269 それでは一曲、はりきって聞いていただきましょう ‐1st part‐
文字数 1,362文字
「今までのが事実と証言に基づいた推理だとしてー、これはボクの完全な臆測だけどー、僊河青蓮以外の死体を隠滅したのも、まーたその~、とり巻き連中だったんじゃーないのかな? ヴェンデェッタ氏が帰った時には、全てがキレ~に片づいてたとか」
「……で? えっと、どうなります?」
「とり巻きたちから、都合のいー捏ちあげを聞かされたとしても、氏は歴とした、繊維工学のテクニカルエキスパートだからね。妻の死因に、不審は必ず懐くと思うー、娘たちの様子がおかしーことにもね」
「でしょうけれど……」
がしかし、それで結局、ケーサツには通報しなかったのか……したところで、やはりどうにもならないから。
「その裏付けになるとも考えられるけどー、ヴェンデェッタ一家は、暮らしてた屋敷まで処分して、ミラーノを離れているんだよ。姉妹を別別にする必要がまずあったしー、たぶんミラノ嬢よりも、トリノ嬢の精神状態の方が、深刻だったんだろーね」
「……ミラノに、操られちゃう、精神を乗っ取られて殺人の、その、実行犯にさせられちゃったことになるからですか? トリノさんが」
「そー。そののち四年ほどして、ヴェンデェッタ氏とトリノ嬢だけ、パリからミラーノへ戻って来た」
「って……それにはどう言う意味が?」
「以前とは違って、ミラーノでも中心街に本社ビルを建て替えて、そのペントハウスに住んでるー。それで、僊河青蓮だけでなくー、氏やトリノ嬢までもが、ほとんど街で見かけられなくなったのー」
「出歩かなくても、って言うより、見かけられずに済むように、便利なトコへ、住みなおしたってわけですか、逆に……」
「今回の探偵旅行ではー、大きな成果、姉妹たちの父親ロベルト・ヴェンデェッタ氏には、直接面会することが叶ったー」
「凄っ……ですね、それはぁ」
「怱忙 だろーに、また姉妹から言づかって、日本からお土産に、大人気の大吟醸を持参したーって言ったら、快ーく社長室に通してくれた。娘たち思いのいー人だったよ」
「……そうなんですか? 本当のガチに?」
「ウン。あれなら充分、まだ幼い娘たちの罪くらい隠蔽しちゃいそーだった。僊河青蓮についての嘘言 や芝居も、実に堂に入ったモノだったしー」
「……充分って、そんな……」
セイレネスブランドが誕生して、今年でちょうど一〇年……数字的には合致する。トリノさんは、セイレネスのためにパリから戻ったのか……高高一〇歳かそこらで。
それにミラノなら、どこにいようと支障はなさそうだし。
「だから僊河青蓮はー、どんなに騒がれよーとも、表舞台に出て来ない。もーこの世には存在しなーい。ゆえにー、このーシベルネティゼをここへ飾ることを決めたのも、きーっと僊河姉妹のどちらかだ。ボクはトリノ嬢だと恐察するー」
「……えっ、でもさっきの話だとミラノでしょ? オレがまだここで寝起きしてた時、ミラノはここへ来て、PCも弄くってましたよ」
「セイレーンたちの制御スクリプトを書き換えるには、一期目のビルが完成するまでー、そこのプレハブからじゃーないと、アクセスできないからね」
「……そう、だったんですか……」
「でも、現代アートに興味があるのは、姉じゃなく妹の方だと見えるー。コモ湖の別荘の庭にも、ムッシュさんの作品じゃーなかったけど、人魚をモチーフにした座像があったしー」
「……人魚?」
「……で? えっと、どうなります?」
「とり巻きたちから、都合のいー捏ちあげを聞かされたとしても、氏は歴とした、繊維工学のテクニカルエキスパートだからね。妻の死因に、不審は必ず懐くと思うー、娘たちの様子がおかしーことにもね」
「でしょうけれど……」
がしかし、それで結局、ケーサツには通報しなかったのか……したところで、やはりどうにもならないから。
「その裏付けになるとも考えられるけどー、ヴェンデェッタ一家は、暮らしてた屋敷まで処分して、ミラーノを離れているんだよ。姉妹を別別にする必要がまずあったしー、たぶんミラノ嬢よりも、トリノ嬢の精神状態の方が、深刻だったんだろーね」
「……ミラノに、操られちゃう、精神を乗っ取られて殺人の、その、実行犯にさせられちゃったことになるからですか? トリノさんが」
「そー。そののち四年ほどして、ヴェンデェッタ氏とトリノ嬢だけ、パリからミラーノへ戻って来た」
「って……それにはどう言う意味が?」
「以前とは違って、ミラーノでも中心街に本社ビルを建て替えて、そのペントハウスに住んでるー。それで、僊河青蓮だけでなくー、氏やトリノ嬢までもが、ほとんど街で見かけられなくなったのー」
「出歩かなくても、って言うより、見かけられずに済むように、便利なトコへ、住みなおしたってわけですか、逆に……」
「今回の探偵旅行ではー、大きな成果、姉妹たちの父親ロベルト・ヴェンデェッタ氏には、直接面会することが叶ったー」
「凄っ……ですね、それはぁ」
「
「……そうなんですか? 本当のガチに?」
「ウン。あれなら充分、まだ幼い娘たちの罪くらい隠蔽しちゃいそーだった。僊河青蓮についての
「……充分って、そんな……」
セイレネスブランドが誕生して、今年でちょうど一〇年……数字的には合致する。トリノさんは、セイレネスのためにパリから戻ったのか……高高一〇歳かそこらで。
それにミラノなら、どこにいようと支障はなさそうだし。
「だから僊河青蓮はー、どんなに騒がれよーとも、表舞台に出て来ない。もーこの世には存在しなーい。ゆえにー、このーシベルネティゼをここへ飾ることを決めたのも、きーっと僊河姉妹のどちらかだ。ボクはトリノ嬢だと恐察するー」
「……えっ、でもさっきの話だとミラノでしょ? オレがまだここで寝起きしてた時、ミラノはここへ来て、PCも弄くってましたよ」
「セイレーンたちの制御スクリプトを書き換えるには、一期目のビルが完成するまでー、そこのプレハブからじゃーないと、アクセスできないからね」
「……そう、だったんですか……」
「でも、現代アートに興味があるのは、姉じゃなく妹の方だと見えるー。コモ湖の別荘の庭にも、ムッシュさんの作品じゃーなかったけど、人魚をモチーフにした座像があったしー」
「……人魚?」