220 ____________ ‐3rd part‐
文字数 1,433文字
精神的な力みが一気にぬけたオレに、ジェレさんは表情は綻ばせつつも、摯実な口調で言う。
「勿論、グアスタや楯さんのようにはいかないでしょうが、ミラノは、自分を介助してくれる人を雇うこともできますから、大学はしっかり通ってちゃんと卒業することを、ミラノも勧めると思いますよ」
「……はい。通うだけなら、しっかり」
「ミラノは感受性が豊かすぎるみたいですからね、人懐こい人見知りとでも言うような、そんなこぐらかった性格が、むしろ愉しくて親しめる者でないと、ミラノは自分がキズつけてしまうことを怖がっているんじゃないでしょうか? それで、ミラノの方から、家族にも近づかないようにしている気がするんです」
「ん~、そうだったんですかぁ……」
驚きの連続だけれど、なんか納得。
それに、肩の荷が肩ごと下りたみたいな心晴れ。自然と首も回してしまう。
「どうしましたか?」
「いえ。でもなんか、どこまでもダメダメですよぉオレ、ミラノのペースにハマりっ放しで。内緒とか言われても、聞いておくべきことは遠慮しすぎないで聞いとかないと、いっつも、独り相撲の土俵際であたふたですもん」
「私も、似たようなものです。いきなりNYに呼ばれて、今度はまた急に東京。まぁ、日本語を学んでいた者の中で、私が一番身軽だと言うこともありました」
「いやぁ、一番信頼してるんですよミラノは」
「驚かされはしますけれど、感謝もしているんです。私も、ただミラノが上の立場にあるからと言う理由だけで、今日のようにおつき合いしているわけではないんです。何より、一緒に過ごすのはとても愉しい、ミラノの傍で働けることも」
……ホント、ジェレさんとは似たような者同士なのかも。ただジェレさんはまともなんだ、そこがオレとも、ミラノとも大きく違う。
──それからは、願ってもいないのに叶ったりで、ジェレさんが始めてくれた、ショップの新着アイテム情報と、その詳説に耳を欹 てながらウチへと返す。
そしてジェレさんを先に上げて、玄関でバッシュを脱いでいたところ、二階から、なぜかセンパイが、作業用のデスクライト二本や懐中電灯、ノートPCにミニコンポまで抱えて下りて来た。
「おぅ楯、何を勿体ぶってんだ? 高が仲間内での座興だろが、そこまでナーヴァスにテレるんじゃねぇよ」
「へ?」
「何だ、またもミラノにしてやられたわけかよ? セイレネスの最新アイテムで、プチファッションショーを観せてくれることになってるぜ。当然モデルは楯でな」
「えぇっ!」
「だから俺もほら、ミラノとトリノに言われて、音とスポットライト代わりを持って来てやったから。思う存分なりきってくれ」
「……なりきるって、そんなムリですってっ」
「そんな、気取った真似なんかできないってのなら、曲に合わせて、シャドードッチでも観せてやりゃぁいいじゃん。パワームーブ系の動きでもキメてやれば、みんなからの喝采は間違いないぜ」
「かも、しれませんけれどぉ……」
「おハルにだって、チョロい奴だと思われたままでいいのか? おまえも、誇り高き躱閃術の相承者 の一人なら、意地を見せてみろ意地を」
ミラノめぇ……さっきジェレさんのクルマのトランクから、オレに運ばせた、一番大きなショッパーズバッグ七つは、そう言うことだったのかよっ。
パーキングへ急かしたのも、そのお膳立てを、早いトコ整えたかったからだったんだな!
もう、ジェレさんまでっ。それで、今までオレに、新作情報を熱く語ってくれていたわけなのかぁ──。
「勿論、グアスタや楯さんのようにはいかないでしょうが、ミラノは、自分を介助してくれる人を雇うこともできますから、大学はしっかり通ってちゃんと卒業することを、ミラノも勧めると思いますよ」
「……はい。通うだけなら、しっかり」
「ミラノは感受性が豊かすぎるみたいですからね、人懐こい人見知りとでも言うような、そんなこぐらかった性格が、むしろ愉しくて親しめる者でないと、ミラノは自分がキズつけてしまうことを怖がっているんじゃないでしょうか? それで、ミラノの方から、家族にも近づかないようにしている気がするんです」
「ん~、そうだったんですかぁ……」
驚きの連続だけれど、なんか納得。
それに、肩の荷が肩ごと下りたみたいな心晴れ。自然と首も回してしまう。
「どうしましたか?」
「いえ。でもなんか、どこまでもダメダメですよぉオレ、ミラノのペースにハマりっ放しで。内緒とか言われても、聞いておくべきことは遠慮しすぎないで聞いとかないと、いっつも、独り相撲の土俵際であたふたですもん」
「私も、似たようなものです。いきなりNYに呼ばれて、今度はまた急に東京。まぁ、日本語を学んでいた者の中で、私が一番身軽だと言うこともありました」
「いやぁ、一番信頼してるんですよミラノは」
「驚かされはしますけれど、感謝もしているんです。私も、ただミラノが上の立場にあるからと言う理由だけで、今日のようにおつき合いしているわけではないんです。何より、一緒に過ごすのはとても愉しい、ミラノの傍で働けることも」
……ホント、ジェレさんとは似たような者同士なのかも。ただジェレさんはまともなんだ、そこがオレとも、ミラノとも大きく違う。
──それからは、願ってもいないのに叶ったりで、ジェレさんが始めてくれた、ショップの新着アイテム情報と、その詳説に耳を
そしてジェレさんを先に上げて、玄関でバッシュを脱いでいたところ、二階から、なぜかセンパイが、作業用のデスクライト二本や懐中電灯、ノートPCにミニコンポまで抱えて下りて来た。
「おぅ楯、何を勿体ぶってんだ? 高が仲間内での座興だろが、そこまでナーヴァスにテレるんじゃねぇよ」
「へ?」
「何だ、またもミラノにしてやられたわけかよ? セイレネスの最新アイテムで、プチファッションショーを観せてくれることになってるぜ。当然モデルは楯でな」
「えぇっ!」
「だから俺もほら、ミラノとトリノに言われて、音とスポットライト代わりを持って来てやったから。思う存分なりきってくれ」
「……なりきるって、そんなムリですってっ」
「そんな、気取った真似なんかできないってのなら、曲に合わせて、シャドードッチでも観せてやりゃぁいいじゃん。パワームーブ系の動きでもキメてやれば、みんなからの喝采は間違いないぜ」
「かも、しれませんけれどぉ……」
「おハルにだって、チョロい奴だと思われたままでいいのか? おまえも、誇り高き躱閃術の
ミラノめぇ……さっきジェレさんのクルマのトランクから、オレに運ばせた、一番大きなショッパーズバッグ七つは、そう言うことだったのかよっ。
パーキングへ急かしたのも、そのお膳立てを、早いトコ整えたかったからだったんだな!
もう、ジェレさんまでっ。それで、今までオレに、新作情報を熱く語ってくれていたわけなのかぁ──。