みかん

文字数 487文字


 私の学生時代には毎年、冬になると、

「ああ、今年も冬になったなあ」

 と感じる風物詩のようなものがあった。
 それが何かというと、

『ワムが、ドアをほんの少し開けたままで走るようになる』

 なぜかというと、全国的にミカンの出荷が始まるから。
 段ボール箱に詰められたミカンが、有蓋車の車内に山ほど積み上げられる。
 ミカンは青果だから、本来なら換気、通風が重要なのだろうが、あいにくと通風車をそれだけの数は準備できない。
 だからワムに積むのだが、密閉しては困るので、ドアを15センチばかり開けたままで走る。
 おそらく、そうやって半開きにするための金具が存在したのだろう。
 EF65の後ろに、そういった半開きワムがいくつもいくつもつながって走るのは、珍しい光景ではなかった。

「たかだかミカン輸送ぐらいで、貨物列車の様相が変化したりするものだろうか」

 とお思いの方もあろうが、和歌山県に存在した有田鉄道なんてところは、そもそもミカン発送のために建設された鉄道だったそうだ。
 だから当然、国鉄が紀勢線の貨物列車を廃止する日までDLを保有していた。ミカンと鉄道とは、それほど関係が深いのですぜ。
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