231 _______________ ‐2nd part‐
文字数 1,522文字
そして『ジィオン』も、シベルネティゼとして造られた作品なので、やはり単なる巨大オブジェでは終わらなかった。
材質は、硬質ゴムをテフロンで被った物でできていて、頭・胸・胴・腰・四肢の各パーツを組み合わせて、人の形に成してある。
一体の総重量が三〇〇キロ以上になるにもかかわらず、それがなんと、見た者全てが歎美の声をあげてしまうほど、妙妙とした動きをするらしい。
六メートルもある巨躯が、一度ガラガラと崩れ込み、地面に転がる岩っころと化したあと、再びムクムクと元の巨人となって立ち上がる、だなんておハルが言うから、見ていないオレまで「へぇ~っ」と、尻上がりの声をあげちまったぁ。
「楯も、プッシュトイってオモチャで遊んだことあるんじゃない? ほら、台の上にディズニーとかのキャラクター人形が乗ってて、台の底にあるボタンを押すと、上の人形がヘタッて崩れちゃうヤツだワ。ボタンを放すと、またそれがシャキッと元に戻るってアレ」
「あー遊んだ遊んだ、オレはピンクパンサーのをもってた。なるほどぉ、それの巨大版ってこと? 各パーツを糸でつないであるのを、ワイヤーとかにして、地中に埋めたモーターで巻きあげるみたいな?」
「基本原理はね。ただそのワイヤーの巻きあげ具合が、巧いこと電子制御されてるわけだワ、巨人っぽく立ち上げさせるためにね」
「ほぇ~、なんか凄そう……」
「二階くらいのデカブツが、六つもだから壮観だわよぉ。本当に生きてるんじゃないかって錯覚するほど。巨人ってさ、世界的にヒットしたアニメの影響で、奇っ怪で素早く動くって共通認識があるんだワ。だから元どおりになって、揺れが収まりだした途端、その場にいた全員がもう拍手喝采。あれには私も思わず感激しちゃったワ」
ガチに、ムッシューって天才なんじゃなかろうか? オレも是非イギリスまで観に行けるもんなら行きたいもんだ、でも……。
「ん~、おハルが感激したのはよくわかったけれど、それが、殺人事件とどんな具合に絡むわけ?」
「楯は、つくづくイマイチ足りないんだワ。被害者のイヴェント関係者ってのが、『ジィオン』の下敷きになって死んだに決まっとろうに。『ジィオン』は凶器として使われたのっ」
「凶器? ん~……」
「被害者はね、閉会後に毎晩行われる『ジィオン』の保守点検中に殺されたんだワ。そのイヴェントでは、来場者が作動ボタンを押して、巨人たちが壊れて復活するパフォーマンスを愉しむことができたの」
「……そんな、誰でも操作できちゃったんなら、ホントにチャチな殺人計画じゃん」
「犯人もまずは客として作品を体験して、それで殺人の道具にしようと思い立ったわけだワ。巨人が崩れるスピードは、それはもう、KО負けするボクサーの膝が砕けるカンジだからね」
「それからムッシューは? 『ジィオン』はどうなったわけ? いやその、アナハイムからソールズベリーへ渡るまでには、なんかいろいろ、ゴタゴタしたことがあったんじゃない?」
「その辺は詳しくないワ。アンタみたいに興味が湧いて自分なりに調べてはみたけど。『ジィオン』は出展された時点で、既に作者のディース・S・天地に所有権はなかったみたいだし。発案から製作までを任されたって格好だから、捜査当局にとやかく言われることはなかったと思うワ」
「それは、よかったけれど……」
「でもなんとなく、『ジィオン』だけが曰くつきの存在とされて、ステイツ内でももて余されていたところへ、ヨーロッパの新参美術誌や若輩評論家連中が、挙 ってディース・S・天地の作品を、取り沙汰し始めたんだわよ」
「挙って、かぁ……どんな風に?」
な~んか自然と喰いついちゃうんだよなぁ、あの変に憧れているムッシューのことだけに。
材質は、硬質ゴムをテフロンで被った物でできていて、頭・胸・胴・腰・四肢の各パーツを組み合わせて、人の形に成してある。
一体の総重量が三〇〇キロ以上になるにもかかわらず、それがなんと、見た者全てが歎美の声をあげてしまうほど、妙妙とした動きをするらしい。
六メートルもある巨躯が、一度ガラガラと崩れ込み、地面に転がる岩っころと化したあと、再びムクムクと元の巨人となって立ち上がる、だなんておハルが言うから、見ていないオレまで「へぇ~っ」と、尻上がりの声をあげちまったぁ。
「楯も、プッシュトイってオモチャで遊んだことあるんじゃない? ほら、台の上にディズニーとかのキャラクター人形が乗ってて、台の底にあるボタンを押すと、上の人形がヘタッて崩れちゃうヤツだワ。ボタンを放すと、またそれがシャキッと元に戻るってアレ」
「あー遊んだ遊んだ、オレはピンクパンサーのをもってた。なるほどぉ、それの巨大版ってこと? 各パーツを糸でつないであるのを、ワイヤーとかにして、地中に埋めたモーターで巻きあげるみたいな?」
「基本原理はね。ただそのワイヤーの巻きあげ具合が、巧いこと電子制御されてるわけだワ、巨人っぽく立ち上げさせるためにね」
「ほぇ~、なんか凄そう……」
「二階くらいのデカブツが、六つもだから壮観だわよぉ。本当に生きてるんじゃないかって錯覚するほど。巨人ってさ、世界的にヒットしたアニメの影響で、奇っ怪で素早く動くって共通認識があるんだワ。だから元どおりになって、揺れが収まりだした途端、その場にいた全員がもう拍手喝采。あれには私も思わず感激しちゃったワ」
ガチに、ムッシューって天才なんじゃなかろうか? オレも是非イギリスまで観に行けるもんなら行きたいもんだ、でも……。
「ん~、おハルが感激したのはよくわかったけれど、それが、殺人事件とどんな具合に絡むわけ?」
「楯は、つくづくイマイチ足りないんだワ。被害者のイヴェント関係者ってのが、『ジィオン』の下敷きになって死んだに決まっとろうに。『ジィオン』は凶器として使われたのっ」
「凶器? ん~……」
「被害者はね、閉会後に毎晩行われる『ジィオン』の保守点検中に殺されたんだワ。そのイヴェントでは、来場者が作動ボタンを押して、巨人たちが壊れて復活するパフォーマンスを愉しむことができたの」
「……そんな、誰でも操作できちゃったんなら、ホントにチャチな殺人計画じゃん」
「犯人もまずは客として作品を体験して、それで殺人の道具にしようと思い立ったわけだワ。巨人が崩れるスピードは、それはもう、KО負けするボクサーの膝が砕けるカンジだからね」
「それからムッシューは? 『ジィオン』はどうなったわけ? いやその、アナハイムからソールズベリーへ渡るまでには、なんかいろいろ、ゴタゴタしたことがあったんじゃない?」
「その辺は詳しくないワ。アンタみたいに興味が湧いて自分なりに調べてはみたけど。『ジィオン』は出展された時点で、既に作者のディース・S・天地に所有権はなかったみたいだし。発案から製作までを任されたって格好だから、捜査当局にとやかく言われることはなかったと思うワ」
「それは、よかったけれど……」
「でもなんとなく、『ジィオン』だけが曰くつきの存在とされて、ステイツ内でももて余されていたところへ、ヨーロッパの新参美術誌や若輩評論家連中が、
「挙って、かぁ……どんな風に?」
な~んか自然と喰いついちゃうんだよなぁ、あの変に憧れているムッシューのことだけに。