思考回路がショートしちまったか。
 オレも、ヴィーが特待生だと知った時には、こめかみ辺りからブスブスと黒煙が立ち上るくらい、シナプス間に異常電流が駆け廻ったもんなぁ。

 よ~し、ヴィーの追撃どころか撃破‐撃墜‐撃沈だっ。徹底的に動揺させて、課題レポートを書く気力を、完全に喪失させてやろうじゃん!

「水埜楯、不気味不気味ぃ。なんか壊れた笑顔になってるんだよ」

「え? いや別に、あっそうだ。ミラノさん、オレもこのスーツとかどうすればいいの?」

「どうって? 言ってる意味がわかんないんだよ、もっともっとわかるように考えて言って」

「う~んとね、そのぉ、スグに返さなくてもいいのかなぁってこと。返すにしてもクリーニングに出すだけじゃ済まないでしょ?」

「なーんだモォ、そんなこと気にしちゃってるから全然愉しめないんだよ。水埜楯もヴィーも野暮野暮なんだからぁ」

「だって、そりゃ気になるでしょ。これもヴィーのあの服も、オレにしてみれば存在する世界は一緒でも、格とケタが違うんだからさぁ」

「遅ればせながら、私からのバースデイプレゼントだとでも思って思って。それと、水埜楯の部屋を占領しちゃってるお礼なんだよ」

「へ? って、くれちゃうのこれっ──」

「ウンウン、そうやって驚いてくれなくちゃだよ。でも気にしちゃダメダメ。それはもう袖や裾を水埜楯に合わせてあるんだから、返されちゃっても、逆にそのコたちが可哀想なんだよ。水埜楯が、ほかの時でも愉しんで着てくれればいいんだよ」

「……うん、わかったよ。本当に色色ありがとうね」

「ウンウン。でも、クリーニングにはちゃんと出しておいた方がいいんだよ」

「勿論。帰ったら里衣さんに聞いて、丁寧に扱ってくれるクリーニング屋にちゃんと出すよ。ちゃんとして大切にする」

「大切にしてくれるのは嬉しいけど、仕舞い込んだらダメダメなんだよ。それにまたその内、今日みたいに着なくちゃならないかもしれないもんねっ」

「…………」

 冗談にしてはキッツいなぁ。
 ミラノさんのこういうところ、マジで葉植さんに似ているかも……ブラックとダークの違いなだけで。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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