187 _______________ ‐3rd part‐

文字数 1,144文字

「私が、水埜に、嘘なんか吐いてどうなるってのよ?」

「まぁな……でも、いいやオレは。アップさえできれば、それで、助けてくれた人への面子は立つしな」

「ホントつくづくバカ。そんなことじゃないかと思ってたわよ、その中に入ってるヤツなら、そのまま貼り付けても大丈夫だから」

「あぁ? なんか知らんけれど、らしくもない。太平洋プレートが前兆滑りを起こすからやめてくれ──って、おいまさか? マジでヴィーを蹴落とせる自信がないんじゃないだろなっ」

「だから、

って言ったでしょ。今回はいろいろとありすぎたから、私がダメだったら総崩れかもね~」

「ウッソ! この期に及んで何だその弱気? 剣橋は? 金樟までがダメなはずないだろっ」

「あんた、私たちのこと有機体とすら認識してないわけ? りんはあれでもヨレヨレなのよ、根上とは私たちよりも気が合っていたから。理知華だって、別に特待生にこだわってやってるわけじゃないわ。自分の立場を考えて、やるべきことをプライオリティーの高い順にやろうとする、生粋の優等生気質ってだけのことよ」

「……そんな、金樟が根上を? いつからだよ? でもつき合ってたわけじゃないよな、ひょっとして今どきワンサイドってか? けれどまぁ金樟は既に荒稼ぎしてるからともかく、剣橋も草豪も財団絡みで就職するんだろ? 弁護士ったって、より好待遇で契約するためにも、特待生の期間が長いに越したことはないんだろが」

「何そんな野暮なこと、こんなトコで言ってるのよ? 第一、私と理知華が目指しているのは国際公務員、特待生なんて関係ないんだけどぉ」

「国際……国連の職員ってか?」

「だから、課題レポートばっかに、感けてるわけにはいかなかったのっ。身近な問題に目を背けちゃったら、国際貢献なんかできる道理がないわ」

「…………」

 こいつら、想像を絶するほどの青っ尻だったとは。よもや、国際貢献だなんて(たわごと)までもをイケ洒蛙洒蛙と!  

「何よつまらないわねぇ、ケチな減らず口まで在庫ぎれ? まぁ、五〇年後を見てらっしゃいな。お人好しが、バカを見ない世界にしてあげるから。それまで水埜が、野垂れ死んでなけりゃいいんだけどぉ」

「……いや別に。おまえらが、結局アホだと判明して喜んでるだけ。ホント、こいつは、まさに僥倖を超えて冥利だなっ」

「私たちを、マジでアホ呼ばわりしたんだからね、精精これから頑張って、一度くらいは特待生になっときな。僥倖でも冥利でも、水埜にはもう、二度と巡ってこないってことだけは決まってるんだから」

 草豪は、それを別辞に回れ右。
 実に羨ましい風合のセイレネスジーンズ越しに、競走馬を思わせるヒップラインを(たわ)わしく振幅させながら、ヴェスティビュールへと戻って行きやがる。

 ──いやっ、だからそうじゃない!
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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