プラバン

文字数 885文字

 小学生時代のある日、プラモデルメーカーのタミヤから、ものすごいものが発売された。
 プラバンである。
 プラスティック製の工作材料。言ってみれば、長方形に切ったプラスティックのシートのようなもの。

 でもこれがなぜすごいのかというと、それまでは鉄道模型で車両工作をすると言えば、材料はほぼシンチュウ板かボール紙に限られていた。
 すでにNゲージは存在し、だんだんと普及し始めていたけれど、発売されている車両の種類はまだ少なかった。
 だから鉄道模型雑誌に『Nゲージ車両製作記事』が掲載されるのだけど、上記の通り材料がね。

 例えばある記事は、すでに発売されていたワキやトキをぶった切って、縮めてワムやトラを作るという触れ込み。
 まずワキだったら、はじめに糸ノコで車体を3分割する。
 その結果得られるのは、

部分A:車体前部(長さは全長の4分の1)
部分B:車体中部(長さは全長の2分の1)
部分C:車体後部(長さは全長の4分の1)

 となりますな。
 まずAとCをくっつければ、屋根が丸いところが変ではあるけれど、ワム80000モドキのできあがり。
 足回りは、某イギリスメーカーから2軸貨車足回りのセットが発売されていた(たぶん今でもある)。

 Bの処遇はというと、車体にするには妻板が足りないわけですな。
 だけど当時、まだプラバンは発売されていなかった。
 だから作者は涙ぐましい努力をする。
 それが何かというと、外国製プラモデルを購入し、HOゲージサイズの家や建物のキットなのだけれど、その中でできるだけ平らそうな板状の部分を材料に使って妻板を製作するわけ。
 輸入キットは当時、数千円したと思うけれど、2軸貨車数量を作るために、それがオシャカになる。ああ…

 そういう時代であってみれば、プラバンの出現がどれだけ大きな意味を持っていたか、ご想像いただけると思う。
 なお、最初に発売されたプラバンはまだサイズが小さく、HOゲージの電車を作るだけの材料は取れなかったが、後に今と同じ大きさになって使い勝手が増した。
(小さいサイズのプラバンでも、屋根を木の板にする工夫をすればHOも可能だったけど)
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