131 _____________ ‐2nd part‐

文字数 1,122文字

 ……小箱の蓋を開けてみると、ジャケットに付いているのと同じ銀色に輝くボタンが、宝石みたいに納まっていた。
 つまりは、これが、記念すべきシリアルナンバー001のボタンってことらしい。

 ──なんだか、わけわからないくらい嬉しいんだけど。
 表彰台の真ん中に上がった時って、きっとこんなカンジじゃないか?

「あぁ~っ、それってズルじゃん!」

「ヴィーのヘソ曲がりぃ。水埜楯にとって最高のメモリアルを、実際に着てるのはヴィーなんだよっ。もっともっと愉しくならなくちゃおかしいんだよ」

「……それは、愉しいって言うか、嬉しいけどさぁ。つまりどう言うこと? これから楯ってどうなっちゃうのよ?」

「だからぁ、そんなこと私はわからないんだよ。愉しいなら、今愉しんでくれなくちゃ、水埜楯の愉しさまでがダメダメじゃん。脱いで脱いで、それはもう私が着て、ヴィーの分まで愉しんじゃうんだから」

「ヤダ、脱がないっ。これはアタシがもらうんだもん。くれないなら買うっ。あとで幾らでも請求してよ。誰にも、絶対に渡さないんだからぁ!」

 よくわからんけれど、ヴィーはそうヒステリックに喚き散らすと、ダッシュで鏡の合囲(ごうい)からぬけ出して、そのままショップの外へと消えて行ってしまった──。

 ……でもこれって、公然とした万引き、いや、掻っ払いなのでは?

「予想以上のビックラこんだよ。どうする水埜楯、あれヴィーにあげちゃう?」

「えっ、何でオレに聞くの? って言うか、オレに払えるわけがないでしょそんな」

「誰も買ってなんて言ってないない、あれは初めから水埜楯のモノなんだから。どうするの? あれには、大事なボタンが六つも付いてるんだよ」

 002から007のボタン……銀製ではないだろうけれど、言われてみれば惜しいかも。第一あのジャケットがなければ、セイレネスではないんだし。
 しかもセイレネスの限定品、それこそコレクターズアイテムで、凄いプレミアが付いちまうはず。

 ……でも、なんかピンとこない。あれがオレのモノだと言われたって。
 ヴィーが着れるんだからサイズ的に問題なくても、オレには、あそこまでのを着る陶酔癖はないし、飾るなんてミラノさんが許してくれるわけもないし。
 やっぱり、そんな特別で高価なモノを、おいそれと頂戴できるわけがない。
 この、セイレネスの小箱に入った001のボタンだけでも夢みたいなんだから。

「なんだか、全然わからないよオレには。ミラノさんに任せちゃってもいい?」

「モォモォ~、ヴィーもヴィーなら、水埜楯は水埜楯でビックラこきすぎだよ。全然、愉しみきれなかったじゃん。ねぇジェレ?」

 ミラノさんから、だしぬけに同意を求められようとも、板についた微笑みで応じるジェレさんだった。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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