250 ______ ‐3rd part‐
文字数 1,236文字
「チョット意地悪な拡大解釈だったね。だけど、大きな罪を一人の人間に向けてするのも、小さな罪を幾人もの人間に散蒔 くのも、被害の総量としては同じようなものだと思うんだ」
「…………」
「ボクが言いたいのはつまり、やりたいと思ったことを理性で抑え込み続けるのは難しい、ガマンしてても、きっかけさえ巡ってくれば、必ずやってしまうのが人間だってこと」
「…………」
「ボクの場合、楯クンの同級生の一人目がそうだった。緑内昴一郎クン、彼には実に、半年以上も煩わされたことになるんだ」
「半年? そんなに……なぜ……」
「彼を殺してしまったのは、そもそも彼が悪いんだ。今は変電設備が置かれて跡形もなくされているけど、先月の下旬までは、この建設工事現場への搬入路だったよね。陽が落ちると真っ暗になる、ボクたちの広場があった場所に通じる石畳さ」
「……緑内が、死んでた場所?」
「そう。あの日、彼はボクの前を歩いていた。やはり楯クンに招かれて、パーティへ向かう途中だった彼は、彼の前を歩くキレイなコの跡を、コソコソとつけていたんだよ」
「……緑内が?」ン~、あいつならやりそう、コソコソじゃない風を装ってコソコソと……。
「そしてとうとう、そのコが怯えるみたいに搬入路へ入ってゆくと、彼もここぞとばかりに飛び込んで行った。ボクも何事かって走ったよ。ボクがその暗がりへ到着した時、彼はそのコと争っていた。嫌がるそのコから、荷物を強引に奪い取ろうとしていたんだ」
「…………」
「彼のお目当ては荷物なんかじゃない、無論そのコ自体だ。彼がかなりすばしっこいことや、興味をもった人に対して、偏執的なまでの粘着質だってこともわかってる。だから咄嗟に、リュックから釘抜きを取り出した。間が好いことに、辺りにはほかに誰もいなかったから」
「…………」
「いくら裏通りで、半端な時間帯とは言っても、一〇分間に三人くらいは、あの道を通るんじゃないかな?」
「……かも。……」
「だけど一〇分の間に、その三人が、襲い、襲われ、救出される、加害者であり被害者、加害者であり救助者、被救助者であり加害協力者、とゆう関係が成立するとなれば、目撃者なんて立場の人間は、発生する余地がなくなるんだ」
「…………」
「それに、楯クンたたちにはお笑いぐさだろうけど、この東京は、本当にいつ大地震に見舞われてもおかしくないことは、紛れもない事実。ボクのお母さんは地震女らしくてね、阪神淡路大震災だけでなく、東日本大震災までも身近で体験してるんだ」
「…………」
「それで、最低限の防災用具を必携させるのが、ボクへの躾になってしまった、ボクのお母さんには笑い事じゃないんだ。それで釘抜きも、いざとゆう時スグに使えるよう、仕込んであったわけ」
「……そう、だったんだ?」
「でも正直に告白するよ、彼の魔の手から、そのコを守ってやろうとしただけじゃない、ボクは緑内昴一郎を抹殺したかったんだ。それ以前から漠然とだが、機会を窺っていた」
「……だから、それは、どしてなの?」
「…………」
「ボクが言いたいのはつまり、やりたいと思ったことを理性で抑え込み続けるのは難しい、ガマンしてても、きっかけさえ巡ってくれば、必ずやってしまうのが人間だってこと」
「…………」
「ボクの場合、楯クンの同級生の一人目がそうだった。緑内昴一郎クン、彼には実に、半年以上も煩わされたことになるんだ」
「半年? そんなに……なぜ……」
「彼を殺してしまったのは、そもそも彼が悪いんだ。今は変電設備が置かれて跡形もなくされているけど、先月の下旬までは、この建設工事現場への搬入路だったよね。陽が落ちると真っ暗になる、ボクたちの広場があった場所に通じる石畳さ」
「……緑内が、死んでた場所?」
「そう。あの日、彼はボクの前を歩いていた。やはり楯クンに招かれて、パーティへ向かう途中だった彼は、彼の前を歩くキレイなコの跡を、コソコソとつけていたんだよ」
「……緑内が?」ン~、あいつならやりそう、コソコソじゃない風を装ってコソコソと……。
「そしてとうとう、そのコが怯えるみたいに搬入路へ入ってゆくと、彼もここぞとばかりに飛び込んで行った。ボクも何事かって走ったよ。ボクがその暗がりへ到着した時、彼はそのコと争っていた。嫌がるそのコから、荷物を強引に奪い取ろうとしていたんだ」
「…………」
「彼のお目当ては荷物なんかじゃない、無論そのコ自体だ。彼がかなりすばしっこいことや、興味をもった人に対して、偏執的なまでの粘着質だってこともわかってる。だから咄嗟に、リュックから釘抜きを取り出した。間が好いことに、辺りにはほかに誰もいなかったから」
「…………」
「いくら裏通りで、半端な時間帯とは言っても、一〇分間に三人くらいは、あの道を通るんじゃないかな?」
「……かも。……」
「だけど一〇分の間に、その三人が、襲い、襲われ、救出される、加害者であり被害者、加害者であり救助者、被救助者であり加害協力者、とゆう関係が成立するとなれば、目撃者なんて立場の人間は、発生する余地がなくなるんだ」
「…………」
「それに、楯クンたたちにはお笑いぐさだろうけど、この東京は、本当にいつ大地震に見舞われてもおかしくないことは、紛れもない事実。ボクのお母さんは地震女らしくてね、阪神淡路大震災だけでなく、東日本大震災までも身近で体験してるんだ」
「…………」
「それで、最低限の防災用具を必携させるのが、ボクへの躾になってしまった、ボクのお母さんには笑い事じゃないんだ。それで釘抜きも、いざとゆう時スグに使えるよう、仕込んであったわけ」
「……そう、だったんだ?」
「でも正直に告白するよ、彼の魔の手から、そのコを守ってやろうとしただけじゃない、ボクは緑内昴一郎を抹殺したかったんだ。それ以前から漠然とだが、機会を窺っていた」
「……だから、それは、どしてなの?」