173 実世界をブラウズしている感覚はかなり…… ‐1st part‐
文字数 1,611文字
「全ての謎を解く、唯一の鍵は、根上と勝庫織莉奈が、書き込みをしていたBBSだけとなるんですが、それが判明した時点で、警察によって閉鎖され一般のアクセスは一切不可になっています」
「ま、当然でしょうねぇ……」
「DGのほかのメンバーたちにも、箝口令 を敷いたと見えて、閉鎖されたサイトでは、つい最近まで、何が語られていたのかもよくわかりません」
「……ん~、常套手段で典型的な展開ねぇ」
「でも筌松さん、サイトでの書き込みを、一時的にブラウジンングしていた者たちにまでは、口止めすることはムリだったようです。同系のサイトでは、その彼らによる、どこまでが真実かわからないタレ込み情報がもて囃されて、さまざまな臆説 が飛び交っている状況でもあるんです」
「それってきっと、この学内で交わされている噂話より、おもしろ可笑しく、エログロに脚色されちゃっているに違いないわねぇ……どうしよう美夏? この先、学外でのバイトなんか採用してもらえないかもぉ」
「……困るぅ。今回の、ここのバイトだってラッキーでしかなかったのにぃ」
「それなら、安心して最後までおつき合いください。お礼として、附属あがりならではの情報を、提供させていただきますから」
ハイ、完オチ~。これで筌松も上婾さんも、卒業まで草豪の手ゴマ確定! 理工学部生も女子だけに、散散ぱら利用されまくるに違いないね。
しっかし、草豪が話した事件のあらましは、オレの知り得た情報よりも詳細で、間然するところが全くなかった。
ってことは、疑う余地なく草豪にも、ケーサツ関係の知り合いがいて、有勅水さんの知り合いよりも、捜査に当たっている者たちに近いか、より高い地位にいると言えちゃいそうだ。
「性別と年齢差から、根上が悪者になるのはどうしようもないことでしょう。世間の認識は、まだまだ古くて甘い上に、下世話ですから」
おっと。ぬかりなく話を戻す剣橋には、オレもぬかりなく頷いて見せておこう。
「だけど、本当にその子一人が殺人を犯したのなら、今月に入ってから塾をサボりだしたなんてのより、もっと末期的なサインがあるはずなんだけどなぁ。ネットでの書き込み以外でも、顕著な行動として何かがさぁ?」
……筌松がまた、ミステリー好きを露見させ始めやがった。
「サイン? 犯罪の予兆と見られる
「部活かぁ、ん~……」
「全国レヴェルを目指す、なんて活動方針を生徒へ押しつけるには、指導教師の力量と練習内容が見合ってないと言う理由で、新人戦が終わった頃に、先輩の一人と激しいケンカにまでなっていたんです」
「それだわ、それっ」
「えぇ。言い負かされそうなったその先輩が、まず手を上げてしまったようです。ちなみにバスケットボール部でした」
草豪は横目でオレをチラ見る。別に、バスケに喰いついて、話を脱線させる気なんか全然ないってのにっ。
「理不尽に目上から手を出されれば、もうその時点で暴力OKってハードルを下げてもらったようなもんよね。一応それも段階としてのサインにはなるんだろうけど、勘違いしたキツいだけの練習を続けられてたら、キレるのがむしろフツウよ。相手はネットで、オトナと対等に本格ミステリーとか論評してるような子なんだし」
「でも、始めから殺害すると決めて、緑内を殺したわけではないのなら、その辺は個人差の範囲になるかもしれません。大体ミステリーファンの子なので、当然サインのことなんかも知っていて、それらしい行為は、絶対にバレないよう気をつけていたかもしれませんし」
「そもそも実際では根上クン、どう言う経緯で、勝庫織莉奈が緑内クンを殺した犯人だって知ったわけ? それ以前に、根上クンが単なる被害者だって主張したいのなら、勝庫織莉奈と緑内クンとはどんな関係?」
筌松に続いて上婾さんまで……まぁオレは、音無しく聞いていようか。
「ま、当然でしょうねぇ……」
「DGのほかのメンバーたちにも、
「……ん~、常套手段で典型的な展開ねぇ」
「でも筌松さん、サイトでの書き込みを、一時的にブラウジンングしていた者たちにまでは、口止めすることはムリだったようです。同系のサイトでは、その彼らによる、どこまでが真実かわからないタレ込み情報がもて囃されて、さまざまな
「それってきっと、この学内で交わされている噂話より、おもしろ可笑しく、エログロに脚色されちゃっているに違いないわねぇ……どうしよう美夏? この先、学外でのバイトなんか採用してもらえないかもぉ」
「……困るぅ。今回の、ここのバイトだってラッキーでしかなかったのにぃ」
「それなら、安心して最後までおつき合いください。お礼として、附属あがりならではの情報を、提供させていただきますから」
ハイ、完オチ~。これで筌松も上婾さんも、卒業まで草豪の手ゴマ確定! 理工学部生も女子だけに、散散ぱら利用されまくるに違いないね。
しっかし、草豪が話した事件のあらましは、オレの知り得た情報よりも詳細で、間然するところが全くなかった。
ってことは、疑う余地なく草豪にも、ケーサツ関係の知り合いがいて、有勅水さんの知り合いよりも、捜査に当たっている者たちに近いか、より高い地位にいると言えちゃいそうだ。
「性別と年齢差から、根上が悪者になるのはどうしようもないことでしょう。世間の認識は、まだまだ古くて甘い上に、下世話ですから」
おっと。ぬかりなく話を戻す剣橋には、オレもぬかりなく頷いて見せておこう。
「だけど、本当にその子一人が殺人を犯したのなら、今月に入ってから塾をサボりだしたなんてのより、もっと末期的なサインがあるはずなんだけどなぁ。ネットでの書き込み以外でも、顕著な行動として何かがさぁ?」
……筌松がまた、ミステリー好きを露見させ始めやがった。
「サイン? 犯罪の予兆と見られる
仄めかし行為
のことですか。それなら、勝庫織莉奈は二学期の半ばから、部活にも出なくなっていますね」「部活かぁ、ん~……」
「全国レヴェルを目指す、なんて活動方針を生徒へ押しつけるには、指導教師の力量と練習内容が見合ってないと言う理由で、新人戦が終わった頃に、先輩の一人と激しいケンカにまでなっていたんです」
「それだわ、それっ」
「えぇ。言い負かされそうなったその先輩が、まず手を上げてしまったようです。ちなみにバスケットボール部でした」
草豪は横目でオレをチラ見る。別に、バスケに喰いついて、話を脱線させる気なんか全然ないってのにっ。
「理不尽に目上から手を出されれば、もうその時点で暴力OKってハードルを下げてもらったようなもんよね。一応それも段階としてのサインにはなるんだろうけど、勘違いしたキツいだけの練習を続けられてたら、キレるのがむしろフツウよ。相手はネットで、オトナと対等に本格ミステリーとか論評してるような子なんだし」
「でも、始めから殺害すると決めて、緑内を殺したわけではないのなら、その辺は個人差の範囲になるかもしれません。大体ミステリーファンの子なので、当然サインのことなんかも知っていて、それらしい行為は、絶対にバレないよう気をつけていたかもしれませんし」
「そもそも実際では根上クン、どう言う経緯で、勝庫織莉奈が緑内クンを殺した犯人だって知ったわけ? それ以前に、根上クンが単なる被害者だって主張したいのなら、勝庫織莉奈と緑内クンとはどんな関係?」
筌松に続いて上婾さんまで……まぁオレは、音無しく聞いていようか。