文字数 599文字


 突然、古い古い歌謡曲の話題で恐縮だが、私が生まれるよりもずっと昔にヒットした歌で、田舎から東京へ家出してきた若い娘に対して、

「今ならまだ最終列車に間に合うから、家出なんかやめて、今すぐ両親のもとへ帰りなさい」

 と、さとす内容のものがある。(※)
 これについて不思議に思えたのが、

「東京から田舎へ戻ることと最終列車とが、なぜ結びつくのか?」

 ということ。
 帰るだけなら、別に最終列車でなくても構わない。
 それどころか、例えば私が東京から神戸へ帰るとしても、東京発の最終列車にはきっと乗車しないだろう。
 むしろ早朝の列車をつかまえると思う。
 東京発の最終列車なんて、きっと静岡あたりが終着駅でしょ?
 ところが、ある雑誌を読んで気が付いたのですな。
 その名を421レと言います。
 関東の方はご存知かもしれませんが国鉄時代、22時39分に上野を出発し、東北線、福島から奥羽線、秋田を通って青森終着がほぼ24時間後という長距離普通列車。
 それでこの列車、上野から見た場合には『東北線へ入る最終列車』だったのだそうで、家出娘が東北地方から来たのだとすれば、

「とりあえず421レに乗せておけば、家へ帰らせることができる」

 という判断が働いたのだろう。
 歌詞になるほどだから、昭和30年代にはそれなりに有名な列車だったのかもしれない。

(※)
「若いお巡りさん」(1956)
歌唱:曽根史朗
作詞:井田誠一
作曲:利根一郎

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