119 ________________________ ‐2nd part‐

文字数 1,186文字

 とにかくミラノさん、侮れないとは知りつつも、どこか侮っちゃっていたよなぁ……。

 さっきのが、たとえメンタリズムの類や、無論テレパシーなんかでは全くなく、極めて偶発的な当てずっぽうだったとしても、相当鋭いカンと当意即妙の持主だということを、忘れないでおくべきだろう。
 まぁ、階段やエスカレーターで降りられられないことまでもを、周りを油断させるフィブ(小嘘)かもと疑いだしては、可哀想だろうけれど。

「ねぇ~ミラン、もぉ自棄買いはしないから、カラオケ行っとかなぁい? いきなりのデラノリで、チカッパ愉しいんだからぁ」

「ダメダメだよ。デラデラのカッパカッパは好きだけど、私は、カラオケのぴしゃりんこな部屋がイヤイヤなんだよ」

「じゃぁ原宿の方へ歩こうよぉ。行きたがってたでしょ? 私、悪いけど、ミランのトコのブランドには興味ないんだよねぇ」

「私だって、ヴィーの好みには興味ないけどつき合ったじゃん、悪口言えてとっても愉しかったよ。ヴィーも思う存分悪口言いなよ、愉しいんだよ~。それに、水埜楯にも見せたい限定アイテムが、届いちゃってる今この頃なんだよ」

「えっ! 限定って、どんなアイテム?」
 当然ながらの反射的な喰いつきで、口をはさまずにはいられるもんかだっ。

「それは、百文は一円に足りずだよ。ホラね、水埜楯はもう愉しくなってきたんだよ、だからヴィーもっ」

 ミラノさんは急に立ち止まり、放したオレの手をヴィーとつながせて、自らもヴィーのもう片方の手へ握りなおした。
 こういう動作だけは、誰にも有無を言わさぬ素早さがある。頓狂なだけなのかもしれないけれど。

 「これでヨシヨシ、ヴィーもだんだん愉しくなってくるんだよ。さぁ、それでは元気にウチのショップへ出発出発ぅ」

 知らんけれど、ゲンキンなもので、オレは確かにセイレネスの限定アイテムと聞いて、愉しくも元気にもなっていた。幾分どころか、すっかりと。

 今度はミラノさんとオレで、ヴィーの重い足どりを引っ張り進む鶴翼の陣形で、無秩序な人並みを、さらに掻き乱しながらの横行闊歩──。

 ミラノさんが得たり顔で()らすほどの限定品とは、果たしてどんなモノなのか? オレにも買えそうな隙はあるんだろうか?
 アイテムなんて表現をワザワザ使ったくらいだから、既存のラインとは全く別の何か……ほかのブランドも偶にお遊びでやる灰皿だとか、フォトフレームといったグッズ類だろうか? 年度替りだから手帳かもしれないし、スマホケースにも付けられるストラップってことも、フツウにあり得るし……。
 そこまでなら、まだ買えそうだけれど、まさかパネライ辺りとのコラボウォッチなんかだったら、今は全く手が出ないよなぁ。

 だのにっ、限定アイテムの詳細については、何をどうミラノさんに聞き合わせてもはぐらかされてしまう。
 嗚呼っ。ホント、百聞が一笑に付される~。早く見たいぃ!
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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