第46話 ピアノの椅子は天国です

文字数 1,449文字

ママは退職してから、毎日、夕方にピアノを弾いています。メルシーおばさんはママが大好きです。

メルシーおばさんは、ママにお願いして、ママがピアノを弾いている間、ピアノの椅子にのって、ピアノを聴かせてもらっています。ピアノの椅子の高さは、メルシーおばさんの体の長さくらいあるので、ジャンプしても乗ることはできません。それに、椅子は小さいので、ジャップして飛び乗って、滑って墜落して、怪我をするかもしれません。ですので、メルシーおばさんは、ピアノの椅子に乗りたいときは、二本足で立って、前足をピアノの椅子にかけて、「椅子に乗りたいの」って、お顔をします。そうすると、ママが椅子の上に引き上げて下さいます。

ママは時々、メルシーおばさんにも、ピアノを、弾かせて下さいます。とはいっても、メルシーおばさんにできるのは、墜落しないように、ママに体を支えて頂いて、ピアノの上を歩くだけです。歩いて、鍵盤を押すと、順番に音がします。ピアノを弾かせて頂いたので、メルシーおばさんは、ママが何故、触っても少しも気持ちのよくない白い板の上で指を動かしているのかがわかりました。ピアノって、触っても、指はちっとも、気持ちよくないけれど、鍵盤を押すと出てくる音が、気持ちがいいんですね。

昔、パブロフっていう名前の悪いおじさんが、犬に、ベルを鳴らしたら、餌を与える実験を繰り返して、挙句の果てに、ベルを鳴らすだけで、犬が唾を飲み込むようになった。これは、大発見だって、発表したらしいです。それって、端から、犬には音楽的なセンスがないって、決めつけていて、とんでもないおじさんだと思います。犬は餌がなくても、素敵な音は大好きです。品のないベルの音を、繰り返し聞かされるなんて、考えただけでもぞっとします。メルシーおばさんは、ピアノの音が大好きです。ママと一緒に、ピアノの椅子に乗っていると、人間みたいにピアノが弾けたら気持ちがいいだろうなって思います。チワワの体のサイズからすれば、頑張ってっも弾けるようになるのは、サイズの小さいおもちゃのピアノだけです。

夕ごはんのあと、パパがお散歩に連れて行って下さいます。ママは、散歩をしてから、食事をするよりも、食事をしてから、お散歩をする方が、ダイエットにいいんだろうというお考えのようです。散歩の時間が後になると、より涼しい時間に、お散歩できるんですが、それでも、夏の夕方のお散歩はメルシーおばさんには暑すぎます。犬は体では汗をかけないので、代わりに口から、熱を逃がします。ですので、暑くなると、口はひらきっぱなし、舌は大きく伸びっぱなしになってしまいます。この間、お散歩から帰ってきたら、ちょうど、ママがピアノを弾いていました。メルシーおばさんは、いつものように、ピアノの椅子に乗せて頂きました。そのときに、ママが素晴らしいことを思いついたんです。「メルちゃんは暑くて苦しそうだな。そうか、扇風機をあててあげればいいんだって」ね。これは、もう最高です。ピアノの椅子は、音楽が聴けるだけでなく、扇風機で体を冷やすことができなんて、これはもう天国です。


写真1 これは冬の写真です。お部屋を暖めて、ピアノをきいて、リラックスしています。


写真2 ピアノの椅子に一人でお座りしている写真です。四角い椅子なので、犬には座り心地がよいです。


写真3 ママの背中で扇風機にあたっているメルシーおばさん。


写真4 ピアノを弾く準備をしているメルシーおばさん。


写真5 子犬のワルツを弾いているメルシーおばさん。




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