165 _________________ ‐2nd part‐

文字数 1,153文字

 それを、男子連中がそのまま起こさず、上婾さんの仕事を分担して、何事もなく片づけたために、働きとおした筌松さんは、それをうち明けられてデスペレート(自棄)を起こしたみたい。
 なんか、厄介なところへ居合わせちまったなぁ。

 この二人は関係なさそう、とり敢えず、さっさとハスカップ100を二人に奢って、閲覧室に下りてみようか。
 それでも違ったらトレーニングだ。
 ミラノさんの指示ミスだったら、また電話がかかってくるだろうし……。

 たたくのはやめたものの、テーブルの上で、今度は両手万歳状態でグレ続けている筌松さんと、律儀なんだか、途方に暮れているだけのか? よくわからない上婾さんをそのままに、自販機へ向かう。
 こんな風に手に負えない時は、不自然だろうと、黙っているのが得策だからねぇ。

 そして、ちょうどハスカップ100のボタンを押した時だった。

「あ~ら水埜じゃない、この期限日になって調べ物? やっぱり、あのもらったって言うデータ、怪しくカンジてきちゃったんでしょ?」

 そう驕傲(きょうごう)な口調で言ってきた草豪の後ろには、剣橋と金樟もいるという鬼ヤバさ!
 今まで閲覧室にいたようで、階段で上がって来たところだった。

 しっかし、思わず刮目(かつもく)しちまったっ。
 金樟だけでなく、草豪や剣橋までもがセイレネスのジーンズを穿いていやがる、それもオレのより高価なラインのヤツを。
 もしや、上に着ているジャケットやらブラウスやら、腕に掛けてるスプリングコートまでがセイレネスだったりして……。

 特に金樟の、この時季にぴったりな風合いをしたシャツブルゾン、あれはフル装備の軽自動車とほぼ同一価格、ディアスキンを使った製品染めのだ!
 金樟なら、何の躊躇いもなく買えるんだろうけれど羨ましいぃ~。ミラノさんたちに協力している内に、剣橋と草豪までがセイレネスに魅了されたってかぁ?

 富力任せの脅威に愕然としているオレへ、剣橋は「おはよう」と、義務的にでも挨拶をしてくれたものの、

クソ金樟は、スマホ画面を見たままで、今日も視線すらオレに上げやしない。

 でも、今まで閲覧室にいたってことは、こいつらもレポートを仕上げての徹夜明けってことか?
 そして、まだ川溜と江陣原はそれどころではなく、レポート提出を放棄しちまったということなんだろう……。

「おはよ。剣橋も飲むか? 眼精疲労に効くみたいだぜ」
 オレとしても、一応まともな対応をした剣橋にだけお義理で返す。

「そうね、ではお言葉に甘えて御馳走になろうかしら。ね、眞弓。りんもメッセージのチェックはあとになさいよ」

 げっ……毎度同様、無下に断るとばかり思ってたのに、まさか、こんな単なる冗句にノっかってきやがるとは!

 もしや剣橋、睡眠不足による脳内麻薬の分泌しまくりで、ナチュラルハイかぁ?
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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