20系
文字数 663文字
実は一度だけ、ブルートレインに乗車したことがある。
大学受験のために上京し、その帰路のこと。
受験日の前日に新幹線に乗って東京入りし、受験場所の下見をした後の午後は、交通博物館へ行って時間を過ごしていた。
受験の結果は不合格だったので東京暮らしをすることはなかったが、それはそうとブルートレインのことである。
20系の銀河だった。
大体私はへそ曲がりの変わり者だから、世間がいくらブルトレブームに沸いていても距離を取るというか、わざと背中を向けていたようなところがある。だからブルトレを撮影したことなどなかった。
この時乗車したのはもちろんナハネ20で、上段か中段か下段だったかは忘れた。
走行中は、とにかく寝付けずに困った記憶しかない。
真夜中にベッドから起き出して廊下に出てもすることはなく、全員が寝入っている車内に一人だけ目覚めているのが、どれだけ恨めしいことであるか。
唯一収穫だったのは20系のドアの構造がわかったことで、折戸式ではあるけれど、車掌がスイッチを扱うと、親指の先ぐらいの金属のツメがパチンと出て、ドアが開かないようにロックする仕掛けになっていた。
だがもちろん手動ドアであるから、最初に手で閉めていなければ、ツメが出ようが出まいが関係はない。開けっ放しで走行できる。
けん引がEF58だったか、PFだったかは忘れた。
私の思い違いでなければ、翌朝の8時ちょうどに大阪に着するというダイヤで、大阪駅構内へと進入しながら、私がいかにせいせいした気分であったことか。
もう二度とネには乗るまいと心に決めた。