こだま号
文字数 518文字
高校鉄研の先輩から聞いた話。
当時、先輩は大学生で、新幹線の車内販売のアルバイトをしていた。
ワゴンを押したり、両手に商品をかかえたりして、車内通路を売り歩く。
当時はまだ0系の時代だけれど、25メートル級車両の16連だから、全長400メートル。結構な距離ではある。
当時も今も新幹線には編成番号がつけてあり、ひかり用がH-○○で、こだま用がK-〇〇。
その数字が何番だったのかは忘れてしまったが、深夜、終電も近いこだま号Kのナントカ。
商品をかかえて売りに行く。
乗客は少ないといっても、そこは新幹線。席はパラパラと埋まっている。
食堂車を出発して歩きに歩いて、ついに先頭の1号車までやってくる。
販売員に対しては、みなさん後頭部を見せて座っている。
販売員は1号車を通り過ぎ、いったん前方デッキに出て、体の向きを変える。
そして、もと来た同じ道を帰り始める。
デッキの自動ドアが開いて、客室内の様子が見えてくる。ところが…
たった数秒前まではパラパラといたはずの乗客の姿が、今はもう手品のように一人もいない。まるで回送列車のように空っぽ。
「えっ?」
これが起こるのはいつも同じ編成で、車内販売員の間では有名なホラーだそうでした。