300系

文字数 1,353文字

 中学時代、鉄道模型であれ実物であれ、私と友人たちの会話の中心は、言うまでもなく国鉄型だった。
 国鉄以外に、私の家の近所を山陽電鉄が走っていたが、国鉄の車両は、クモハだキハだEFだと車種が分かりやすいが、山陽電鉄はそうはいかなかった。
 車体に書いてあるのは番号だけで、クハともモハとも表記がない。
 だけど眺めるうちに、運転台にあるブレーキ弁やマスコンが国鉄のものとそっくりであることに気がつくし、台車にいたっては、DT13と同一品が存在することまで発見する。
 そんなこんなで、国鉄も私鉄も車両には同じパーツを使用していることが見えてくる。
 山陽電鉄のツリカケ車は自連付きであったが、これも国鉄との共通品だったろうね。
 もちろん逆に、国鉄ではトンとお目にかからない台車が目につくようになったりもする。
 ボールドウィン台車とかね。

 そのボールドウィン台車をつけている連中の中で目に付いたのが、300系。
 旧型車を昭和30年代に車体更新して作った電車だから、シルヘッダーはなく、車体はつるつるで、窓もアルミサッシだが、お化けのQ太郎みたいな顔をして目玉が大きく(わかる?)、とにかく15メートルと全長が短く、かわいらしかったのだ。
 なぜ全長が短いかというと、私の想像だが、元が木造の旧型車だったから、車体更新工事とはつまり、元の同じ台車の上に、重い鋼製の車体を乗せることになる。
 しかしそれでは台車が重量に耐えかねるから、鋼製車体をなんとか軽量化しなくてはならない。
 そのために最も手軽な方法が、

『車体を短くする』

 だったのだろう。
 そういえば国鉄の話だが、クハ151を改設計したのがクロ151なのだろうけど、あんなにでかい窓をバンバンと並べては、車体強度が低下してしまう。
 それを防ぐために補強材をドンドン入れる。
 すると車体が重くなる。

「どうするね?」

「仕方ねえ。車体を短くしよう」

 という理由でクロ151はクハよりも短いのだと理解しているけれど、合ってるよね?
 それでわれらが300系のことだが、基本的には片運転台で、運用は3連のことと4連のことがあり、3連の時にはパンタが3つ上がっているから、すぐに全電動車編成だと分かる。
 これを私と友人たちは「オールM」と呼んでいたが、実は4連の時にもオールMなのだった。
 片運転台の300型の間に、330型という中間車が入るのだが、330にはパンタはないけれど、床下を見ればすぐに電動車と分かる。
 旧型国電でおなじみの制御機がついているからね。
 当時、山陽電鉄の電車は3連と4連ばかりで、300系の3連はいいけれど、300系が4連の時には問題が生じた。
 駅の停止目標が、いくらなんでも他の19メートル車4連とは共用できない。
 だから山陽電鉄のすべての駅には(乗り入れ先の神戸高速鉄道も含め)、3種類の停止目標が立てられていた。
 3連と、通常の4連はいい。ただ「3」「4」と書いてあるだけ。
 だけど300系4連専用の停止目標というのが別にあって、4の文字を丸でかこってあった。もちろん設置位置も通常の4とは異なる。
 鉄道会社というものは、どんどん車両の標準化を進め、私のような人間をがっかりさせてくれる。
 だけど車両の種類が多いと、こういう面倒や苦労も増すものだね。
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