エアセクション

文字数 991文字

 電車の運転台を客室からのぞき込んでいると、色々なことが分かる。
 架線電圧計というのがあって、架線にかかっている電圧を教えてくれる。
 基本的に1500ボルトのはずだけれど、よく見ると実は細かく上下している。
 1500ボルトの時も1400ボルトの時も、1600ボルトのことだってある。
 架線電圧はどんどん変化するのだ。

 で、今から書こうとすることは、間違っている可能性がある。
 でも「なら書くな」というお叱りはナシで…

 私が若い頃、線路には「エアセクション」がどうだといった標識は、まったく見られなかった。
 それが何やら最近になって目立ち始め、列車が駅間で緊急停車した時でも、いろんな手順があって再発車に手間取る。
 こういう手間も、私の子供時代には存在しなかった気がする。
 その理由なのだけれど…

ではそもそも、エアセクションをまたいで停車することが、なぜまずいのか?

パンタと接触している部分の架線が熱で溶けることがあるから

 なぜ?
 今たとえば、

クモハ + サハ + サハ + クモハ

 という編成があって、パンタはクモハに1個ずつついているとする。
 それがエアセクションで停車してしまった。

クモハ + サハ + サハ + クモハ
         ↑
       ここにエアセクションの切れ目

 この時、左側クモハと右側クモハの運転室にある架線電圧計は、異なる値を示しているはず。
 なぜって、左側クモハは左側セクションの、右側クモハは右側セクションの電圧を計っているのだから。
 仮にそれを、左が1400ボルト、右が1600ボルトだったとする。
 するとどうなる?

 電車にはたいがい主回路母線というのがあって、これがすべてのパンタにつながり、編成の頭から最後部の車両まで貫いて通っている。
 今は右側パンタの電圧が高いのだから(1600ボルト)、そこから入ってきた電流は200ボルトの電位差により、

右パンタ → 主回路母線 → 左パンタ → 左側セクションの架線

 へと走り抜けるはず。
 しかも電車は停車しているのだから、パンタすり板と架線の接触部はやがて熱を持ち、溶けてしまう。

 ということなのだと思うが、ではなぜ昔の鉄道では、エアセクションについてうるさく言わなかったのか。
 その答えはもしかしたら、ものすごく単純なのかもしれない。

「旧型国電には、主回路母線なんか、なかったんじゃないのか?」
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