149 ____________________ ‐2nd part‐

文字数 1,489文字

 

? 

と、再び念じる。
 ──それでもミラノさん、やっぱり顔を向けてはくれやしない。

 ミラノさんのESPについては、本人でさえよくわかっていないから、オレなんかには判別のしようもない。
 けれど、

「TV番組でやっているみたいに、超能力で、緑内の事件を解決できないもんだろうか?」

 そう根上たちにきり出して、関連する情報の収集を試みたところ、全くの赤の他人にもかかわらず、その特定的な出来事を、所持品だとか個人データといった誘導物もなしに、リモートヴューイングやサイコメトリーなどの透視ができるなんて話は、三人も聞いたことがないと口をそろえた。

 となると、ミラノさんが感応した緑内を殺した犯人についての情報というのは、やはりテレパシーになりそう。
 プリコグニションやレトロコグニションは、正夢やフラッシュバックに代表されるように、映像としての形態を取るそうだから。
 緑内の、今まさに殺されようとしていた意識か、犯人の殺害後の回想を拾った可能性の方が高いんじゃないだろうか?

 そして精神感応能力、所謂テレパシーは、ESPの中でも、最も科学的な屁理屈で説き明かしができてまう能力と言えるみたい。

 全ては電磁力で(かた)がつく。
 あるのは事実でも、貴重な研究予算を割いてまで証明する価値はない。関節がポキポキ鳴る理由が今世紀に入って解明されてきたように、その内誰かが、研究主題のサブセットとして答えに辿り着くだろう、そんなぞんざいな位置にあるようだ。

 けれど、とり敢えずテレパシーは実在する。
 その論拠として根上は、人間が帯電する仕組みと、愛犬が御主人様の帰宅を少し前から察知して、玄関へ出迎えに立つという現象を引き合いに出して、オレに説明をしてくれた。

 超能力のもう一分野である念動力を主意としたPK能力は、まだ理論的に統一されていない核力から重力まで、四つの力全ての相互作用を捏ね繰りまわさないといけなくなるので、それに比べればテレパシーなんか朝メシ前と言ったノリだったし。
 物理アレルギーのオレとしても、ミラノさんの異能がテレパシーで助かった。あの三人に量子力学やら物性物理学やらから始められては、堪ったもんじゃない。

 人間も、それぞれ個別の周波数帯を有する電磁波を発生する。それは、帯電に関する実験によって証明されている事実だった。
 人は、動くことで帯電と放電を繰り返す、わかり易い例が歩行運動。

 一歩を踏み出した際に、まず踵が地面と接触帯電し、次に足裏が圧力帯電および摩擦帯電、さらには爪先が地面を蹴る瞬間に、剥離帯電と同時に蓄えた電気を放電して、歩行中の人体の電気量は絶えず変化し、電磁波を発生させていることになる。

 その電磁波は、微弱ながらTV放送用電波の約五倍に相当して、歩き方を変えてみても、個人の電磁波の特徴は、ごまかすことができない声紋や指紋に匹敵する固有性があるなんてことまで言っていた。

 そして、ただ可愛がられているだけでなく、御主人様と堅固な絆で結ばれているイヌは、主人のさまざまな動作を、電磁波のパターンとしても記憶していて、主人が家に帰って来ることを知覚できる。そんな説が根上たちのイチオシだ。

 そうした現象は人間にも、噂をすれば影とか以心伝心という表現でもって、生半(なまなか)に理解されてきた。
 親しい相手ほど、無自覚ながら、電磁波のパターンを深層心理にしっかりと記憶しているために、その波長は捉え易い。
 近づいて来るとか、感情の高ぶりなどで、出力がより強まっている場合に、その相手の、存在や思念をキャッチできたと解釈ができる。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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