258 _____________ ‐2dn part‐

文字数 1,456文字

「いいね。それだよ、その表情。何せ『ウルティマ‐ツーレ』とゆうのは、

って意味だからさぁ」

「…………」

「人は、何がどうなっているのか理解できない、まるで答えが見つからない、そんな時にだけ世界の果てに思いを馳せる。そして初めて、既に自分が、世界の果てに立ってしまっていることを(さと)るんだ」

「って、オレは……」

「楯クンは、あのキャンドルを初めて目にした時にも、そうゆう顔で見てくれたのかな? けどまぁ深刻になる必要はないよ、全ては、楯クンに直接関係のないことなんだしね」

「…………」

「なのに楯クンは、ボクの人生を決める鍵を握っている。詮ずるところ神のイジワルで、ボクが捨て、楯くんが拾わされたんだ。その鍵は、ボクに返して終わりにすることなんかできないんだよ。どうかな、神って奴の陰険さが如実にわかるでしょう? さぁどうする楯クン?」

 確かに、全て直接の関係はない。
 でも、葉植さんからは、やっぱり、ど~したって、仲間意識を捨てきれそうにないんだよなぁ。
 オレにとって畏友というか、敬い慕って、少なからず景仰(けいこう)までしていて、宝婁センパイにうち(すが)う存在と言えちまう。

 法治主義に司法制度、そんなモノ、この葉植さんに何の意味があるんだろう……。
 それに、オレはブッチャケ、責丘さんは殺されても致し方なかったと、既に異議なく認容してしまっているし。

 勝庫織莉奈や、犠牲になった老人たちにも感傷すら覚えていない。
 緑内と根上の死だって、突き詰めれば、驚いた余りに混乱して、その混乱に当惑しながら、どうにか収拾をつけようとしてただけ。全ては、自分のために足掻いていたにすぎないんだから。

 ……だってオレ、緑内も根上も、ただ一二年間同級生ってだけで、親愛も敬慕も全然ない、むしろ大っ嫌いな人間なんだ。
 オレは、同級生にはムカつきと憎嫉しかないんだ、それを認めたくなかっただけ。                                               

 実際問題、オレに、葉植さんを告発なんかしにケーサツへ行けるか?
 あんな、オレの話を疑ってかかってしか聞けないオトナたちに、まさしく役人根性丸出しの酷吏どもに、奇天烈なロウソクを見せながら、オレ自身信じ難い残酷物語を、懇懇と聞かせて説伏しなければならないんだ……。

 悩むまでもない、答えは出ている。
 オレが拾わされたのは鍵じゃない、銃だったんだ。葉植さんは実弾、トリガーを引く引かないは、オレの一存ってことだ。

 全然関係のないオレにそんな権利はない。銃を撃つ度胸なんかない。
 バカ正直に今更正義をふり翳し、市民の義務を完うしたところで、人としての責任なんかとりきれない。
 とは言え、責任なんかない、関係ないとも居直りきれないに違いない。全然関係ないのに、こうしてシャシャリ出ちまっているんだから……。

 答えは明解、考えるまでもないことだ──。

「……オレが納得して、拾った葉植さんの鍵を呑み込むことにしたら、本当にもう誰も殺さない? 半殺しにしたいって時も、絶対オレに相談して、オレがどうにかできたら諦めてくれる?」

「誓うよ、お安い御用だ。楯クンはやはり賢いオトナだったね」

「違う……オレはやっぱり、救いようもなくアホで無力なガキなんだ。緑内や根上が死んだのも嫌で、葉植さんを指名手配者にするのも嫌。さらに世間を一層騒がせて、また誰かを苦しめるなんて嫌なだけ……」

「ン~。どうやら、罪を憎んで人を憎まず、とゆうのは、苦し紛れやキレイ事ではなかったらしいねぇ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み