263 INTERMEZZO(幕間) ‐1st part‐
文字数 1,433文字
なので、一つ、軽めにでもツッコみを入れておくべきじゃないだろか? 友人として一応。
「って、葉植さん?」
葉植さんってば、戦隊ヒーローにでも変身するかのような手振りのところで一時停止。それから、バツ悪そうに小鼻を指で掻きだした。
「ア~、じゃー楯クン外へ出てみるー? 一見したところで、百聞はされそーだから、気が進まないけどー」
「しょうがないない。全~部、ここを選んだ葉植木春菊のせいなんだから。それに、いろいろ調べて、『シレーヌ』のスケジューリングを弄くったのは葉植木春菊じゃん、変なプロテクトまでかけて。何度か修正スクリプトを書いて送ったけど、全然リライトされないんだよ」
「ウ~。じゃーそれも、元に戻してから帰るよぉー」
「いいんだよそれは、お蔭で愉しいことになってるから。元に戻すと愉しいを超えて、この辺で暮らしていられなくなっちゃうもん」
「そぉー? まー、元どーりにするのはスグできるからね、いつでもゆってー」
「うんうん。けどワタシは、そこまでシャーデンフロイデの慢性化はしてないない」
「そー? ボクが知らん顔して放っといたら、いずれもっととんでもない事件に発展してー、ムッシュさんの傑作が、撤去されるかもーって思ったから。歌声はそのままだけど、あんまり賢くならないよーにしたんだ。怪物らしく、カワイー程度にね」
「……何の話、二人して?」
確答を求めて、オレはミラノと葉植さんを交互に見やる。
すると葉植さんが、短く息を吐いてから「行こー楯クン」と、オレが座る脇をすりぬけて、プレバブハウスの戸を開けた。
まだ冷たいものの、柔らかさのある空気が入ってくる。
それがオレの頬を撫でるだけでなく、戸外で遍く漠漠とした喧噪も、オレの鼓膜を震わせ始めた──。
ここはそもそも、オレが現実をカンジるにはあまりにも静かすぎたみたい、今になって気づく鈍さに、自分でも呆れるけれど……。
「おいでよー。この際だからー楯クンにも、ムッシュさんの奇鬼ぶりを教えて差しあげるー」
「……あ、はい……」
いいのか、ウカウカとついて行って? 葉植さんを、そこまで信じていないわけじゃないけれど、単に殺されないだけで、何か酷い目に遭いやしないかぁ?
「大丈夫だよ、行く行く楯。葉植木春菊が怖いなら、そこを少し開けとけばいいよ。そうすれば、葉植木春菊が豹変しても、ワタシにはスグわかるから。トリノのピアスは、ここの壁なんか簡単に突きぬけて、葉植木春菊を仕留めるんだよ」
「え~っ」
そんなことを微笑んで言うミラノも、怖いとまではいかないものの、妙な不安をかき立ててくれるぅ。
しかし、それでさらに尻込みをしたらダメダメだし、戸を閉めきらずに行けば、葉植さんを信じていないと明言するも同然……こうなりゃオレも、ありったけの意気地をふり絞り、曳 かれ者の小唄を絶唱してやろうじゃんか!
ミラノたちへ、すっくと立ち上がって見せたオレは、さらにキビキビ大股で、葉植さんの待つ外へ出た。引き戸だってピシャリと閉める。
「痩せガマンしなくていーのに。でもーこれで、少しは現実感が得られたんじゃーない?」
「オレはホント、葉植さんを信用していないわけじゃないですよ。単なる臆病で、これから何が起こるのかわからなくて、ビビってるだけ。何か起こっても、オレはオレ自身すら守れる自信がないもんだから。なので当然、葉植さんを助ける余裕なんかありませんからね」
葉植さんのあとに従いつつ、言いわけと言いのがれをさせておいてもらう。
「って、葉植さん?」
葉植さんってば、戦隊ヒーローにでも変身するかのような手振りのところで一時停止。それから、バツ悪そうに小鼻を指で掻きだした。
「ア~、じゃー楯クン外へ出てみるー? 一見したところで、百聞はされそーだから、気が進まないけどー」
「しょうがないない。全~部、ここを選んだ葉植木春菊のせいなんだから。それに、いろいろ調べて、『シレーヌ』のスケジューリングを弄くったのは葉植木春菊じゃん、変なプロテクトまでかけて。何度か修正スクリプトを書いて送ったけど、全然リライトされないんだよ」
「ウ~。じゃーそれも、元に戻してから帰るよぉー」
「いいんだよそれは、お蔭で愉しいことになってるから。元に戻すと愉しいを超えて、この辺で暮らしていられなくなっちゃうもん」
「そぉー? まー、元どーりにするのはスグできるからね、いつでもゆってー」
「うんうん。けどワタシは、そこまでシャーデンフロイデの慢性化はしてないない」
「そー? ボクが知らん顔して放っといたら、いずれもっととんでもない事件に発展してー、ムッシュさんの傑作が、撤去されるかもーって思ったから。歌声はそのままだけど、あんまり賢くならないよーにしたんだ。怪物らしく、カワイー程度にね」
「……何の話、二人して?」
確答を求めて、オレはミラノと葉植さんを交互に見やる。
すると葉植さんが、短く息を吐いてから「行こー楯クン」と、オレが座る脇をすりぬけて、プレバブハウスの戸を開けた。
まだ冷たいものの、柔らかさのある空気が入ってくる。
それがオレの頬を撫でるだけでなく、戸外で遍く漠漠とした喧噪も、オレの鼓膜を震わせ始めた──。
ここはそもそも、オレが現実をカンジるにはあまりにも静かすぎたみたい、今になって気づく鈍さに、自分でも呆れるけれど……。
「おいでよー。この際だからー楯クンにも、ムッシュさんの奇鬼ぶりを教えて差しあげるー」
「……あ、はい……」
いいのか、ウカウカとついて行って? 葉植さんを、そこまで信じていないわけじゃないけれど、単に殺されないだけで、何か酷い目に遭いやしないかぁ?
「大丈夫だよ、行く行く楯。葉植木春菊が怖いなら、そこを少し開けとけばいいよ。そうすれば、葉植木春菊が豹変しても、ワタシにはスグわかるから。トリノのピアスは、ここの壁なんか簡単に突きぬけて、葉植木春菊を仕留めるんだよ」
「え~っ」
そんなことを微笑んで言うミラノも、怖いとまではいかないものの、妙な不安をかき立ててくれるぅ。
しかし、それでさらに尻込みをしたらダメダメだし、戸を閉めきらずに行けば、葉植さんを信じていないと明言するも同然……こうなりゃオレも、ありったけの意気地をふり絞り、
ミラノたちへ、すっくと立ち上がって見せたオレは、さらにキビキビ大股で、葉植さんの待つ外へ出た。引き戸だってピシャリと閉める。
「痩せガマンしなくていーのに。でもーこれで、少しは現実感が得られたんじゃーない?」
「オレはホント、葉植さんを信用していないわけじゃないですよ。単なる臆病で、これから何が起こるのかわからなくて、ビビってるだけ。何か起こっても、オレはオレ自身すら守れる自信がないもんだから。なので当然、葉植さんを助ける余裕なんかありませんからね」
葉植さんのあとに従いつつ、言いわけと言いのがれをさせておいてもらう。