169 ____________ ‐3rd part‐
文字数 1,607文字
「えぇりん、ホントいい機会だわ」
「野次馬どもの放言に、ウェブで眞弓が、幾らカウンタープロットを講じたって、最も身近で肝心な連中に効いてないんじゃ、全く意味を成さないんだしさ」
「まったくだわ、灯台下暗しもいいところ……」
草豪が何となく促すと、軽く一つ頷いて剣橋が口を開く。
「そう。よかったらもう少し話をさせてもらえませんか? このキャンパスには、こうして話せるような理工学部生の知り合いがいないんです、附属あがりは男子ばかりで、取り合ってもらえなくて」
「……聞くだけでいいのなら。実際、知りたいと思ってましたし」
筌松が目配せすると上婾さんも「えぇ、聞いておきたいです」と頷いた。
つまり、オレももう暫く、この妙な会合に同座しなくてはならないのかよ……。
「でもこの彼は? 根上クンともかなり仲好さそうだったけど。ほかの理工の附属あが──いえ、附属校出身者たちとも、それなりのつき合いがあるんじゃないの?」
「水埜? ダメダメ、こいつは別格じゃなく格外ですもん」
ダメダメだと草豪ぉぉぉっ!!!
ったく、ミラノさん以外から言われると、ハラワタが急騰しちまうよなっ。
それも草豪じゃ、言い返したが最後、返り討ちでボロッボロなの確実だし……。
「……附属校って、やっぱなんか、いろいろと凄そう……」
筌松まで、そんな目をオレに向けてくるんじゃねぇ~っ!
だのにっ、オレの激怒もかまわず草豪は、実にあっけらかんと話を戻しやがる。
「それでは、齟齬 や誤伝がないよう、初めから話しましょうか」
「水埜、あなたもいろいろと小耳にはさんでいるでしょう? 眞弓を気にせず、話が違うとカンジた時点で、どんどん口を出してくれてかまわないから。とにかく、最後までつき合ってもらいたいのよ」
剣橋なんかから、そう真摯なまでに言われちまうと、これまた逆らえないんだよなぁ……。
「へぇへぇ、わかりましたってのっ」
オレは、剣橋と草豪の視線を、順にはずしていく。すると、オレの目に入るのは、正面の金樟だけ。
その金樟は、テーブルに肩肘を突いた手枕で、顔をそっぽに向けていた。
興味があるとは思えないけれど、壁に並んだ画 でも眺めていやがるんだろう。
しかしどうやら、ここでオレが見倣うべきは金樟みたいだ……。
そして、仕切りなおしたカンジで草豪が語り出す。
「根上が亡くなっていたのは、栃木県の黔磯市にある、二つの町の住宅地を画然と区切るみたいにして広がる雑木林の中でした。既に御存知でしょうけれど、同県西哪須野町内の中学校に通う、勝庫織莉奈 と言う一三歳の女子生徒と一緒にです……」
その、この春から、中学二年生になるはずだった勝庫織莉奈と根上とは、以前に話していたミステリー関連サイトでのDG、所謂ディスカッション‐グループのメンバーという間柄であった。
勝庫織莉奈と根上は、中高課程の卒業式前夜から、行動をともにしていたとのこと。
オレと、学生会館のラウンジで休憩時間を過ごしたあと、根上は、ゼミでの作業を最後までやって、大学から一番近いパーキングに駐めていたクルマで黔磯へと向かった。
首都高速から、東北自動車道を使ったことは、ケーサツが調べあげている。
根上が既に運転免許ばかりか、マイカーをもっていたショックがぶり返してくるけれど、今はそんな動揺など、噯気 にも出せやしない。
筌松と上婾さんは、根上よりも二時間ほど早い、一七時前にゼミの作業からあがり、そのまま学外へと出ていたために、ケーサツから事情聴取などを受けずに済んでいた。
根上は、ゼミの関係者と満遍なくオープンぽくやっていたから、バタついた作業の合間の二〇分ばかり、一緒にお茶をしていたことは、気にも留められなかったようだ。
