239 ハチロクとBRZってカンジかも ‐1st part‐
文字数 1,414文字
しかしっ。リュックにバール……それに包丁だって? それってつまり!
オレの頭蓋の内側で何かが弾けて、強烈な痺れが走ったあとから、疼痛みたいな感覚までが広がりだしてくる。
とにかく、とてもじゃないけれど居た堪れない……。
「当然お見通しかぁ。正確にはバールじゃなく釘抜きなんだ。正直あなたのテレパシー能力がこれほどまでとは、予測の域を遥かに超えてるし。そもそも、ここへ本当に姉妹だけで来てくれるなんて、そう強く念じておきながら、ボクでさえ信じていなかったもんだから」
「うんうん」
「……最悪、警官隊に包囲されても突破できるよう、軽く犠牲者が出る程度に、花火を仕掛けさせてもらっただけなんだ。ほら、ボクって見かけどおり幼女みたいに非力だし、足も遅いときてるから」
「その歳で声変わりしてないし、アダムの林檎も目立たないない。みんな葉植木春菊のことを女のコだと思い込んでる。なんか違うってカンジてたのは、ヴィーだけなんだよ」
「あぁ甲状軟骨、ノド仏のこと? 昔ね、一時ファションで頸椎カラーをしていたんだ、そしたら出てこなくなっちゃった。あれをしてれば、鞭打症の通院途中だと思われて、昼間に街を彷徨いていても、補導されずに済むんだよね」
「うんうん」
「ボクも遺伝子のメチル化が問題なんだろうね、体の成長スピードまで遅いみたいだから、尚更なんだけど」
「フ~ン……」
「でも、ボクのこうした服装は、エオニズム(女装倒錯)やクロスドレッサー(異性装)じゃないよ。不登校した三年間で家の書庫の本を読み終わったら、外出着が全くなくなって、サイズが合うのは、お母さんの服だけだったんだ」
「うんうん」
「一度着て出歩いちゃうと、もうどうでもよくなるんだよね。変だとすれば、ボクの家の住人たちだよ。お母さんからして、ボクに服を買わせて若づくりを愉しむようになったし。娘をもった気分まで味わえて、一石二鳥と喜んでいる始末さ」
「うんうん」
「お祖父ちゃんに至っては、端から性別や性差は関係ナシ。大学の花壇で咲くマーガレットが好きだからって、男児にそのまま木春菊なんて字を、ムリヤリ名前へ当てちゃうくらいだし。今でもボクをマギーとかメグって呼ぶんだ、ボクもまぁそんなことはどうでもいいから」
「うんうん」
「服も一から揃えるとなると、結構出費が嵩むし。おカネは、あのコと一緒に過ごすために使いたいし、あのコって存外実入りがいいんだ」
「フ~ン」
「バカにならない交通費を、気にもせず出かけてゆくもんだからさ。同行するにも限度があるんだ、金銭的だけでなく時間的にも。あなたたちに阿 ようとした理由の、大部分を占めてるかもね」
「よく言うよ。ワタシたちのチカラが大したことなかったら、姉妹ゲンカの殺し合いにでも、見せかけようとしてたクセにぃにぃ」
「まぁねー。正直、まさかとは思いながらも、気が気ではなくなってきていたんだ。あなたたちには、匿名で警察へタレ込んでおくくらいのことは、する可能性が充分あるわけだし」
「まぁね~」
「捜査にゆきづまってる警察が、藁をも掴む姿勢で、一般からの情報を洗いなおし始めたら、ボクは意外な存在として、一際目立つはずだから」
「うんうん。それでも葉植木春菊は、一人じゃ高飛びできないもんね~、あのコのためにぃ」
……ミラノも、何をフツウにヤバい会話をし続けちゃっているんだか?
もう、どんどん現実味がなくなってきて、逆に音無しく聞いてなんかいられなくなる──。
オレの頭蓋の内側で何かが弾けて、強烈な痺れが走ったあとから、疼痛みたいな感覚までが広がりだしてくる。
とにかく、とてもじゃないけれど居た堪れない……。
「当然お見通しかぁ。正確にはバールじゃなく釘抜きなんだ。正直あなたのテレパシー能力がこれほどまでとは、予測の域を遥かに超えてるし。そもそも、ここへ本当に姉妹だけで来てくれるなんて、そう強く念じておきながら、ボクでさえ信じていなかったもんだから」
「うんうん」
「……最悪、警官隊に包囲されても突破できるよう、軽く犠牲者が出る程度に、花火を仕掛けさせてもらっただけなんだ。ほら、ボクって見かけどおり幼女みたいに非力だし、足も遅いときてるから」
「その歳で声変わりしてないし、アダムの林檎も目立たないない。みんな葉植木春菊のことを女のコだと思い込んでる。なんか違うってカンジてたのは、ヴィーだけなんだよ」
「あぁ甲状軟骨、ノド仏のこと? 昔ね、一時ファションで頸椎カラーをしていたんだ、そしたら出てこなくなっちゃった。あれをしてれば、鞭打症の通院途中だと思われて、昼間に街を彷徨いていても、補導されずに済むんだよね」
「うんうん」
「ボクも遺伝子のメチル化が問題なんだろうね、体の成長スピードまで遅いみたいだから、尚更なんだけど」
「フ~ン……」
「でも、ボクのこうした服装は、エオニズム(女装倒錯)やクロスドレッサー(異性装)じゃないよ。不登校した三年間で家の書庫の本を読み終わったら、外出着が全くなくなって、サイズが合うのは、お母さんの服だけだったんだ」
「うんうん」
「一度着て出歩いちゃうと、もうどうでもよくなるんだよね。変だとすれば、ボクの家の住人たちだよ。お母さんからして、ボクに服を買わせて若づくりを愉しむようになったし。娘をもった気分まで味わえて、一石二鳥と喜んでいる始末さ」
「うんうん」
「お祖父ちゃんに至っては、端から性別や性差は関係ナシ。大学の花壇で咲くマーガレットが好きだからって、男児にそのまま木春菊なんて字を、ムリヤリ名前へ当てちゃうくらいだし。今でもボクをマギーとかメグって呼ぶんだ、ボクもまぁそんなことはどうでもいいから」
「うんうん」
「服も一から揃えるとなると、結構出費が嵩むし。おカネは、あのコと一緒に過ごすために使いたいし、あのコって存外実入りがいいんだ」
「フ~ン」
「バカにならない交通費を、気にもせず出かけてゆくもんだからさ。同行するにも限度があるんだ、金銭的だけでなく時間的にも。あなたたちに
「よく言うよ。ワタシたちのチカラが大したことなかったら、姉妹ゲンカの殺し合いにでも、見せかけようとしてたクセにぃにぃ」
「まぁねー。正直、まさかとは思いながらも、気が気ではなくなってきていたんだ。あなたたちには、匿名で警察へタレ込んでおくくらいのことは、する可能性が充分あるわけだし」
「まぁね~」
「捜査にゆきづまってる警察が、藁をも掴む姿勢で、一般からの情報を洗いなおし始めたら、ボクは意外な存在として、一際目立つはずだから」
「うんうん。それでも葉植木春菊は、一人じゃ高飛びできないもんね~、あのコのためにぃ」
……ミラノも、何をフツウにヤバい会話をし続けちゃっているんだか?
もう、どんどん現実味がなくなってきて、逆に音無しく聞いてなんかいられなくなる──。