267 _________ ‐2nd part‐
文字数 1,579文字
「第一、僊河青蓮の、閉所恐怖傾向からの乗り物嫌いは、数数の逸話を残してるー。飛行機なら、ジャンボ機をがらんがらんの、ほぼ貸し切り状態にしないと乗れないのー」
「……そこまででしたか?」
ミラノの乗り物の選り好みも、母親譲りがあるのかもなぁ。
「だから、飛行機を使わずに行ける、陸続きの国のどこかにいる可能性も、考えはしたよー」
「あぁ、そうですよ。それだってかなりの範囲じゃないですか」
「けどー、とにかく、正確な居場所は、隠してるーってことだよねー」
「……そう、なるんですかね?」
「それでー、ボクはここ一四年以内に、ヴェンデェッタ氏が購入したーって、別荘にも行ってみたー。よく氏が家族で週末を過ごすってヤツが、一番近いコモ湖の湖畔にあってねー」
「それで?」
「だけどー、おそらくトリノ嬢が使ってるってゆー気配や痕跡は窺えたけど、年配の女性が休日を過ごすなんて印象は全然なかったー。近所の人に尋ねても、やっぱり、僊河青蓮だけは目撃されてないしー」
「ガチですか……」
「家族で過ごしてるはずなのに、レストランには娘と二人きりで、奥さんぬきーってのは、向こーじゃ本来絶無のことだし」
「……って言うか、向こうでも、不法侵入しちゃったんですか?」
「探偵するには仕方ないー。さらにーボクは、メタポントってトコにある別荘にも、足を伸ばしてみたー。ちょうど、ブーツの土踏まずに位置した、タラント湾を臨む海辺の町だねー」
「そんなトコ……また、どうしてです?」
「建物自体は結構古いけど、そこは一番最近買ったみたいでー。爺様が、看護婦付きで療養してたー。ミラノ嬢をNYへ連れて行った元弁護士だよ」
「グアスタって言う人?」
「なんだ~、知ってたー」
「チョットだけね。ミラノの唯一の理解者なんだって、詳しくは聞いたばかりなんだけれど」
「ウン。彼は、ロクに呂律もまわらないよーな容体なのに、あの僊河姉妹のことは我が子のよーに饒舌だった。でも僊河青蓮のことは一切語らなかったねー。だからチョーットばかり、ボクはカマをかけてみたー」
「……何て、かけてみちゃったんです?」
「セイレネスでの僊河姉妹のセンスはバツグンだー、若いのに一切を任されたブランドが、世界から支持されるのは、あなたとしても誇りでしょー、って」
「……カマに、なるんですか? それ」
「なるー。彼は笑顔で頷きこそしてもー、否定は全くしなかった。それが物語ってる事実はつまりー、セイレネスブランドはー、僊河青蓮ではなく、僊河姉妹が全てをとり仕切って、僊河青蓮の代わりを、二人で務めてるってことなんだー」
「…………」
「そしてボクはー、先ほどある確信に至ってしまったんだねー。あの姉妹はー、二人して、僊河青蓮を殺した母親殺しだーって」
「ええっ! そこまで言ったらマズいでしょ葉植さん、オレだって黙ってられませんよっ」
「あの姉妹は怒らないよ。だってー、ボクがわざわざイタリアにまで行ったのは、今夜二人と敵対し合わない協約を、スムースに締結するための、切り札を仕入れに行ったんだものー」
「……切り札? ですか……」
「にもかかわらず、ミラノ嬢は、ボクがそれをチラつかせるまでもなくー、ボクにとっては、大して苦もない条件で同意した。楯クンの突入前だしー」
「……だって、いや? ですね……」
「さらには、こーして楯クンとボクを二人きりにしてるー。楯クンがー、殺人魔のボクを納得した時点で、彼女たちのことも、
母親を殺すだなんて、如何なる理由があろうと、オレの心情としては許せない──。
けれど……それは、オレの死んでしまった母さんへ思いが重なってであって、他所様の母親となると、そうでもないようなカンジも、してきちゃうような?
