205 ________________ ‐3rd part‐
文字数 1,706文字
ミラノがコクコクと頷くので、オレの記憶の精確性はともかく、認識は正しいようだ。
けれど、言葉にしなくても、会話がフツウに続けられちゃうこの妙な感覚だって、ダメな人には全然ダメなのかもしれないなぁ……オレには、全然何ともないけれど。
「でも、オレを入れてたった二人だけってことはないでしょ? トリノさんや、ほら、マーヴェラスな御両親もいるわけだし」
「青蓮が一番私をイヤがったんだよ。ロベルトは私をイヤがりはしなかったけど、青蓮が騒いで暴れるから、ワタシをかまえなくなったし、相談役だったグアスタにワタシを預けて、トリノが近づかないようにもしたした」
「……そうだったの?」
「トリノだって、やっとワタシと二人きりでも、大丈夫になったんだよ。でもワタシを避けた方がいいって言いつけは守ってる。私がすっかり眠ったあとで、自分のことを始めるから朝寝坊になるんだよ」
「えぇっ、ガチでそれ?」
「私と一緒の時は、特別な注意をしてる。それができるようになったから、トリノは私と一緒にいられるだけなんだよ」
「……オレ、二人は当然、息が合ってるんだとばかり思ってた」
「ワタシがトリノに合わせることは簡単だもん、ワタシのサポートが、今回のトリノの役目でもあるからだよ。ワタシたちはもう、仲が好いとか悪いとか言えるほど、一緒に暮らしてなんかいないない、ワタシたちは一〇年ぶりに一緒になったんだよ」
「…………」
そう言われれば、一番初め空港でそんなようなことを、トリノさんが口を濁すようなカンジでオレに話してくれたような──。
でもトリノさん、さっきは如何にも、ミラノのことをわかっていると言った口ぶりだったのに。
まぁ、よくわかっているのと、仲が好いのは、また全くの別モノではあるけれど。
「さっきトリノから聞いたでしょ。ワタシたちはムリヤリつくり出された子供なんだよ。なのに青蓮は、ワタシたちの、この髪や眼の色を、
「え~っ……」
「
「……そう言う気持から子供を欲しがるってのはわかるんだけれどさ、でも酷すぎやしない? 天下の僊河青蓮だろうと母親なんだし、そうまでしてなった母親なのに、そこまでミラノを嫌がるなんて」
「だって青蓮は、ワタシが生まれる前から僊河青蓮だもん。だから、そうまでしちゃったんだし、自分で妊娠すらしてないのに、母親らしい母親になんかなれるわけないない。そんな青蓮にしたのも青蓮の母親、ワタシたちのおバァちゃんって人なんだよ」
「……僊婆が?」
「おバァちゃんも、ワタシほどじゃないけどチカラがあって、厳しい人みたいだったから。ホントのことばかりで叱られ続けて、青蓮は崩れながら育っちゃった。それで今でも、みんなが話題にして喜ぶ、青蓮になってるんだよ」
「…………」
「だから、ワタシのチカラに気づいて怯えてた青蓮に、ちゃんとしゃべれるようになったワタシから、青蓮が怯えたり困ったりしてたことを、スッカリこん言ってあげたの。それで青蓮はワタシを好きじゃなくなったんだよ。今度は、ワタシが家族を崩したの」
「だからってそんな、まぁ所謂フツウの家族ではないからなのかも知れないけれど、でもそんなのもう、立派な虐待でしょ虐待っ」
「フツウだよ。楯だって、父親から立派に虐待されてるじゃん」
……そっか。オレの境遇も、原因はオレになかろうと、一応立派なネグレクトになっちまうか。
「まぁ、そうなんだろうけれどさぁ」
「楯のお父さんだって、楯が生れる前から、会社に、家庭より仕事を優先させられ続けて、きちんと父親になれなかった人なんだよ」
「そう? なんだ……」
「今でも、楯のお母さんのことが大好きだから、お母さん似の楯のことを、できるだけ考えたくないんだよ。楯に何もかも全部、奪いとられちゃったみたく思ってて」
「…………」
ま、オレも親父のことは、薄薄そんなカンジだろうとは思っていたんだけれど、こうしてはっきり言われちゃうと、それがミラノからだからか、なんだか変にスッキリしちゃうよな。
