254 トロッコ問題のリアルなパラドクス ‐1st part‐
文字数 1,318文字
……いや、考えすぎの思い違いだ、また毎度の。
葉植さん、腰かけた際に、ただ足先に痺れでも走っただけみたい。
やっぱりダメだ、オレの頭はっ。そんなことを、イチイチ気に留めている場合じゃないってのに──。
「しつこすぎるんだ、みんなみんな。楯クンみたいに、聞き分けがよくて、何事も諦めることを前提にしてる人がボクは好きだね、考える折れ葦みたいでさ」
「…………」って、折れてても一応は考える葦?
腐っても鯛みたいな、葉植さんなりの、実に葉植さんぽく洒落のめしたフォローなんだろうけれど、キッツいんだよなぁ、なんか。
「この何でもアリ、稼ぐが勝ちの濁世における高潔さや壮美、秀麗さとゆった形容の新解釈とも思えるくらい、ボクには愛おしさがカンジられる」
「……え、そこまで? いいよ別に……」
「楯クンも、長年の同級生たちより、ボクの方を好いてくれていたんでしょう? ボクは僊河姉妹との契約は守る、もう人は殺さないよ。また、どうにもガマンならないしつこいヤツが現れたら、寸止めの半殺しにして、再起不能か植物状態で堪えてあげることにする」
「……って、……」
「それがもし、楯クンに関わり合いのある人だったら、そうする前に必ず楯クンに相談するようにしたっていい。ボクだって、何も好き好んでそうしたがる倒錯者ではないんだからさ」
そう葉植さんは瞬きもない真顔で言うと、オレの同意を求めるように一度軽く首を傾けた。
でも、だからって、「…………」オレには、とても頷き返すことなんかできない。
「ダメかな楯クン? 思う存分、納得できるよう話していると思うんだけど。一先ずでも納得してもらわないと、いつまでも帰れなくなっちゃうよ。ボクにはこのあと、もう一仕事残ってるんだよね。今夜は暫くぶりに熟睡できそうだし」
「……死体は? いや責丘さんのだから遺体か、緑内に運ばせた。どしたのそれは? 大体、何でケーサツを呼ばなかったの?」
「え~っ、そっちは、納得できなくてもボクの責任じゃないのにー」
「ごまかさないでよ。オレは、まだ全然納得なんてできてないし」
「ん~。だからさ、ボクも男なんだよね。地方公務員なんかに泣きついてどうなるの?」
「…………」
「緑内昴一郎を殺して助けてあげたことになるコも、事件があったことさえ通報していないよね。ボクは口止めの脅迫なんかしなかったよ、そんなヒマなどなかったし、楯クンたちのパーティーに、遅刻はできないからね」
「……だから、ごまかされないって、オレも……」
「いや、それは楯クンだって御承知の、曲げようもない現実でしょ。目の前で人が殺されようとも、警察に関わるくらいなら、黙過することを選ぶ人はいる。第一、それで自身が無事助かっているわけだし。楯クンの同級生女子の二人からして、同じことじゃないの?」
「…………」
「それに、人を殺すとゆうのは、本当にその人が死ぬだけでは済まないことだ。これまた、豈 図 らんやかもしれないけど、ボクはきっと、楯クンよりも遥かに家族思いなんだよ」
「……って?」
「ボクの家族は、ボクをネグレクトしているわけじゃないからね。むしろその真逆で、ボクを丸ごと愛しているから、ボクの自由にさせてくれているんだ」
「…………」
葉植さん、腰かけた際に、ただ足先に痺れでも走っただけみたい。
やっぱりダメだ、オレの頭はっ。そんなことを、イチイチ気に留めている場合じゃないってのに──。
「しつこすぎるんだ、みんなみんな。楯クンみたいに、聞き分けがよくて、何事も諦めることを前提にしてる人がボクは好きだね、考える折れ葦みたいでさ」
「…………」って、折れてても一応は考える葦?
腐っても鯛みたいな、葉植さんなりの、実に葉植さんぽく洒落のめしたフォローなんだろうけれど、キッツいんだよなぁ、なんか。
「この何でもアリ、稼ぐが勝ちの濁世における高潔さや壮美、秀麗さとゆった形容の新解釈とも思えるくらい、ボクには愛おしさがカンジられる」
「……え、そこまで? いいよ別に……」
「楯クンも、長年の同級生たちより、ボクの方を好いてくれていたんでしょう? ボクは僊河姉妹との契約は守る、もう人は殺さないよ。また、どうにもガマンならないしつこいヤツが現れたら、寸止めの半殺しにして、再起不能か植物状態で堪えてあげることにする」
「……って、……」
「それがもし、楯クンに関わり合いのある人だったら、そうする前に必ず楯クンに相談するようにしたっていい。ボクだって、何も好き好んでそうしたがる倒錯者ではないんだからさ」
そう葉植さんは瞬きもない真顔で言うと、オレの同意を求めるように一度軽く首を傾けた。
でも、だからって、「…………」オレには、とても頷き返すことなんかできない。
「ダメかな楯クン? 思う存分、納得できるよう話していると思うんだけど。一先ずでも納得してもらわないと、いつまでも帰れなくなっちゃうよ。ボクにはこのあと、もう一仕事残ってるんだよね。今夜は暫くぶりに熟睡できそうだし」
「……死体は? いや責丘さんのだから遺体か、緑内に運ばせた。どしたのそれは? 大体、何でケーサツを呼ばなかったの?」
「え~っ、そっちは、納得できなくてもボクの責任じゃないのにー」
「ごまかさないでよ。オレは、まだ全然納得なんてできてないし」
「ん~。だからさ、ボクも男なんだよね。地方公務員なんかに泣きついてどうなるの?」
「…………」
「緑内昴一郎を殺して助けてあげたことになるコも、事件があったことさえ通報していないよね。ボクは口止めの脅迫なんかしなかったよ、そんなヒマなどなかったし、楯クンたちのパーティーに、遅刻はできないからね」
「……だから、ごまかされないって、オレも……」
「いや、それは楯クンだって御承知の、曲げようもない現実でしょ。目の前で人が殺されようとも、警察に関わるくらいなら、黙過することを選ぶ人はいる。第一、それで自身が無事助かっているわけだし。楯クンの同級生女子の二人からして、同じことじゃないの?」
「…………」
「それに、人を殺すとゆうのは、本当にその人が死ぬだけでは済まないことだ。これまた、
「……って?」
「ボクの家族は、ボクをネグレクトしているわけじゃないからね。むしろその真逆で、ボクを丸ごと愛しているから、ボクの自由にさせてくれているんだ」
「…………」