259 _____________ ‐3rd part‐

文字数 1,463文字

「って、いや……」

「楯クンが、ボクを友達だと思ってくれるなら、何を憚ることはない、ボクらは親友だよ。そして友情とは、友の立場を、自分のこととして考え処理しようとする同情心だ」

「…………」

「ボクは、楯クンとの約束も操守しよう。さぁミラノ嬢、楯クンを納得させたよ。これで今夜の密談会は、どうにか息災でお開きだー」

「何で、閉会するのに、開くって言うのか知らないけど、楯はまだまだ納得してないんだよ。楯もダメダメ、いつまでもオロオロしてないで、わからないことは、葉植木春菊にきちんと聞いておかなくちゃ。あとでワタシに聞かれても、教えるわけにはいかないんだからぁ」

 ダメダメの上にオロオロかいオレは……それに、まだ、きちんと聞いておかなくちゃいけないことって?

「ウ~ン。大上段にかまえてきたものの、オロオロ揺れる楯クンの鼻毛を読み誤ってしまったようだ。しかし楯クンが拾った鍵では、ボクの宝箱まで開けることはできないよ。親友なら友情と一緒に、礼儀の方も弁えてくれなくちゃ困るんだけどなぁ」

「……礼儀って? 困られても、オレだって困るんだけれど……」
 
「申しわけないが、こればかりは譲歩の余地など一切ないんだ。ボクの件とあのコの件は、厳格に区別してくれないと困る。あのコと楯クンには、紛れもなく、完膚なきまでに関係ないと言えるんだから。」

「……ぁあ、……」

「いくら親友でも話したくない。いや、親友だからこそ話せない。知ってしまったが最後、身の安全の保証はできなくなる。ボクが勝手に、一方的にあのコへ世話を焼いているだけであって、正直ボクに、速戦即決と言い伏せられる相手じゃない。後生だから勘弁して欲しいんだ」

「…………」

「ほかのことなら何でも教えるから、ミラノ嬢が、自らの口からはうち明けられない懐蔵話をボクが代弁してもいい。楯クンだって思ってるはずだ、自分を知られるだけでなく、カノジョのことも知り尽くしたいって」

「……まぁ、ね……」

「フツウ相思相愛になった男女は、互いのことを駆け引きみたいに暴露し合って、理解を深めてゆくものだけど、楯クンには、自分の情報と引き換えに相手の情報を引き出すとゆう、その最もワクワクする恋愛初期の醍醐味が味わえない。駆け引きも引き換えも、ミラノ嬢には無用だからね」

「……ぁあ。うん、そう……」

「二人のために、ボクがそのハンディキャップを補ってあげよう。ね、親友っぽいでしょう? だから硬論かもしれないが、ボクの要求も聞き入れようよ楯クン」

 ……

って、つまりは快楽殺人女のことだろ?
 葉植さんがあのコと呼ぶくらいだから、

ではなく、オレとも同年程度の

ってことなのか?

 ……となれば、そりゃ誰なのか、どんな奴なのかは知りたい。

 一体、何ゆえ

とネーミングされるほど、田宮謡に絡めて老人を殺して廻るのか? その辺の因果関係が明らかになれば、彼女の殺人実験は続くにしても、気分的に幾分スッキリしてくれるだろうし。

 ……けれど、それ以上にミラノのことを教えて欲しい。
 葉植さんが、なぜ、どうやってミラノのことを調べたのかなんてどうでもいい。

 とり分け、ミラノの家庭の事情や、一族郎党の勢力分布が、おおよそでも掌握できれば……ジェレさんから聞いた話だけでは、やっぱりどうにもなんだよなぁ。
 ミラノがこっちで暮すために一〇ぶりに帰っても、絶対に嫌な思いをせずに済むよう、訴求できる人が見つけられるかもしれないんだし。

 そう、そうなんだっ。ミラノが言い出せないのなら、オレが差し出口せずに誰がする!
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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