ヘッドライト
文字数 861文字
「ブラス」と「ヘッドライト」にどういう関係があるのかというと、これがあるんですな。
ここでいうブラスとは「しんちゅう」の意味で、金属の一種。5円玉に使われているあの金色のやつ。
ヘッドライトはまあ、ヘッドライトですな。
中学3年の頃、英語の教科書の文中に「ヘッドライト」という単語が使われていて、その文章をノートに訳す時、私はまったくなにげなく「前照灯」と記していて、
「何もそこまで訳さなくても、ヘッドライトはヘッドライトでいいんじゃない?」
と隣席の女の子から指摘を受けたりした。
指摘されるまで、私は本当に気が付いていなかったのだが、考えてみるとこれは、ある雑誌の影響であろう。
その雑誌というのが、かの「鉄道模型趣味」
私の中学時分どころか、昭和20年代から刊行されていて、現在でももちろん出版されている月刊誌。
おそらく鉄道模型趣味誌においては、「ヘッドライト」の代わりに「前照灯」が多用されており、私は知らぬ間にそれに慣れ、引きずられていたのだろう。
ではなぜ「ヘッドライト」ではなく、「前照灯」と表記するのか。
それはおそらく、文章を少しでも短くするためだろう。
鉄道模型の車両製作記事ではヘッドライトの構造、点灯、非点灯は必ず述べられるわけで、ただ1回、6文字が3文字に縮む以上の効果があるのだろう。
原稿というものは、長さを縮める工夫が必要になる局面もあるのだろうね。
同誌では同じように、金属の「しんちゅう」も必ず「真鍮」と書かれる。理由は前照灯の場合と同じだろうが、その結果、
「真鍮という活字をこの世で最もたくさん使っている雑誌は『鉄道模型趣味』誌であろう」
と、私はひそかに信じている。
単語の長さだけでなく、特許やパテントの問題もからもうが、同様な事情は戦車の雑誌でも見られ、それが何かというと…。
「キャタピラ」なんですな。
戦車とキャタピラは切り離せない関係にあるが、戦車雑誌ではこの言葉は使わない。
「履帯」と書きます。「りたい」と読む。
キャタピラという言葉は、キャタピラー社の登録商標なので。