パワーパック

文字数 912文字

 今から考えれば恐ろしいことだけれど、私が子供だった当時の鉄道模型パワーパックには、サーキットブレーカーが装備されていなかった。
 じゃあどうやってショートを検知するのかというと、車両が脱線してショートが起きると、盤面にある電球が暗くなる(正常時は明るく点灯している)。
 そこで私は電流を止めて、復旧作業に取り掛かるわけ。
 私が持っていた線路だけかもしれないが、当時は脱線なんて当たり前で、エンドレスを機嫌よく何周も走ってくれるなんてのは、まず望めなかった。
 だから、最近売られているレールの性能の良さにびっくりしたりする。
 パワーパックにブレーカーが装備され始めたのは、私が中学だった頃のことで、リセットボタンというものを初めて目にして、
「あれ? このボタンは何だろう?」
 と思ったりした。

 現在のパワーパックの構造は知らないけれど、当時のパワーパックを分解すると、速度を調整するダイヤルは、レオスタットという部品に直接つながっていた。
 といってもただの可変抵抗器なのだけれど、材質が変わっていて、レオスタットは本体が陶器で作られていた。
 その陶器に電線を巻き付け、これを金属接点がこする形。
 あるとき、この陶器部品が壊れてしまった。
 取り付けネジがいつの間にかゆるんで、ガタガタし始めたトランスがぶつかったら、陶器だから割れてしまったわけ。
「困った。パワーパックが使用不能だ」
 ところが天の配剤だかどうだか、私は電気店で50オームのボリュームを発見してしまった。
 ボリュームって、テレビやラジオに使用するあの部品で、さっそく購入。
 家で恐る恐る取り付けてみると、ちゃんと動くじゃないですか。
 私のパワーパックは復旧したわけ。PFがちゃんと走る。
 だが調子が良かったのは1回目の脱線事故をやらかすまでのこと。
 それ以後は速度調節がおかしくなり、ボリュームを分解してみたら案の定、抵抗体に焦げ目が発生していた。
 ショートにより過電流が流れた結果ということ。ボリュームは一発でおしゃかになった。
 つまり鉄道模型のレオスタットがわざわざ陶器で作ってあったのは、多少の過電流が流れても燃えてしまわないための配慮だったのかもしれない。
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