貫通ドア
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スハフ42でもオハフ61でもいいけれど、車体の一端に車掌室がある。
ではその反対の端はというと、トイレがある。トイレの隣がデッキで、車体はここで終わるわけ。
ここに、現在の車両と大きく違うところがあって…。
連結面には貫通路とホロがある。
それはいいけれど旧型客車の場合、車掌室側の連結面にはちゃんと貫通ドアがあるが、トイレ側の貫通路には、ドアなんぞなかった。
貫通路にドアなし。
それが当たり前だったわけ。
スハ43やオハ61のような中間車の場合には、それでもまあいい。
(例えばモハ80系の中間車も貫通ドアを持たない)
だがスハフやオハフは、列車の最後尾に連結されることになる。
しかもその時に、何も車掌室側が後ろを向くとは限らない。というか、反対を向いてしまうことも多かった。
そうやって当時の列車が、スハフのトイレ側を後ろに向け、つまりおケツに貫通ドアのないまま本線をぶっ飛ばすというのも、別に珍しくはなかったわけ。
冬の北陸線でそこに立ち、遠ざかる景色を眺めたことがある。若かったせいか、あまり寒かった記憶はない。
さすが本線ということか、ゆったりとカーブする鈍い銀色レールが、ザラザラしたあられのような雪にうずまって伸びている。
列車が加速すると、ある速度に達したところでその雪あられたちが一斉に流れ始め、ザァーッと音を立てる…。
また逆に、スハフやオハフがそういう向きでロコの次位になる場合も、これまたおいしい。
ヒョイと首を伸ばすだけで、ロコと客車の連結器が組み合わさってガコガコ言っているのを眺めたり、何よりもロコのお顔とお見合いができる(おケツかもしれないが)。
それにしても、そういうむき出しの高速走行が、昔は全く問題視されなかったのだね。