168 ____________ ‐2nd part‐
文字数 1,700文字
だからか知らんけれど、草豪も、いよいよエンジンがかかりだしてきちまったみたい……。
「非日常的な現実の劇場化、正常性バイアス、多数派同調バイアスに傍観者効果。私は、ウチの学生なら、全員が理解していることを前提にした上で言ったのっ」
「そんなもん、心理学を専門的にやろうって物好き以外、テストが終われば、忘れちゃうに決まってるじゃん、ねぇ?」
「…………」
金樟から、いきなりふられた筌松と上婾さんは、互いに目を見合わせるばかり。
それも気にせず金樟は、アムブロシアを一口グビリときたもんだ。
「甘~っ。みんなも温む前に飲めば?貧寒 野郎が泣く泣く奢ってくれたんだから。とにかく根上はもう、これ以上どうにもならないくらい確実に完璧に死んじゃってるんだし、みんな徹夜明けで怠いんだし。のんびり雑談ってカンジでいこうよ」
「……そうね、私がいけなかったわ。レポートから解放されて、少し気が逸ってたみたい。初対面なのに、いきなり本題は不躾でした。筌松さんも上婾さんも、気を悪くしないでいただけませんか?」
「うぅん。私たちも言葉が不適切だったし、足りなかったわ。大体が、私たちここ毎日忙殺されてたから、根上クンの事件は人からの又聞きもいいトコで、初めからちゃんと知ってるわけじゃないのよ。だからもう一週間も経つのに、実感らしい実感が湧かないんだと思うし……」
筌松の言葉が尻窄 み気味になったせいか、上婾さんも、居住まいを軽く正しつつ口を開く。
「私も、ホント口祥 なくってゴメンなさい。言いわけにすぎないけど、そう言うことなんです。どのゼミでも雑用でこき使われてて」
「ホ~ント、浜田山とこっちを行ったり来たり。まだまだこれからだってのに、なんか、全てがバカらしくなるくらい疲れちゃってて」
筌松もハスカップ100を手にとって、キャップを開けずに壜を瞑った片方の瞼の上へ押し当てての辛労さアピール。
「……大変なことは承知してるんです、それでも……」
チョット俯いて見せる草豪だけれど、オレにしてみりゃ、なんだかなぁ……。
「草豪さんたちは、もしかしてだけど、根上クンのために、せめて大学で葬儀をしようと考えてるんじゃないの?」
「……ええ筌松さん。実はそのとおりです」
「でもねぇ。理工の学生は、今み~んな自分のことで汲汲 、それこそゼミ全体が、彼のために活動を停止してくれない限りムリ。それって物凄く人間性に欠けてるけど、我が身が一番なのもまた人間性でしょ? だから理事会にでもかけ合って、トップダウンでやるしかないんじゃない?」
上婾さんも頻りに頷く。
「そうですよ。それに、もしお葬式を学部でやることになっても、特に女子を出席させるのは難しいんじゃないですか? そのぉ、私たちが聞いた噂話から判断すると……男子でも、顔を顰める人が多かったし」
「なるほどです。理工は女子が少なくても、附属校とは違うわけなのね? 男子が女子を珍重がって、女子の風潮へと合わせようとする。どうでもいいなら尚更だわ。そうした諸諸を考慮した上で、四九日までに間に合わせるとなると……」
そう言うと、草豪も自分の前の小壜に手を伸ばしたので、静静~っとオレも、この場を乗りきる精力欲しさで選んだ、丸飲みマムシをいただいておくことにする。
ここにいるだけで事足りる場つなぎ役は、どうも自然に跼天蹐地 となっちまう。
「でしょ? ムリじゃないですかやっぱり?」
そう話を纏めたがる筌松に、なんか余裕で草豪は、これまでの調子を崩さずに話を続けやがるから、嫌~な予感しかしてこない。
「実は、学長や理事長には既に相談しているんです。でもやっぱり、御遺族が望んでいないのに、大学側が率先してはできないと。学生たちからの要望が高まって、それで、学内のどこかを貸してくれと言うのなら、話は別だとも、学長には言われているんですけどね」
「でも眞弓、とにかくこれはいい機会だってば。根上の事件の詳細を、この二人に話しておかないと、理工の学生間で語られている噂とのズレを、認識してもらうためにもね」
……おいおい金樟、もしや、ホントの意味での場つなぎ役を任されてるってことなのかぁ?
