190 ____________________ ‐3rd part‐

文字数 1,418文字

「……ん。なんか、とんでもない奴らだってことだけは、はっきりわかったよ。だからミラノさんも、あまり話したくないんだね?」

「そうだよ。だから、まだ勝てないのに、犯人に近づくようなことをしちゃダメダメ。余計なことを言って、誰かを犯人に近づけるようなことも、しちゃダメダメなんだよ」

「うん。それは凄くよく理解できたよ。だからミラノさんも、わかっていても慎重にね。オレには通話じゃなく、メッセージやメールでだってかまわないんだし」

「ウンウン。でも文章じゃ、水埜楯を世界の終わりから救い出せそうになかったのたの。それにピンチは、まだまだ続いてるんだよ」

「へっ?」

 ピンときた草豪へまた目をやると、体までこっちを向けて明王立ち、いや仁王立ちしていやがったっ。
 今にも何か文句をつけに、こっちへ引き返して来そう。

「ヤバいよミラノさん。オレも、そこまで気づかってもらえて感激だけれど、できたら最後まで完全に救いきってくれない?」

「あれあれ~、今呼ばれちゃったんだよ。トリノの分までニッコリしに行かなくっちゃ。ならならトレーニング代わりに、ここまで走って逃げて来る来るぅ。今日も一緒にお昼ゴハンを食べよう食べよう」

「へっ。ぅうん、じゃぁとにかく逃げるね、またあとで──」

 もう草豪へは目も向けずに逸散ダッシュ。

 このまま、汐留までざっと四キロ足らずのランニングだっ──。

 ▼

 第二通用門を無事駆けぬけてペースダウン。
 
……後ろに草豪の追逐(ついちく)がないことも確認したあとは、暫し呼吸を整えながら、脱いだライダースをデイパックに突っ込んで、いつものピッチへと上げて行く。
 貶されようが、寝巻きのジャージを着替えずに出たのは大正解だ。

 安堵とともに意識へ再浮上してくるのは、やはり事件のこと……。

 しかし、これではっきりした。
 緑内も、根上も、勝庫織莉奈には殺されてない。
 そして根上は、勝庫織莉奈を拷問なんかしちゃいないんだ。
 
 世の中の認識は間違っているし、ケーサツも真犯人がしたであろう小細工に、すっかり欺かれてしまっている。
 その上、勝庫織莉奈は、演歌の呪いで老人たちが事故死するという因果律を、ちゃんと探り当てたに違いないってこと。

 おそらく緑内も、何も知らずに、自らその因果律ってヤツに、偶偶首を突っ込んじまったせいで殺された……。

 呪いの因果律、でもそれは人間。
 

の方か、それとも

か? いや、二人で一組の形態を成している殺し屋か、殺人鬼なのかも?

 

が殺して、

がそのバックアップをする。
 その際、邪魔が入れば

も迷わず殺しをする。全ては

のために。

 そもそも僊婆の事故死、建設現場前のY字路に纏わる呪いについても、そいつらが引き起こしていたんじゃないか?

 緑内と根上たちは、きっと

の邪魔になるようなことをして殺されたんだ。
 

が殺人を犯すところを目撃したとか、その後始末の最中だった

に出交したとかして。

 けれど、緑内も根上たちも、殺害される現場まで自らの意思と足で赴いているし、各各の着衣にも、肉弾戦を繰り広げたような、激しい乱れや汚れはないときている。
 それに、根上たちが殺害された当日、近くで老人の被害者は出ていない……。

 あぁそうか! その

は、二人一組で殺人を続けているんだとしても、常にべったり一緒のバカップルではないってことか?

 

は、

のことを、人殺しができるほど好きだけれど、

は、

を、そこまでは思っていないような……。
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登場人物紹介

登場人物につきましてはイントロ的に一覧で掲載しておりますぅ


当作は主人公:楯の一人称書きをしておりますので、本編内で紹介されるプロフィール情報のムラは、楯との関係性によるところが大きくなりまっす


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