発見
文字数 410文字
タラコ色のキハ53に私が乗って、トンネルの中を走行していたと思ってくだせえ。
このトンネルはほとんど直線なので、運転台越しに前方を見ると、はるか彼方にトンネル出口が、後ろを振り向くと、遠くにトンネル入口を見ることができる。
キハは単行で、上り坂なのか、エンジンをガーガー言わせながら走っている。
その時に気が付いたのだ。
前方に見える出口は、普通に明るい陽の光の色なのに、後方に見える入口が、なぜか赤みがかって見えることに。
「あれっ?」
と思ってキョロキョロ何回も見回したから、間違いはない。
「おお、遠ざかってゆく後方のみが、赤みがかって見えるのだ」
ということは、もしやこれは、物理学に言う『赤方偏移(せきほうへんい)』か?
アインシュタイン級の大発見に、私はもう少しで卒倒しそうであったが、正解は違います。
後方の入口が赤みがかって見えたのは、ただ単に排気ガスのせい。
列車の速度ぐらいでは、赤方偏移は現れません。