けれど、言葉にしなくても、会話がフツウに続けられちゃうこの妙な感覚だって、ダメな人には全然ダメなのかもしれないなぁ……オレには、全然何ともないけれど。
「でも、オレを入れてたった二人だけってことはないでしょ? トリノさんや、ほら、マーヴェラスな御両親もいるわけだし」
「青蓮が一番私をイヤがったんだよ。ロベルトは私をイヤがりはしなかったけど、青蓮が騒いで暴れるから、ワタシをかまえなくなったし、相談役だったグアスタにワタシを預けて、トリノが近づかないようにもしたした」
「……そうだったの?」
「トリノだって、やっとワタシと二人きりでも、大丈夫になったんだよ。でもワタシを避けた方がいいって言いつけは守ってる。私がすっかり眠ったあとで、自分のことを始めるから朝寝坊になるんだよ」
「えぇっ、ガチでそれ?」
「私と一緒の時は、特別な注意をしてる。それができるようになったから、トリノは私と一緒にいられるだけなんだよ」
「……オレ、二人は当然、息が合ってるんだとばかり思ってた」
「ワタシがトリノに合わせることは簡単だもん、ワタシのサポートが、今回のトリノの役目でもあるからだよ。ワタシたちはもう、仲が好いとか悪いとか言えるほど、一緒に暮らしてなんかいないない、ワタシたちは一〇年ぶりに一緒になったんだよ」
「…………」
そう言われれば、一番初め空港でそんなようなことを、トリノさんが口を濁すようなカンジでオレに話してくれたような──。
でもトリノさん、さっきは如何にも、ミラノのことをわかっていると言った口ぶりだったのに。
まぁ、よくわかっているのと、仲が好いのは、また全くの別モノではあるけれど。
「さっきトリノから聞いたでしょ。ワタシたちはムリヤリつくり出された子供なんだよ。なのに青蓮は、ワタシたちの、この髪や眼の色を、
なんて醜い
って、悲しんでた」「え~っ……」
「
こんなはずじゃなかった
って、いつもいつも。青蓮は、自分の青黒い髪やロベルトの青みがかった灰色の瞳を、ワタシたちで残したかったんだよ」「……そう言う気持から子供を欲しがるってのはわかるんだけれどさ、でも酷すぎやしない? 天下の僊河青蓮だろうと母親なんだし、そうまでしてなった母親なのに、そこまでミラノを嫌がるなんて」
「だって青蓮は、ワタシが生まれる前から僊河青蓮だもん。だから、そうまでしちゃったんだし、自分で妊娠すらしてないのに、母親らしい母親になんかなれるわけないない。そんな青蓮にしたのも青蓮の母親、ワタシたちのおバァちゃんって人なんだよ」
「……僊婆が?」
「おバァちゃんも、ワタシほどじゃないけどチカラがあって、厳しい人みたいだったから。ホントのことばかりで叱られ続けて、青蓮は崩れながら育っちゃった。それで今でも、みんなが話題にして喜ぶ、青蓮になってるんだよ」
「…………」
「だから、ワタシのチカラに気づいて怯えてた青蓮に、ちゃんとしゃべれるようになったワタシから、青蓮が怯えたり困ったりしてたことを、スッカリこん言ってあげたの。それで青蓮はワタシを好きじゃなくなったんだよ。今度は、ワタシが家族を崩したの」
「だからってそんな、まぁ所謂フツウの家族ではないからなのかも知れないけれど、でもそんなのもう、立派な虐待でしょ虐待っ」
「フツウだよ。楯だって、父親から立派に虐待されてるじゃん」
……そっか。オレの境遇も、原因はオレになかろうと、一応立派なネグレクトになっちまうか。
「まぁ、そうなんだろうけれどさぁ」
「楯のお父さんだって、楯が生れる前から、会社に、家庭より仕事を優先させられ続けて、きちんと父親になれなかった人なんだよ」
「そう? なんだ……」
「今でも、楯のお母さんのことが大好きだから、お母さん似の楯のことを、できるだけ考えたくないんだよ。楯に何もかも全部、奪いとられちゃったみたく思ってて」
「…………」
ま、オレも親父のことは、薄薄そんなカンジだろうとは思っていたんだけれど、こうしてはっきり言われちゃうと、それがミラノからだからか、なんだか変にスッキリしちゃうよな。