ゴミ箱

文字数 1,042文字


 国鉄の列車で最初にゴミ箱を車内に設置したのは0系新幹線からだと思っていたが、確かめようがない。
 もしかしたら151系はすでに備えていたのかも、と調べてみたが、形式図には見当たらない。
 つまり、151系にはゴミ箱はなかったようだ。
 きちんと調べきったわけではないけれど、ゴミ箱を最初に装備した在来線車両は、どうやらキハ80系だったかもしれない。

 ところで、キハ82やキハ80の排気管が車体のどこにあるのかは、私は子供の頃から知っている。
 HOゲージの模型を持っていたので。
 といっても昨今のNゲージのように、

「短編成ながら特急のフル編成を走らせていた」

 のではもちろんなく、

キハ82 + キハ80 + キハ80

 という尻切れトンボ。
 子供のサイフには、後尾のキハ82に回す予算などない。
 また、そんな短小編成が半径45センチのカーブをくるくる回っているの見て哀れに思い、

「かわいそうに。ではキハ82をもう一両買ってやろう」

 などと考えるほど、私の両親は親切ではなかった。
 それはそうと排気管の話。
 キハ80系とは、要するに151系電車をキハ化した設計だから、床下の電気機器をバッサリと捨て、それをディーゼル機器に置き換えたもの。
 だから中間車の車体は、キハ80系も151系も限りなく共通に近いはず。
「はず…」ですよ、「はず、はず」
 だって、キハには排気管が付くんだもん。

 キハ80系は2個エンジン車だから、排気管も二つ。
 屋根のすみ。もう角っこに近いあたりにポンと開いている。車体前方に1個。後方にも1個。

 例えばモロ180とキロ80を比べれば、客用ドアの幅はどちらも700ミリ。 
 ところが平面図によると、そのドアから妻板までの距離が大きく違う。
 モロが、ドアから120ミリで妻板へ達するのに対し、キロはなんと350ミリ。
 つまりキロの妻板は、230ミリも余計に分厚いわけ。
 だって、ここに排気管が収容されているんだもん。
 ただし、排気管が通っているおかげで分厚くなるのは、妻板の「公式側寄り」の半面だけ。
 同じ妻板でも、非公式側寄り半面には、排気管なんて通っていない。

「だからって、排気管がない非公式側スペースを、ただ空けておくのももったいないよな」

「どうしよう?」

「せっかくだから、ここに何か置きますか?」

「何って何さ?」

「ゴミ箱とか」

 という会話があったかどうか。
 全部私の想像ですよ。
 列車内にゴミ箱を置くようになったのは、特急列車キハ化による副産物だったのかもしれません。
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