第261話 メルシーおばさんと百日紅の花

文字数 1,949文字

百日紅(さるすべり)という木を知っていますか?百日紅(ひゃくにちこう)と書いて、さるすべりと読みます。百日紅という漢字は、紅色の花が百日も咲き続けるという意味です。
一方のさるすべりは、幹の表面がつるつるしていて、猿も木から落ちるという意味です。
この2つが組み合わさって、百日紅と書いて、さるすべりと読むようになりました。

百日紅は開花の期間が長いので、公園によく植えられています。百日紅の花は綺麗ですが、猿でも、木にはすべって登れないので、ましてや犬が木に登ることは困難です。

最近では、インスタグラムで、ずいぶん変わった写真を見つけることができますが、百日紅の木に登って、喜んでいる犬の写真は、ちょっと想像しにくいです。ということは、百日紅の花と一緒に写っている犬の写真もあまりなさそうです。

桃の節句には、メルシーおばさんは、花屋さんで買ってきた桃の花と一緒に写真を撮りました。

同じように、花屋さんから買ってきた百日紅の花と一緒に写真をとっている犬もいるかもしれません。

百日紅の花は、木に咲いている時には、百日も咲き続ける大変花もちの良い花です。ところが、一度、枝を切って切り花にすると、百日紅の花は長持ちしなくなります。
このため、花屋さんでは、百日紅の花は扱いません。

そうすると、百日紅の切り花と一緒に写っている犬の写真もあまりなさそうです。

と、こんな風に、メルシーおばさんはパパと百日紅の花の話をしていたのですが、そのうちに、パパが、「写真を撮るから、メルちゃん、百日紅の木に登ってくれない」を言い出しそうで、不安になってきました。メルシーおばさんは、高いところが苦手ですからね。

メルシーおばさんの日記を読んで、そうだ、うちの犬を百日紅の木に登らせて、写真をとってインスタグラムに投稿しようなんて、考えないでくださいね。

さて、百日紅の木は、お散歩コースで通過する児童公園にもあります。お散歩コースの目的地は、梅の木のある大きな公園なので、いつもは、児童公園は前を通りすぎますが、よく見たら百日紅の木が2本ありました。そのうちの1本の木が変わっていて、地上から20cmの高さに百日紅の花が2つだけ咲いていました。

そうです。頭の回転の速い読者の皆さんはもうお気づきと思いますが、「地上から20cmの高さの百日紅の花」の前で、犬が写真を撮れば、木に登らなくても、奇跡の「百日紅の花と一緒に写っている犬の写真」が出来上がります。

ところが、パパの頭の回転はいまいちです。メルシーおばさんが、一緒に撮ったことのない花があったので、パパは、とりあえず、地上20cmの百日紅の花の前で、シャッターを押しました。家に帰って見ると、写真は、ピンボケだらけで、メルシーおはさんにピントが合っている写真は1枚だけでした。その写真の端に、ピンク色の花がボケて写っていました。百日紅の花です。この失敗写真を眺めながら、先ほどのように、パパは、メルシーおばさんと百日紅の話をしていて、実は、奇跡の写真が撮れるチャンスをものにしていないことに気が付いたのです。

百日紅の花は、100日咲きます。すぐに枯れることはなさそうです。

というわけで、あまり暑くなく、メルシーおばさんの舌出しにならない次の日の夕方のお散歩がてらに、児童公園によってみました。しかし、地上20cmの百日紅の花はなくなっていました。パパは、昼間に自動車で、児童公園の前を通り過ぎた時に、草刈り機の音がしていたことを思い出しました。よく見ると、児童公園の芝生広場は綺麗に雑草が刈られていました。どうやら、草刈りをした人が、地上20cmの百日紅の花も雑草だと判断して刈り取ったようです。

こうして、百日紅の花と一緒に写っているメルシーおばさんの写真は、幻の写真になってしまいました。

パパが、がっかりしているようなので、百日紅と同じピンク色のペチュニアの花が咲いている洞峰公園に写真を撮りに行きました。あ、ペチュニアの話は、次回にしますね。

洞峰公園には、何と、地上20cmの百日紅の花がありました。

こうして、百日紅の花と一緒に写っているメルシーおばさんの写真が撮れました。

奇跡の写真の出来栄えは?とお聞きになりましたか。それは写真を見てくださいね。



写真1 児童公園の百日紅の木です。左奥の百日紅は、公園の隣の個人宅に植えられています。


写真2 地上から20cmの高さの百日紅の花とメルシーおばさんの失敗写真です。百日紅の花はボケています。メルシーおばさんと百日紅の花は離れすぎていて、パパは正方形にトリミング(切り出し)できませんでした。


写真3 洞峰公園で撮影した百日紅の花と一緒に写っているメルシーおばさんです。百日紅のつるつるの幹が見えないので、今一つ迫力に欠けます。
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