もしも彼女たちが事情聴取を受けていたら、当然オレの名前があがるわけで、また君が関わっていたのかと、ケーサツから不審感を強められてしまうところだったよなぁ……。
「野次馬どもの放言に、ウェブで眞弓が、幾らカウンタープロットを講じたって、最も身近で肝心な連中に効いてないんじゃ、全く意味を成さないんだしさ」
「まったくだわ、灯台下暗しもいいところ……」
草豪が何となく促すと、軽く一つ頷いて剣橋が口を開く。
「そう。よかったらもう少し話をさせてもらえませんか? このキャンパスには、こうして話せるような理工学部生の知り合いがいないんです、附属あがりは男子ばかりで、取り合ってもらえなくて」
「……聞くだけでいいのなら。実際、知りたいと思ってましたし」
筌松が目配せすると上婾さんも「えぇ、聞いておきたいです」と頷いた。
つまり、オレももう暫く、この妙な会合に同座しなくてはならないのかよ……。
「でもこの彼は? 根上クンともかなり仲好さそうだったけど。ほかの理工の附属あが──いえ、附属校出身者たちとも、それなりのつき合いがあるんじゃないの?」
「水埜? ダメダメ、こいつは別格じゃなく格外ですもん」
ダメダメだと草豪ぉぉぉっ!!!
ったく、ミラノさん以外から言われると、ハラワタが急騰しちまうよなっ。
それも草豪じゃ、言い返したが最後、返り討ちでボロッボロなの確実だし……。
「……附属校って、やっぱなんか、いろいろと凄そう……」
筌松まで、そんな目をオレに向けてくるんじゃねぇ~っ!
だのにっ、オレの激怒もかまわず草豪は、実にあっけらかんと話を戻しやがる。
「それでは、
「水埜、あなたもいろいろと小耳にはさんでいるでしょう? 眞弓を気にせず、話が違うとカンジた時点で、どんどん口を出してくれてかまわないから。とにかく、最後までつき合ってもらいたいのよ」
剣橋なんかから、そう真摯なまでに言われちまうと、これまた逆らえないんだよなぁ……。
「へぇへぇ、わかりましたってのっ」
オレは、剣橋と草豪の視線を、順にはずしていく。すると、オレの目に入るのは、正面の金樟だけ。
その金樟は、テーブルに肩肘を突いた手枕で、顔をそっぽに向けていた。
興味があるとは思えないけれど、壁に並んだ
しかしどうやら、ここでオレが見倣うべきは金樟みたいだ……。
そして、仕切りなおしたカンジで草豪が語り出す。
「根上が亡くなっていたのは、栃木県の黔磯市にある、二つの町の住宅地を画然と区切るみたいにして広がる雑木林の中でした。既に御存知でしょうけれど、同県西哪須野町内の中学校に通う、
その、この春から、中学二年生になるはずだった勝庫織莉奈と根上とは、以前に話していたミステリー関連サイトでのDG、所謂ディスカッション‐グループのメンバーという間柄であった。
勝庫織莉奈と根上は、中高課程の卒業式前夜から、行動をともにしていたとのこと。
オレと、学生会館のラウンジで休憩時間を過ごしたあと、根上は、ゼミでの作業を最後までやって、大学から一番近いパーキングに駐めていたクルマで黔磯へと向かった。
首都高速から、東北自動車道を使ったことは、ケーサツが調べあげている。
根上が既に運転免許ばかりか、マイカーをもっていたショックがぶり返してくるけれど、今はそんな動揺など、
筌松と上婾さんは、根上よりも二時間ほど早い、一七時前にゼミの作業からあがり、そのまま学外へと出ていたために、ケーサツから事情聴取などを受けずに済んでいた。
根上は、ゼミの関係者と満遍なくオープンぽくやっていたから、バタついた作業の合間の二〇分ばかり、一緒にお茶をしていたことは、気にも留められなかったようだ。
もしも彼女たちが事情聴取を受けていたら、当然オレの名前があがるわけで、また君が関わっていたのかと、ケーサツから不審感を強められてしまうところだったよなぁ……。