290 長~い夜を飛び越えてみたら ‐1st part‐
文字数 1,355文字
──フザケているとしか思えないくらいに、ミラノは階段を降りきった途端、意識を失うみたいにして眠りコケた。
道路へ倒れ込む前に、オレがミラノを負 ぶうことができたのは、きっとまた、トリノさんがPKで支えてくれていたからに違いない。
つまるところ、トリノさんだけが高雅なオトナだ。
それに引き換えミラノときたら、早くも、背負うオレまで眠気に誘われそうな、安らかな寝息を立てている。
耳元から清福をカンジちゃうよねぇ、しみじみと。
それに、オレの先を、オレなんかを頼ってくる気配がまるでない足どりで歩くトリノさんのお蔭で、強い確信みたいなモノもできていた。
妙な心配なんかしなくても、オレがつり合えるとしたら、間違いなくミラノの方だって。
まあ、用心しないと、バカップル驀地ってことにもなり難ねないけれど、それは当事者の立場になってしまえば、存外悪いモノでもなさそうだし……。
そして、こんな今にまで至る前の最初の目的も思い出して、トリノさんから、浴びせた質問以上の回答をもらうことができた──。
ミラノは、父親のロベルトさんからネグレクトなんてされていなかった、全く。
だから当然、一族郎党からも忌み嫌われているどころか、疎まれさえおらず、親身に相談に乗ってもらう必要もなければ、逆に相談なんかミラノがしないと、断言まできっぱりとされてしまった。
とにかく意外も意外だったのは、なんとセイレネスは、僊河青蓮がCDОを任されたブランドだったこと。
つまりは最高デザイン責任者、セイレネスのデザイナーの中で、最も責任ある立場と言うことなのにもかかわらず、その解釈が、僊河青蓮個人のブランドであると、もはや定着し尽くして、訂正の効かない世界的な齟齬 となっていたらしい。
だから、自分がデザインしたプレタポルテやオートクチュールだけでなく、所属デザイナーたちの作品も監修するブランド組織の一役にすぎず、世界四大コレクションだろうと国営放送の取材だろうと、僊河青蓮個人が対応することはしない、それが当然のスジだったってこと。
さらには、ミラノとトリノさんが、セイレネスで、クリエイティヴディレクターとして働いていることも、ジェレさんから聞いたとおりの事実。
ミラノは、職務内容的にどこででもできるため、日本でも何の問題もなく仕事を熟せるばかりか、収入面でも、オレが心配する必要なんか嘘偽りなしに皆無だった。
そもそもミラノもトリノさんも、この来日期間は、半分休暇で、半分はビジネスのワーケーションみたいなモノ。
ビジネスの方は、とっくにすっかりに片づいていて、どこかへ遊びに行っているんだろうと思っていた束の間に、滞りなく終えてしまっていたみたい。
まぁ、それだけ、オレがイメージできるビジネスとは、質もレヴェルも
なんだかもう、何を一人でウ~ンウ~ンと、窓ガラスを突破しようと体当たりしまくるハエも同然の気苦労をしていたのやらだ。
この、未だかつて味わったことのない解放感を、家の玄関灯が出迎えてもくれた。
が……。
玄関へ入ってドアが閉じた途端、オレには、おハルの頭ごなしの大目玉が待っていた。
道路へ倒れ込む前に、オレがミラノを
つまるところ、トリノさんだけが高雅なオトナだ。
それに引き換えミラノときたら、早くも、背負うオレまで眠気に誘われそうな、安らかな寝息を立てている。
耳元から清福をカンジちゃうよねぇ、しみじみと。
それに、オレの先を、オレなんかを頼ってくる気配がまるでない足どりで歩くトリノさんのお蔭で、強い確信みたいなモノもできていた。
妙な心配なんかしなくても、オレがつり合えるとしたら、間違いなくミラノの方だって。
まあ、用心しないと、バカップル驀地ってことにもなり難ねないけれど、それは当事者の立場になってしまえば、存外悪いモノでもなさそうだし……。
そして、こんな今にまで至る前の最初の目的も思い出して、トリノさんから、浴びせた質問以上の回答をもらうことができた──。
ミラノは、父親のロベルトさんからネグレクトなんてされていなかった、全く。
だから当然、一族郎党からも忌み嫌われているどころか、疎まれさえおらず、親身に相談に乗ってもらう必要もなければ、逆に相談なんかミラノがしないと、断言まできっぱりとされてしまった。
とにかく意外も意外だったのは、なんとセイレネスは、僊河青蓮がCDОを任されたブランドだったこと。
つまりは最高デザイン責任者、セイレネスのデザイナーの中で、最も責任ある立場と言うことなのにもかかわらず、その解釈が、僊河青蓮個人のブランドであると、もはや定着し尽くして、訂正の効かない世界的な
だから、自分がデザインしたプレタポルテやオートクチュールだけでなく、所属デザイナーたちの作品も監修するブランド組織の一役にすぎず、世界四大コレクションだろうと国営放送の取材だろうと、僊河青蓮個人が対応することはしない、それが当然のスジだったってこと。
さらには、ミラノとトリノさんが、セイレネスで、クリエイティヴディレクターとして働いていることも、ジェレさんから聞いたとおりの事実。
ミラノは、職務内容的にどこででもできるため、日本でも何の問題もなく仕事を熟せるばかりか、収入面でも、オレが心配する必要なんか嘘偽りなしに皆無だった。
そもそもミラノもトリノさんも、この来日期間は、半分休暇で、半分はビジネスのワーケーションみたいなモノ。
ビジネスの方は、とっくにすっかりに片づいていて、どこかへ遊びに行っているんだろうと思っていた束の間に、滞りなく終えてしまっていたみたい。
まぁ、それだけ、オレがイメージできるビジネスとは、質もレヴェルも
段チ
ってだけで、トリノさんが必要なら、ミラノと一緒に直接顔見せすることこそが、大きな契約を大きく前進させるんだろうけれど。なんだかもう、何を一人でウ~ンウ~ンと、窓ガラスを突破しようと体当たりしまくるハエも同然の気苦労をしていたのやらだ。
この、未だかつて味わったことのない解放感を、家の玄関灯が出迎えてもくれた。
が……。
玄関へ入ってドアが閉じた途端、オレには、おハルの頭ごなしの大目玉が待っていた。