235 _______________ ‐3rd part‐
文字数 1,293文字
「ありがとだよ。でも、ここには長くいたくないんだよ。ここは閉めきるとフツウじゃない、ワタシにはダメダメな場所だから」
……どうやらミラノは、オレの立つ側の壁際、ベッドの上に腰かけている。
葉植さんは、その向かい、ここの荷物が入れ替えられた際に、唯一残されたロングデスクを挿んだ向こう側、オレのデスクがある辺りにいるようだ。
トリノさんは気配すらカンジられないけれど、たぶんミラノの隣で冷静に、事のなりゆきを見守っているといったところか。
「わかるー? このプレハブって、高断熱効果だけじゃーなく、邪魔で危うい電波なんかも、遮断する建材が使われてるんだねー。カーテンも、窓や戸に嵌ったガラスからしてそー。この国にはそぐわない代物だねー」
そうだったのか……でも、とにかく一安心、懸念していた険悪さは全然ない。
葉植さんは、ミラノたちにエスプレッソなんかを淹れていたらしく、まだ本題には全く入っていない様子だし。
さぁて、オレは一体どうしたものか?
「外から、稀釈してくれるモノがはっきり入ってこないから、葉植木春菊の意識が、物凄く濃く流れ込んできて、ワタシの頭の中がピ~リピリ、慣れる前に疲れちゃいそうだよ。トリノの気が散るから、戸を開けっ放しにもできないし、話はなるべく手短にして欲しいんだよ」
「やっぱりー、あなたはテレパスだったんだねー。お祖父ちゃんの古い記録に、≪精神感応能力を有する可能性がある者との握手は、その掌の感触が、両生類の外皮のごとく甚だ不快≫云云って、あったんだー」
「ケロケロッ、ピョ~ンだよ」
「いや~。あなたの手も、両生類とは思わなかったけど、なんか尋常じゃないモノをカンジたものー」
「初めての人のユラユラを押えてよくわかろうとすると、相手の手にもチカラが伝わるみたいなんだよ。その時の感触が、尋常じゃないかは知らないけど、葉植木春菊のことはよくわかったよ。だから葉植木春菊も、ワタシの前では、その被ってるニャンコを脱いじゃっていいんだよ。ワタシに話したいって事も、よくわかってるし」
「そーかぁ。では、お言葉に甘えて……楯クンは、あなたといつも手をつないでいるのに、特に何もカンジないのかな? あなたがカンジさせないようにしてるとか?」
「楯はドギマギ屋さんだから、スグ掌に汗をかいちゃうんだよ。それでワタシがチカラを使っても、尋常じゃないモノなんかカンジないない」
「そうなんだ? 三〇年前だったら、お祖父ちゃんに紹介してあげたのにな。今はもう、パラサイコロジーの分野には、全く興味がないんだよね」
「今でも結構なんだよ。葉植木春菊のおジィちゃんは、人間でも実験対象になると、生き物だと思わなくなるじゃん。紹介された途端に殺されて、とり出した脳ミソを、スライスになんかされたくないない」
「それって、お祖父ちゃんの脳標本コレクションのことを言ってるの? まぁ、中には、力尽くで献体してもらったモノもありそうだからね」
「葉植木春菊も、自分が認めた人のために、そうじゃない人を殺しすぎるのはダメダメだよ」
──今ミラノ何って! それに、葉植さんの話しぶりの変わりようも一体っ?
……どうやらミラノは、オレの立つ側の壁際、ベッドの上に腰かけている。
葉植さんは、その向かい、ここの荷物が入れ替えられた際に、唯一残されたロングデスクを挿んだ向こう側、オレのデスクがある辺りにいるようだ。
トリノさんは気配すらカンジられないけれど、たぶんミラノの隣で冷静に、事のなりゆきを見守っているといったところか。
「わかるー? このプレハブって、高断熱効果だけじゃーなく、邪魔で危うい電波なんかも、遮断する建材が使われてるんだねー。カーテンも、窓や戸に嵌ったガラスからしてそー。この国にはそぐわない代物だねー」
そうだったのか……でも、とにかく一安心、懸念していた険悪さは全然ない。
葉植さんは、ミラノたちにエスプレッソなんかを淹れていたらしく、まだ本題には全く入っていない様子だし。
さぁて、オレは一体どうしたものか?
「外から、稀釈してくれるモノがはっきり入ってこないから、葉植木春菊の意識が、物凄く濃く流れ込んできて、ワタシの頭の中がピ~リピリ、慣れる前に疲れちゃいそうだよ。トリノの気が散るから、戸を開けっ放しにもできないし、話はなるべく手短にして欲しいんだよ」
「やっぱりー、あなたはテレパスだったんだねー。お祖父ちゃんの古い記録に、≪精神感応能力を有する可能性がある者との握手は、その掌の感触が、両生類の外皮のごとく甚だ不快≫云云って、あったんだー」
「ケロケロッ、ピョ~ンだよ」
「いや~。あなたの手も、両生類とは思わなかったけど、なんか尋常じゃないモノをカンジたものー」
「初めての人のユラユラを押えてよくわかろうとすると、相手の手にもチカラが伝わるみたいなんだよ。その時の感触が、尋常じゃないかは知らないけど、葉植木春菊のことはよくわかったよ。だから葉植木春菊も、ワタシの前では、その被ってるニャンコを脱いじゃっていいんだよ。ワタシに話したいって事も、よくわかってるし」
「そーかぁ。では、お言葉に甘えて……楯クンは、あなたといつも手をつないでいるのに、特に何もカンジないのかな? あなたがカンジさせないようにしてるとか?」
「楯はドギマギ屋さんだから、スグ掌に汗をかいちゃうんだよ。それでワタシがチカラを使っても、尋常じゃないモノなんかカンジないない」
「そうなんだ? 三〇年前だったら、お祖父ちゃんに紹介してあげたのにな。今はもう、パラサイコロジーの分野には、全く興味がないんだよね」
「今でも結構なんだよ。葉植木春菊のおジィちゃんは、人間でも実験対象になると、生き物だと思わなくなるじゃん。紹介された途端に殺されて、とり出した脳ミソを、スライスになんかされたくないない」
「それって、お祖父ちゃんの脳標本コレクションのことを言ってるの? まぁ、中には、力尽くで献体してもらったモノもありそうだからね」
「葉植木春菊も、自分が認めた人のために、そうじゃない人を殺しすぎるのはダメダメだよ」
──今ミラノ何って! それに、葉植さんの話しぶりの変わりようも一体っ?