177 ________ ‐2nd part‐

文字数 1,664文字

 だが、そこはミステリーマニアならでのこだわりと、去年と同じ失敗はしたくないという思いからか、DGメンバーたちのリアクションは、冷ややかで空騒ぎさえ骨惜しみしていた感がある。

<二月中に起きた老人が被害者となる死亡事故は、リサイタル会場や田宮謡とは無関係な場所でも発生していた上、リサイタルの前後という規則性とするにはアバウトすぎる点からも、決して支持などできない>

<ムリ押ししてまで、呪いの噂を蔓延させる計画、

を煮返そうと言うのなら、老人が田宮謡の曲を聴いて死に至る事故を起すという、その因果律を、今度はきっちりと理屈詰めしてもらおうじゃないか!>

<前回、その部分は噂が広まるにつれ勝手に填補‐補完されていくとして、ウヤムヤのままスタートさせた。しかし結局それが、噂として波及力を生むだけの信憑性を欠くことになり、笑いぐさにもならないド空振りに終わるという、惨めな結果となったのだからっ>

などと、DGメンバーたちは論詰して、勝庫織莉奈の呼びかけをこき下ろした。

 よって、サイト内で話題にしていたと言っても、それをそのままイメージしてはマズいだろう。
 去年みたいに、もう一度みんなで盛り上がろう。今度こそ、広まる噂に仕立てあげようと訴える勝庫織莉奈に対して、気ノりしない他メンバーが、彼女の提案する新たな構想に、何やかやと揚げ足をとり、(あざ)けていたというのが実状のようだ。

「そのスキーム・フォー・EOCの、EOCって何なんです?」

「the Enka Of Cuss の略語だそうです。全てを直訳すると

ですね。スキームと表現していることからも、それが悪だくみという自覚は、しっかりとあったことになります」

 勝庫織莉奈が犯罪に走るワーニングサインは、まさにその

という呼びかけこそが、米国心理学会が発表した二二項目の中の第七項、<他人を傷つける計画や脅しを告知>に相当すると考えられるのだそう。

 けれど、それを寄って集って貶された場合は、一体どうなっちまうんだろうか?
 部活での反抗も、暴力で弾圧されそうになったわけだし……。

 そして、唯一そのサイト内イジメに近い状況を、(いさ)めるメッセージを書き込んで、勝庫織莉奈を擁護する立場をとったのが、らしいっちゃらしいけれど根上だった。

 根上はハンドルネームを<Root’N>としていた。根上=Root+onってことみたい。 
 そして、品川区在住の高校三年生と、ほぼ偽りなく申告していたのに対し、勝庫織莉奈の方は、教員を目指しつつ栃木県内で学校事務員として働いている<ルエ・テイルワル>と、明らかにしていた事実は、住んでいる地域だけだった。

 その、勝庫織莉奈のハンドルネーム、ある名探偵の名と姓の綴りを逆にして読んでいるらしく、スグにピンときた筌松と上婾さんが、小鼻をヒクつかせながらの快哉(かいさい)を叫ぶもんだから、オレは何事かとピクついちまう……。

「この(かば)う行為が、根上が<ルエ・テイルワル>を実はDGの最年少、一三歳の女子中学生だと知っていたのではないか? と言う印象を、捜査員たちに少なからず懐かせているみたいなんですよね」

「んん……それは何で?」

 筌松が口に出すことは、もはや上婾さんにも自らの言葉も同然みたい。シンクロ率の高さが、瞬きするタイミングの一致で窺えるほどだ。

「DGの主要メンバーは一三名、一人だけ還暦を迎えている方がいましたが、その人を除いた平均年齢は、実のところ二〇歳に満たない若い集まりだったんです。そうなると、社会人男性をアピールしているキャラを、男子高校生キャラが庇うのは引っかかると言うわけでしょう」

「でもそれが根上だろっ、何にせよ、ポジティヴな意見なら聞く耳をもってる。正しかないけれど、そうやって愉しむのが目当てのサイトでのことなんだから。事件以前に、勝庫織莉奈と面識があったかの判断材料にはならないって」

 ──思わず口をはさんじまったぁ。

 でも、剣橋と草豪の顔色は悪くない。この手の口出しは許されるらしい……。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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