143 _________________________ ‐2nd part‐

文字数 1,267文字

「ヴィーは、そこに閉じ込められて、もうクスリを呑まなくなるプログラムを受けながら、勉強させられるんだよ。眠る時もずっと見張られて、拘束服とか着せられて。そのために、あのPSのオジサンはクルマをとりに行ったんだよ」

「…………」

「ヒドくたっていいんだよ、全然。ヴィーは徹底的に自分を壊されて、もっと親の思いどおりの娘になるんだから。成績が良くって、モデルなんてオシャレな仕事もしてる、世間話でチョットした自慢になる娘にだよ」

「そんな……」

「ヴィーも、ホントはそんな自分が大嫌いで、一度トコトン自分をダメにしちゃいたいのに、自分よりダメそうな人が中途半端に止めようとすると、親のおカネでチヤホヤされてできてるヴィーのプライドが許さないんだよ」

「…………」

「どして、自分よりダメな人間のクセに、どうせ最後まで助けてなんかくれないクセに、心配なんかしてくるのかって、ヴィーの自分を許せない気持が、そのまま、その人の方へ向いちゃうんだよ」
 
「ん~……」そいつは、必勝セミナーでやった例題のような話だよなぁ。

 自己破壊衝動が自身の生本能ではなく、心配してくれた相手への暴蔑(ぼうべつ)で、外部転化しちまうっていう、内的衝動説の変型ってか?
 それとも、単なるワガママだろうと欲求不満には違いないから、情動表出説による不快情動の表出、あるいは発散としての攻撃性ってヤツなんだろうか?

「どっちかなんて、どうでもいいけど、だからヴィーは、私や水埜楯もそうやって傷つけちゃわないように、ヴィーから逃げ出してくれたんだよ」

「……そうなの?」

「ヴィーが、水埜楯のことを好きでいる内は大丈夫だけど、水埜楯があんまりツレなくしすぎると怖いんだよ。偶にはお世辞でいいから、バレないように褒めてあげなくちゃ、ダメダメなんだよ水埜楯」

「でもさぁ……」

「私たちのお祖母ちゃんって人も、事故で死んだのは間違いじゃないけど、その事故そのものが見せかけで、ホントは殺されてるんだよ」

「へぇっ!」

「ネッネッ? 水埜楯のことは信じてるけど、ホントのことって、信じるだけじゃ足りないくらいヒドいんだよ。だから、ダメのままじゃダメだよ。水埜楯の準備ができるまでは、教えないない」

「……オレ、どうすればいい? ダメじゃなくなる準備って何?」

「それは、わかんないない。でも、水埜楯がダメじゃなくなった時はわかるんだよ。だから、ダメじゃなくなることをガンバるガンバるぅ」

 オレが、ダメじゃなくなるようなこと? しっかりしろって意味だろか、自信なんかも堅固なまでにもち合わせて? 
 犯人を知ったあと、ほかのみんなに頼らなくても済むくらいの自信をか、このオレが?

 ミラノさん、またなんて悠長なことを……まぁ、殺人罪の時効はなくなったから。

 でも、そんなに時間はかけられないし、かけるつもりもないけれど……って言うか、緑内の命日はオレの誕生日だった。
 このままだと、一生ついて廻るってのかぁ?

「落ち着く着く水埜楯、グルングルンでよくわからないんだよ」

「……ミラノさん、これって運命ってヤツだったりしちゃうわけ?」
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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