225 _____________ ‐2nd part‐

文字数 1,290文字

 しかしながら、オレの何喰わぬ顔は、おハル相手ならまだ通用するみたい。
 変わらぬテンションで、おハルは話を続けてくれる。

「新しいデザインのだって、シルヴァーやゴールドでつくって見せれば、唏の評価も跳ね上がると思うワ。ムシたちは、ハンダの方が味が出てたけど、今度のは逆に質感がどうもねぇ。始めから、キレイで可愛いことが大前提の妖精なわけだからさ」

「……なんか、心強いのか、プレッシャーなのかわからないなぁ。それにオレは、法学科や経営学科になんか進めやしないし、法曹やバリバリのビジネスマンになってる自分なんて、思い浮かびもしないんだよね」

 あぁ~っと、ついつい口を滑らせちまったぁ。根が正直、って言うより、やっぱダメダメなもんで……。

「ホント、情けない弟分だワ。マヌケたアホだろうと、簡単に折れない気骨だけはもちな。無欲は美徳だけど、無気力は最低の悪徳だよ。そうだ、GWになったら、合宿の覚悟で野母崎に来な。その意気地のなさから叩きなおしてやるワ」

「えーっ、GWから自動車教習所へ通おうと思ってたのにぃ」

「なら合宿免許だと思えばいいワ。期間中に運転技術だけでなく、メタルワーキングの何たるかを叩き込んでやるから」

「どの道地獄を見そうだなぁ。まぁバイトとかの兼ね合いもあるんで、都合がついたら行かせていただきますよ、是非ね」

「よーし言ったね。私は社交辞令を許さない女なんだワ、アンタの都合は、事前に確と唏やポールに確認してやるからねっ」

「げぇー、何でそこまで?」

「そりゃ当然だワ。いくら契約上、アンタの存在が表沙汰になることはないからって、実際に商品がつくられてる現場くらい、その目に入れとく必要はあるワ。ここ、デザインが生まれる環境は、確とチェックさせてもらったからね」

「はあ、そう言うことなら仕方がない。前向きに検討するしかなさそうですねぇ」

「仕方がないぃ? 是非でしょ是非。けど、来てくれたら損はさせないよ。クルマは仲間のを借りれば、軽トラからトレーラーまで選りどり見どり、道だって山あり谷あり、半端ないときてるからね。普免くらい一発合格させてやるワ」

「な~んか、絵に描いたような地獄の合宿になりそうなんだけれどぉ」

 おハルは、軽い高笑いでムダ話を締めくくり、ソファーの毛布を抱えて「グンナイメア~(よい悪夢を)」とLDを出て行った。

 ……なんかオレも、長かった今日が、ようやっと終わりを告げた気分がしてくる。
 けれど、既に一眠りしてしまっているので、体の方はまだまだこれからってカンジ。
 そのアンバランスさから、意味もなくボォ~ッとしてきてしまう。

 とり敢えず鍋を温めながら、まだ酔い醒めぬ、夢のような現実に呑み浸りだしてくる内に、やっぱり、新着アイテム一揃いまでもらっちゃうなんてこと、いくら何でも空恐ろしくなってきちまった。

 トリノさんなら、まだ起きているはずだから、ミラノのことも含めて、やっぱりちゃんと確認しておいた方がいいだろう。
 この前の礼装と言い、ホントは、単なるミラノの自分勝手にすぎなくて、陰で何とかジェレさんが、尻拭いをしているだけなのかも知れないんだし。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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