走行音

文字数 763文字

 中学の頃に住んでいた家は、決して線路に近くはなかったけれど、夜になるとよく列車の走行音が聞こえてきた。
 ある川の鉄橋があり、特にそこを貨物列車が渡る時にね。

「あれはEF65けん引かなあ」

 などと想像しながら耳を傾ける。
 もちろんロングレールじゃないから、レールの継ぎ目が山ほど連続している。
 ガーダー上を、まずダダダと機関車が渡ってゆく。
 続く貨車はほとんどが2軸車だから、その後はタンタン、タンタン、タンタン…とね。
 ときどきボギー貨車が混じって、タタン、タタンと音が変化する。
 ただこれもタンク車とコンテナ車とでは音が異なり、私の家でそこまで区別できたとは思わないが、締結装置の関係でコキには浮いた部品が多く、カチャカチャ音が混じるが、タキにはそんなことはない。
 そしてラストが車掌車。
 ヨ8000が登場したかどうかの頃だが、2軸車だから、タンタン・・・コココという具合に編成が終わるのです。
(コココは、レールに反響する音)

 車掌車として、例外的にワムフが連結されていたこともあるかもしれないが、あまり見た記憶はない。
 もちろん3軸のトキ900など見たこともないが、一度だけワサ1を目撃したことがある。
(ワム80000の車体を延長して、3軸化した車。走行音はきっとタタタ…)

 それはそうと今はロングレールの時代で、しかも貨車はコキばかりだから、列車の見かけだけでなく、走行音まで変わってしまった。
 レールの継ぎ目がないんだもん。
 だから私は、大阪緩行線に乗って神戸から元町へ向けて走るのが好きだ。
 神戸駅を出て、上り列車はすぐに右カーブをするが、これがゆったりと直線へとつながる。
 直線部分はもちろんロングレールだが、このカーブあたりは今でも継ぎ目が多い。
 ここだけでは、現在でもカタンカタンと昭和風な走行音が響くわけ。
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