客車の暖房

文字数 1,048文字

 夏なので、天邪鬼に旧型客車の暖房について考えてみよう。

・蒸気暖房
 機関車で発生した蒸気をパイプで導いてきて、客室を温める。蒸気機関車ならお得意。ただしD51などの戦時型は暖房管を省略して生産したそうなので、これにあたった乗客は大変な思いをしただろう。
 電気機関車とディーゼル機関車の場合には、特別に蒸気発生装置を積まなくてはならない。重い。邪魔。水回りがあるので腐食しやすい。取扱者はボイラー技士の免許が必要。
 といった面倒くささがあるが、もともと蒸気機関車の助手を経験した人はボイラー技士の免許を持っているので、運用上の面倒さは思うほどではなかったかも。
 機関車ではなく、石炭ボイラーを積んだ暖房車が蒸気を供給する場合もあった。

・電気暖房
 普通の意味の電気暖房とは、交流機はトランス、直流機は電動発電機で発生した交流1500ボルトを、電線でもって客車に引っ張ってくる。客車内では、それを200ボルトに落として使う。
 もう一種は戦前の電気機関車で、たぶんまだ沼津あたりまでしか電化していなかった時代。電気機関車から直接、直流1500ボルトを客車に引き込んだそうな。それをいくらに降圧して客室を暖めたのかは知らない。
 しかしこの当時、直流をうまく降圧する装置はまだ存在しなかったから、もしかしたら1500ボルトそのままだったかも。

・ダルマストーブ
 機関車と客車の間に貨車が入ってしまう混合列車など。

・石油温風暖房器
本によってウエバスト式(英語読み)、ベバスト式(ドイツ語読み)とも。
灯油を燃やし、できた温風をファンで客室へ送るものらしい。ダルマストーブと同じで、混合列車に使う。ただ私鉄の例を見ると、それなりに電源が必要だったようだ。
キハの暖房はそもそも、エンジンの排熱を車内に回す方式だったらしいが、ききが悪いので、キハ10系からはこの石油温風暖房器に変わった。

・暖房なし
 意外と存在した。和田岬線のオハ64は、見事なまでに何もついていない客車で、もちろん暖房もない。けん引はDD13だった時代が長いから、蒸気発生装置なんてもちろんない。


 紀勢線の西側終点が和歌山ではなくて、和歌山市駅だということはよくご存知であろうが、旧型客車の時代、上り列車はどうやって暖房したのかと思う。
 なぜって、例えば新宮行きだとして、EF58が連結されるのは和歌山からですぜ。
 和歌山市から和歌山までは、当時はまだ非電化で、たしかDD13のけん引だったように思う。水郡線のように暖房車を連結したわけでもなかろうに。

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