第383話 メルシーおばさんのいとし藤(前編)

文字数 1,698文字

桜のシリーズでは、「桜巡り」というタイトルをつけました。藤の花でも、「藤巡り」というタイトルを付けようと思ったのですが、それでは、余りに工夫が足りないと考えなおし、有名な「藤娘」と「いとし藤」の話を付け加えてみます。

今回の内容は「つくば市の藤巡り」ですが、タイトルは、「藤巡りで」はなく、「いとし藤(前編)」にしました。

「いとし藤」に、興味の無い方は、以下は読み飛ばして、写真3にお進みください。

いとし藤

1790年に、山東京伝作さん(作家、浮世絵師名は北尾政演)は、「小紋雅話(こもんがわ)」という小紋の図案集を出版します。これは、3冊目の小紋集でした。

京伝さんは、「小紋雅話」の序に、「犬の足跡を梅の花に見立てて、絵画か文字か分からないものを数十個作り、小紋雅話と名づけた」と書いています。

この話を聞いて、メルシーおばさんは、すっかり、嬉しくなりました。だって、犬が足跡を付ければ、アートができるなんて、メルシーおばさんは思ってもみませんでしたから。犬の足跡アートならば、メルシーおばさんも参加できますからね。

写真1は、1895年再版の「小紋雅話」から取った小紋「雪の足」です。犬の足跡、人間の足跡、下駄の跡が見えます。「地白に白あがりに染めてよし(白地に色付きでも、色付きの地に、白で染めてもよい)」というコメントがついています。

写真2は、小紋「いとし藤」です。コメントは、「慶子案」です。慶子は1753年に「京鹿子 娘道成寺」を初演した初代中村富十郎さんの俳名です。京伝作さんは慶子さんの浴衣から「いとし藤」の図案を借用したので、「慶子案」と書きました。「いとし藤」は、京伝さんのオリジナルではありませんが、「小紋雅話」が最古の記録なので、「いとし藤」は、山東京伝さんの作品と言われます。

写真2を見て、「いとし藤」の名前の意味が判りましたか。

「い」が「とう」(十)あり、そこに「し」が加わっています。だから「いとし藤」になります。「愛し」の音韻も踏んでいます。

アンディ・ウォーホルさんが、1962年に、アメリカ・ポップアートを代表する「キャンベルスープの缶」を発表したとき、スープ缶を芸術のテーマに選ぶとはけしからんとが批判されました。

「小紋雅話」は、犬の足跡をアートにしています。東伝さんは、ウォーホルさんの先駆者です。「小紋雅話」には、ミニマル・アート、反復手法、コンセプチュアル・アートの要素も見えます。「小紋雅話」の小紋は、手ぬぐい、和服などのデザインに現在でも使われています。京伝さんは、江戸時代のスーパー・クリエイターした。



写真1 小紋「雪の足(小紋雅話)」
『古代模様:小紋雅話』,矢野喜一郎,明29.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/854376 (参照 2023-04-26)


写真2 小紋「いとし藤(小紋雅話)」
『古代模様:小紋雅話』,矢野喜一郎,明29.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/854376 (参照 2023-04-26)


写真3 天久保公園に着いたメルシーおばさん。つくば市内で2番目に長い23mの藤棚があります。


写真4 天久保公園の藤棚の前のメルシーおばさん。


写真5 天久保公園の藤棚の前で休んでいるメルシーおばさん。


写真6 松代公園の大藤棚(50m)です。市内1番の大きさです。


写真7 松代公園の小藤棚です。


写真8 上宿児童公園の藤棚です。


写真9 二宮四丁目地区住宅の藤です。藤は、カーポートのパーゴラに付いています。


写真10 科学万博記念公園の藤棚です。ちょっと変わった縦型です。


写真11 つくば市内で、最小の公園である東新井緑地に着いたメルシーおばさん。


写真12 築山に登ったメルシーおばさん。後ろに藤が見えます。この公園には、築山しかありません。(東新井緑地)


写真13 リラックスしてご機嫌になったメルシーおばさん。(東新井緑地)


写真14 藤棚の前のメルシーおばさん。この公園の藤が市内で一番手入れがしっかりしていました。(東新井緑地)
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