ひびき

文字数 654文字


 東海道線で151系の「こだま」が好評だったころ、その増発的な感じで157系の「ひびき」が運転されたことは私も知っていた。
 それだけで特に何も感じてはいなかったが、それがあなた、

「『ひびき』ってなんだろ?」

 と急に思い始めたわけですな。
 列車名って、旧国名、鳥の名や山、川の名前だったりするよね。
 だけど「ひびき」なんて鳥も旧国名も聞いたことがない。
 ならどこかに「ひびき川」とか「ひびき山」とかが存在するんだろうか?
 それも聞いたことがないよね。

 いやいや、もしかしたら当時の国鉄内部では、こんな会話が交わされたのかもしれない。

「今度走り始める列車は、『こだま』を補完する姉妹的な列車なのだから、やはり何かしら『こだま』にちなんだ列車名にしたいものだ」

「ちなむって?」

「そもそも『こだま』って、なぜ『こだま』って名付けたんだろうな?」

「そりゃあ列車の速さを強調するため、音速のイメージを持ってきたんじゃないですか?」

「音? そうか音か。じゃあ今度の新列車も音のイメージで行くぞ。何か音に関する単語はないか?」

「音ですかあ? そうですねえ…

うるさい
やかましい
けたたましい
高い
低い
耳をつんざく

 といろいろありますが、どれにしましょ?」

「なんかもっと格好いい単語はないのか? 『やかまし』号とか『けたたまし』号じゃ、どうしようもないぞ」

「そうですねえ。じゃあきれいなところで『ひびき』なんかどうです?」

「『ひびき』? 『響き』かあ。なかなかかっこいいぞ。これに決めた」
 
 なんて会話があったかどうかは知りません。
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