288 ___________________ ‐2nd part‐
文字数 1,344文字
だのになぜか、トリノさんまで、ミラノ越しに覗かせてまで訝り顔を向けてくるぅ──。
「有名じゃないの? 私も憶えてるわその日本映画。 ケン・タカクラの軍人役が、燻し銀のシブさとかで」
「映画なの? いやオレ映画自体、地上波放送ですらほとんど観てきてないからなぁ。オレには有名かどうかなんて、判断できないよトリノさん」
「じゃあ、一眠りしてから今日は映画館へ行こう行こう」
「それはいいけれど、だから眠っちゃダメだってミラノッ」
「チョット目を瞑ってただけじゃん。ワタシの場合、こんな時は、目を開けてると余計に疲れちゃうんだよ。飛べないけど、視覚も嗅覚も味覚もビキビキな、コウモリ人間みたいなもんなんだからぁ」
「はいはい。『キャットウーマン』が映画化されたはずだから、『バットウーマン』ってのもつくられるかもよ、そしたら二人してオーディション受けに行くしかないね。アクションシーンのスタントは、トリノさんにやってもらってさ」
「何で私まで? でも、どうせなら監督をしてみたいわ。タイトルは『ゥラァンマン』主演はシュン・ミズノ、対する敵役はミズノ・シュン。キャッチワードは≪怖がり屋のヒーローは、嵐のごとく振り下ろされる新聞紙攻撃から、逃れることができるのか!≫って、言うのはどうかしら?」
「ゥラァン? ……ミソサザイだっけ? どしてオレがそんなアンポピュラーなトリ男なの? 大体、主演二人の名前が紛らわしすぎるよ」
「ミソサザイは、『荀子』勧学篇第一の二章に出てくる蒙鳩 のことでしょ。ガンバってしっかり巣をつくるけど、つくる場所自体が悪いので、巣が落ちて卵も割れてしまう。キミを見ていて、なんだか思い出されたので」
「…………」
「ストップ~。楯の空いたスケジュールはワタシが押さえてるんだもん、そう言う話は、ワタシを通してくれなくちゃだよ」
「要するにダメってことね?」
「そうだよ、トリノは別のミソサザイ男を捜しなさいざい」
「ね、ミラノは昔から私にだけケチなの。これで仲の好い姉妹なはずがないわ」
「自分のモノはとりあえずとっといて、ワタシのモノやワタシを使って試そうとするのは、ケチよりヒドいんだよ。そんなの妹のすることじゃないもん。ワタシは絶対許さないんだよ」
「私だって許せないわ。どちらが良いのか、もらう前からわかっていて、私はいつだって選ぶヒマもなかった。そんなズルいミラノを、姉だなんて思ったことなど一度もないので」
「まあまあ。よくわからないけれど、そうして口ゲンカができる関係ってことがもう、日本では仲好し姉妹になるんだよね。お互いに嫌い合っていたら言葉一つ交わさないし、こうして階段を降りるサポートなんかも、しないのがフツウなんだから」
「それとこれとは、全然違う別のことなんだよ」
「当然ね。なら日本人は、好き嫌いで人を助けるかどうかを決めるわけ?」
「う~ん、往往にしてそうかも。ヴォランティア活動に自ら参加してるのに、仕事を選り好みして、待遇に文句をつけるアホどもがいるくらいだからね」
「そうなの? まさか、キミも本当はそのアホの一員じゃないでしょうね。ミラノのことが好きだから助けているだけとか?」
「へっ?」
それは……こうして、あらためて問われてよくよく考えてみると、実にビミョ~だよなぁ。
「有名じゃないの? 私も憶えてるわその日本映画。 ケン・タカクラの軍人役が、燻し銀のシブさとかで」
「映画なの? いやオレ映画自体、地上波放送ですらほとんど観てきてないからなぁ。オレには有名かどうかなんて、判断できないよトリノさん」
「じゃあ、一眠りしてから今日は映画館へ行こう行こう」
「それはいいけれど、だから眠っちゃダメだってミラノッ」
「チョット目を瞑ってただけじゃん。ワタシの場合、こんな時は、目を開けてると余計に疲れちゃうんだよ。飛べないけど、視覚も嗅覚も味覚もビキビキな、コウモリ人間みたいなもんなんだからぁ」
「はいはい。『キャットウーマン』が映画化されたはずだから、『バットウーマン』ってのもつくられるかもよ、そしたら二人してオーディション受けに行くしかないね。アクションシーンのスタントは、トリノさんにやってもらってさ」
「何で私まで? でも、どうせなら監督をしてみたいわ。タイトルは『ゥラァンマン』主演はシュン・ミズノ、対する敵役はミズノ・シュン。キャッチワードは≪怖がり屋のヒーローは、嵐のごとく振り下ろされる新聞紙攻撃から、逃れることができるのか!≫って、言うのはどうかしら?」
「ゥラァン? ……ミソサザイだっけ? どしてオレがそんなアンポピュラーなトリ男なの? 大体、主演二人の名前が紛らわしすぎるよ」
「ミソサザイは、『荀子』勧学篇第一の二章に出てくる
「…………」
「ストップ~。楯の空いたスケジュールはワタシが押さえてるんだもん、そう言う話は、ワタシを通してくれなくちゃだよ」
「要するにダメってことね?」
「そうだよ、トリノは別のミソサザイ男を捜しなさいざい」
「ね、ミラノは昔から私にだけケチなの。これで仲の好い姉妹なはずがないわ」
「自分のモノはとりあえずとっといて、ワタシのモノやワタシを使って試そうとするのは、ケチよりヒドいんだよ。そんなの妹のすることじゃないもん。ワタシは絶対許さないんだよ」
「私だって許せないわ。どちらが良いのか、もらう前からわかっていて、私はいつだって選ぶヒマもなかった。そんなズルいミラノを、姉だなんて思ったことなど一度もないので」
「まあまあ。よくわからないけれど、そうして口ゲンカができる関係ってことがもう、日本では仲好し姉妹になるんだよね。お互いに嫌い合っていたら言葉一つ交わさないし、こうして階段を降りるサポートなんかも、しないのがフツウなんだから」
「それとこれとは、全然違う別のことなんだよ」
「当然ね。なら日本人は、好き嫌いで人を助けるかどうかを決めるわけ?」
「う~ん、往往にしてそうかも。ヴォランティア活動に自ら参加してるのに、仕事を選り好みして、待遇に文句をつけるアホどもがいるくらいだからね」
「そうなの? まさか、キミも本当はそのアホの一員じゃないでしょうね。ミラノのことが好きだから助けているだけとか?」
「へっ?」
それは……こうして、あらためて問われてよくよく考えてみると、実にビミョ~だよなぁ。