「……そこまででしたか?」
ミラノの乗り物の選り好みも、母親譲りがあるのかもなぁ。
「だから、飛行機を使わずに行ける、陸続きの国のどこかにいる可能性も、考えはしたよー」
「あぁ、そうですよ。それだってかなりの範囲じゃないですか」
「けどー、とにかく、正確な居場所は、隠してるーってことだよねー」
「……そう、なるんですかね?」
「それでー、ボクはここ一四年以内に、ヴェンデェッタ氏が購入したーって、別荘にも行ってみたー。よく氏が家族で週末を過ごすってヤツが、一番近いコモ湖の湖畔にあってねー」
「それで?」
「だけどー、おそらくトリノ嬢が使ってるってゆー気配や痕跡は窺えたけど、年配の女性が休日を過ごすなんて印象は全然なかったー。近所の人に尋ねても、やっぱり、僊河青蓮だけは目撃されてないしー」
「ガチですか……」
「家族で過ごしてるはずなのに、レストランには娘と二人きりで、奥さんぬきーってのは、向こーじゃ本来絶無のことだし」
「……って言うか、向こうでも、不法侵入しちゃったんですか?」
「探偵するには仕方ないー。さらにーボクは、メタポントってトコにある別荘にも、足を伸ばしてみたー。ちょうど、ブーツの土踏まずに位置した、タラント湾を臨む海辺の町だねー」
「そんなトコ……また、どうしてです?」
「建物自体は結構古いけど、そこは一番最近買ったみたいでー。爺様が、看護婦付きで療養してたー。ミラノ嬢をNYへ連れて行った元弁護士だよ」
「グアスタって言う人?」
「なんだ~、知ってたー」
「チョットだけね。ミラノの唯一の理解者なんだって、詳しくは聞いたばかりなんだけれど」
「ウン。彼は、ロクに呂律もまわらないよーな容体なのに、あの僊河姉妹のことは我が子のよーに饒舌だった。でも僊河青蓮のことは一切語らなかったねー。だからチョーットばかり、ボクはカマをかけてみたー」
「……何て、かけてみちゃったんです?」
「セイレネスでの僊河姉妹のセンスはバツグンだー、若いのに一切を任されたブランドが、世界から支持されるのは、あなたとしても誇りでしょー、って」
「……カマに、なるんですか? それ」
「なるー。彼は笑顔で頷きこそしてもー、否定は全くしなかった。それが物語ってる事実はつまりー、セイレネスブランドはー、僊河青蓮ではなく、僊河姉妹が全てをとり仕切って、僊河青蓮の代わりを、二人で務めてるってことなんだー」
「…………」
「そしてボクはー、先ほどある確信に至ってしまったんだねー。あの姉妹はー、二人して、僊河青蓮を殺した母親殺しだーって」
「ええっ! そこまで言ったらマズいでしょ葉植さん、オレだって黙ってられませんよっ」
「あの姉妹は怒らないよ。だってー、ボクがわざわざイタリアにまで行ったのは、今夜二人と敵対し合わない協約を、スムースに締結するための、切り札を仕入れに行ったんだものー」
「……切り札? ですか……」
「にもかかわらず、ミラノ嬢は、ボクがそれをチラつかせるまでもなくー、ボクにとっては、大して苦もない条件で同意した。楯クンの突入前だしー」
「……だって、いや? ですね……」
「さらには、こーして楯クンとボクを二人きりにしてるー。楯クンがー、殺人魔のボクを納得した時点で、彼女たちのことも、
楯クンなら許してくれるー
って、判断したんじゃーないのかな? それとも楯クン、如何なる理由があろーとも、母親殺しだけは許さないのー?」母親を殺すだなんて、如何なる理由があろうと、オレの心情としては許せない──。
けれど……それは、オレの死んでしまった母さんへ思いが重なってであって、他所様の母親となると、そうでもないようなカンジも、してきちゃうような?