111 ______________ ‐3rd part‐

文字数 1,156文字

「ン~……シャッターや通用口のドアが閉まっていようが、それこそバールで抉じ開ければいいんだし、だから凶器になったと考えるのが自然だよな」

「だな。実際に抉じ開けにかかるまでの間に、緑内も近寄れることになるし」

「そこまでくると、動機はもう、水埜の言ってたことが一番収まりいいように思えるよね。生活水準は否応なく底上げされているのに、所得格差の二極化がかなり深刻な状況にあるしさ。この日本でも、フツウと思われている生活をするには、結構カネがかかるからね」

「あぁ。スマホの回線を止められるわけにはいかない、好きな女をプレゼントで喜ばせたい、単なるヤク中か、多重債務者の仕業かもしれない。フツウの生活を維持するには、チョットばかりカネが足りなくなって、そのチョットが原因で全てが崩壊しちまうとなれば、はしたガネのために人だって殺すかも?」

「だな。高が万引きが、捕まるのが嫌で、追って来た店員を刺殺する御時世だもんな」

「横流しで一儲けできるとなれば、建設工事の関係者でも平社員ではスグにバレる。家業を継がそうと、親に雁字搦(がんじがら)めにされている若専務ってところじゃないか? 親の会社を潰さないためにも、口封じは必至だし」

「そうくるなら、俺はケーサツのメンツも立てて、その若専務みたいな立場の建設関係者が、緑内の顔見知りだったとつけ加えるね。口封じを先にしちまったから、建築現場への侵入は諦めざるを得ないし、代わりに緑内から金品を奪って行ったんだ」
 
「さてはおまえ、身内に官憲がいるな? なら俺も、もっとケーサツよりにだな、盗みを働こうとしていたのは、ビル建設に携わっている下請け業者、しかも工務店の二代目を首謀者とする外国人労働者を含んだグループ。緑内が巻き込まれたって言う事件は、ケチな工事現場ドロボーで、そっちは窃盗未遂に終わったんだ」

「なるほど。緑内は知った顔があったがゆえに、自分から巻き込まれて、口封じのために殺されたってか? 個人的怨恨てのも、実は反対に緑内の方が懐いてて、そのグループの不審な挙動をネタに、有利に立とうと挑発したから、逆上されたのかもしれないし」

「ん~それはあり得るなぁ。あいつ、いっつも一言多かったもんな。また悪気もなく言い退けてくれるから、周りは笑えても、言われた方は無性に腹が立つんだっ。なんか思い出してムカついてきたぞ」

「結構フザケた奴だったよな。あれで体育祭の戦力じゃなかったら、完全にウザッたるい(そら)キチとして、エト・アニュリ(無化される)だったよな」

「……おい、いい加減にしろよな」
 言いたいことを言ったあと、優秀な同級生たちのボンクラなやり取りを、今まで黙って聞いてはいたものの、とうとうガマンができなくなったっ。
 
 プレブスにだってガマンの限界がある、リフラフゆえスグにブチ超えちまう。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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