第451話 ようこそ、メルシー博物館の特別展「ジャー・ハット族の彫刻」へ

文字数 1,674文字

「第416話 メルシーおばさんの茅の輪くぐり」では、夏越の祓(はらい)では、茅(ち)の輪の代りに、「形代(かたしろ)」、「人形(ひとがた)」、「人形代(ひとかたしろ)」などと呼ばれる紙か藁の人形に穢れや災いを移し、川や海に流したり、お焚きあげをすることもあると紹介しました。

マレー半島には、オラン・アスリ (Orang Asli) と呼ばれる13の先住少数民族がいます。このうち、マー・メリ(Mah Meri)族とジャー・ハット(Jah Hut)族は、彫刻をつくります。 昔は、マー・メリ族の人が病気のときに、夢に精霊が現れて、こういう像を作りなさいと指示しました。病人は、お祈りをしながら木を切り、一日で像を彫ります。精霊の力によって病気を治してもらった人は、精霊の存在を強く信じたそうです。これは、彫刻に悪い病気の魂が乗り移って、身代わりになってくれたためで、彫刻は、「形代(かたしろ)」や「人形(ひとがた)」と同じ働きをしていました。

1950年代にジャー・ハット族がノミ、ナイフ、ハンマー、ドリルなどの道具の使い方をイギリス人に教わってから、彫刻は、沢山つくられるようになりました。つまり、1950年代から、彫刻は、精霊のお告げによってひとつずつ作られたユニークなものではなく、量産品になりました。

さて、メルシーおばさんの「茅の輪くぐり」の日記をみて、パパは、メルシー家のロフトに、ジャー・ハット族の彫刻があったことを思い出して、取り出してきました。

こうして、メルシーおばさんは、ジャー・ハット族の彫刻に会うことになりました。

「第439話 メルシーおばさん、筑波北部公園に行く」では、土浦駅前にあるゲゲゲの鬼太郎の像を紹介しています。

「水木しげるの妖怪探検」によると、ゲゲゲの鬼太郎の作者の水木しげるさんは、オラン・アスリーの彫刻のファンで、マレーシアにいったときに、マー・メリ村で、30体ほどの精霊像を購入し、さらにジャー・ハット村でも彫刻を購入しています。

国立民族学博物館は、2020年10月1日から2020年12月15日に、特別展「先住民の宝」を開催しました。ここで展示されたオラン・アスリーの彫刻は、「水木しげるの妖怪探検」に登場する彫刻とほぼ同じ、つまり量産品だったようです。

これから、メルシー博物館は、ジャー・ハット族の彫刻の特別展を行いますが、メルシー家のジャー・ハット族の彫刻も量産品で、悪い病気の魂が乗り移っていることはありませんので、読者の皆さんも安心して、写真を見ることができます。


写真1 メルシー博物館の特別展「先住民オラン・アスリーの宝 ジャー・ハット族の彫刻」へようこそ。


写真2 館長のメルシーです。これから、ジャー・ハット族の4体の彫刻をご案内します。


写真3 最初に小さい2体を紹介します。ロフトから運搬中にラベルを紛失して、タイトルは不明です。2体は、阿形像と吽(うん)形像になっています。「阿」は口を開き、「吽」は口を閉じて発する声のことす。


写真4 1体目は、阿形像の牙の長い精霊さんです。


写真5 サイドから見ると、怖くはありません。


写真6 並んで立つと、精霊さんは、メルシーおばさんより少し背が低いです。


写真7 2体目は、吽形像です。三猿の言わざるに似ています。三猿は古代エジプトやアンコール・ワットにも見られるので、ジャー・ハット族も知っていた可能性があります。


写真8 次に、縫いぐるみのお父さんと一緒に、大きい2体を紹介します。タイトルは、怠惰の精霊(Sprit of idleness)です。


写真9 前足(手)と口が一緒になっています。前足を調べているメルシーおばさん。


写真10 彫刻と並んでいるメルシーおばさん。


写真11 今度は2体一緒に紹介します。右の像には、前足(手)が見えません。


写真12 左の像に比べると右の像の方が怒っているように見えます。


写真13 どちらも動く気配はありませんので、危険はありません。


写真14 それでは、彫刻の間を通り抜けて、お父さんの方に進んで、本日は閉館とします。
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