「非日常的な現実の劇場化、正常性バイアス、多数派同調バイアスに傍観者効果。私は、ウチの学生なら、全員が理解していることを前提にした上で言ったのっ」
「そんなもん、心理学を専門的にやろうって物好き以外、テストが終われば、忘れちゃうに決まってるじゃん、ねぇ?」
「…………」
金樟から、いきなりふられた筌松と上婾さんは、互いに目を見合わせるばかり。
それも気にせず金樟は、アムブロシアを一口グビリときたもんだ。
「甘~っ。みんなも温む前に飲めば?
「……そうね、私がいけなかったわ。レポートから解放されて、少し気が逸ってたみたい。初対面なのに、いきなり本題は不躾でした。筌松さんも上婾さんも、気を悪くしないでいただけませんか?」
「うぅん。私たちも言葉が不適切だったし、足りなかったわ。大体が、私たちここ毎日忙殺されてたから、根上クンの事件は人からの又聞きもいいトコで、初めからちゃんと知ってるわけじゃないのよ。だからもう一週間も経つのに、実感らしい実感が湧かないんだと思うし……」
筌松の言葉が
「私も、ホント
「ホ~ント、浜田山とこっちを行ったり来たり。まだまだこれからだってのに、なんか、全てがバカらしくなるくらい疲れちゃってて」
筌松もハスカップ100を手にとって、キャップを開けずに壜を瞑った片方の瞼の上へ押し当てての辛労さアピール。
「……大変なことは承知してるんです、それでも……」
チョット俯いて見せる草豪だけれど、オレにしてみりゃ、なんだかなぁ……。
「草豪さんたちは、もしかしてだけど、根上クンのために、せめて大学で葬儀をしようと考えてるんじゃないの?」
「……ええ筌松さん。実はそのとおりです」
「でもねぇ。理工の学生は、今み~んな自分のことで
上婾さんも頻りに頷く。
「そうですよ。それに、もしお葬式を学部でやることになっても、特に女子を出席させるのは難しいんじゃないですか? そのぉ、私たちが聞いた噂話から判断すると……男子でも、顔を顰める人が多かったし」
「なるほどです。理工は女子が少なくても、附属校とは違うわけなのね? 男子が女子を珍重がって、女子の風潮へと合わせようとする。どうでもいいなら尚更だわ。そうした諸諸を考慮した上で、四九日までに間に合わせるとなると……」
そう言うと、草豪も自分の前の小壜に手を伸ばしたので、静静~っとオレも、この場を乗りきる精力欲しさで選んだ、丸飲みマムシをいただいておくことにする。
ここにいるだけで事足りる場つなぎ役は、どうも自然に
「でしょ? ムリじゃないですかやっぱり?」
そう話を纏めたがる筌松に、なんか余裕で草豪は、これまでの調子を崩さずに話を続けやがるから、嫌~な予感しかしてこない。
「実は、学長や理事長には既に相談しているんです。でもやっぱり、御遺族が望んでいないのに、大学側が率先してはできないと。学生たちからの要望が高まって、それで、学内のどこかを貸してくれと言うのなら、話は別だとも、学長には言われているんですけどね」
「でも眞弓、とにかくこれはいい機会だってば。根上の事件の詳細を、この二人に話しておかないと、理工の学生間で語られている噂とのズレを、認識してもらうためにもね」
……おいおい金樟、もしや、ホントの意味での場つなぎ役を任されてるってことなのかぁ?