第８４話　メルシーおばさんの病気とエリザベス・カラー

メルシーおばさんは、散歩したり、ボートに乗ったり、登山したり、タフな小犬だと思われるかもしれません。でも、一度、大病になって、手術をしたことがあります。
あれは、2019年の1月だから、8歳の時のことです。

メルシーおばさんは、朝、ドッグフードが美味しく食べられなくなりました。ママは、心配して、メルシーおばさんの好物の鶏肉のささみを下さったんですが、それも喉を通りませんでした。
ママは、この頃、まだ、働いていたので、昼間は、メルシーおばさんは一人（一頭）で、お留守番をしていました。ちょっと、お熱があったみたいでした。
夕方、ママがお家に帰って、今度は、ドッグフードはパスして、ささみをお皿に盛ってくださいました。でも、気分が悪くて、やっぱり、喉を通りませんでした。

メルシーおばさんが、丸一日何も食べられなかったので、ママは、心配して、翌朝、近くの動物病院に連れて行って下さいました。
この時は、お食事をとっていなかったので、メルシーおばさんは、吠える気力がなく、ただおとなしく、血液検査やX線撮影などの検査を受けました。
獣医の先生は、「X線写真を見ると、子宮のところに黒い影があります。子宮蓄膿症の可能性があります」とおっしゃいました。それから、獣医の先生は、ママに「手術をしても助からない可能性もありますが、手術をしますか」と聞かれました。
メルシーおばさんは、お話はよくわからなかったけれど、獣医の先生が、写真で、さかんに、お腹の下の方を指して説明していたので、お腹の下の方が具合が悪いんだなと思いました。それから、ママがとっても悲しそうなお顔をしたので、きっと、メルシーおばさんの病気は、重症なんだろうということがわかりました。
ママは、泣き出しそうな顔をして、「もちろん、手術をお願いします」とご返事しました。

その日に、手術のために入院しました。病院では食事をとれる状態ではなかったので、大きな針で、体に、栄養を送り込んでもらいました。点滴というのだそうです。
翌日、メルシーおばさんは、とっても眠くなり、そのあとは何も覚えていません。何でも、麻酔という眠くなるけれど痛くないお薬を使ったそうです。後で、お話を聞くと、大手術だったそうです。
翌々日に目が覚めるとママがお迎えに来ていました。お腹の下の方が、引っ張られるような感じで、変でした。ママは、メルシーおばさんが、また、元気になった様子をみて、よほど、うれしかったのか、涙を流していました。


写真は、お家に帰った時のものです。メルシーおばさんは、首の周りに、メガホンの形をしたプラスチックをつけています。手術を受けたのは首の周りではなく、お腹の下の方です。このメガホンみたいな形のプラスチックは、エリザベス・カラーっていうそうです。
16世紀イギリスのエリザベス朝時代に貴族の衣服のカラー（ひだえり）に似ているので、この名前がついたようです。

メルシーおばさんは、手術をしたお腹の下の辺りが気になります。ちょっと、むずむずします。こうなると、放っておくと、犬は、手術した傷口をなめてしまって、傷口が治らなくなります。エリザベス・カラーは、犬が、傷口をなめないようにする工夫です。

傷口は、ちょっとでもなめると、また、悪くなりますから、手術した傷口が完全に固まるまでは、ずっと、エリザベス・カラーをつけたままで、生活します。お食事するときも、寝るときも、エリザベス・カラーをつけたままです。

昔は、ひだえりが流行したようで、エリザベス1世女王様も、ドン・キホーテをかいたセルバンテスおじさんも、不思議の国のアリスの白うさぎさんも、ひだえりをつけた絵が残っています。不思議の国のアリスには、パピー（子犬）も登場しますが、ひだえりはつけていません。エリザベス・カラーをつけたメルシーおばさんは、誰に似ていますか？パピーが、ひだえりをつけていれば、メルシーおばさんに一番似ているのはパピーだとは思いますが。

この時は、何しろ、長いことお風呂に入れなかったので、写真のメルシーおばさんは、毛皮の白色がくすんでいます。それから3日ほど、お食事できなかったので、最近のメルシーおばさんにくらべると、少し、スリムになっています。

なお、若いときに、不妊手術をしておくと、子宮蓄膿症になりにくいという話もあります。メルシーおばさんは命が助かりましたが、年をとってからの手術は命が助からないこともあるそうです。心配なら、若いうちに獣医の先生に相談すると良いようです。


写真１　ハウスの中でもエリザベス・カラーをつけたままのメルシーおばさん。


写真２　エリザベス・カラーをつけたまま、お座布団でお休みしているメルシーおばさん。