アメリカン

文字数 599文字


 幼稚園児の頃、こんなことがあった。
 たぶん両親が、誰かの結婚の仲人をしたのだと思う。
 それで新郎新婦が礼をしたがったのだが、「ではうちの息子におもちゃでも買ってやってくれ」と両親は返答をしたらしい。
 そして父は私に、「何のおもちゃが欲しいのか?」と問うた。
「電気機関車」
 と即座に私は答えた。すでに立派な鉄道ファンだったのだ。
 私は楽しみに待ち、それが送られてきたが、大きな赤いボール紙の箱に入ったセットで、ロコとタキと車掌車だったと思う。
 もちろん線路もついていて、薄い金属板をプレスして作ったのが一周、それも『8』の字を描く形になっていた。考えてみれば、それなりに高価な商品だったのかもしれない。
 だが私には不満があった。両親にはもちろん、誰にも言わなかったが、
「これは電気機関車じゃない!」
 その通りで、入っていたのはDLだったのだ。しかも国鉄型ではなく、アメリカ型の。
 現在では考えられないことだが、昭和30年代の日本はまだまだ輸出専業の国であり、おもちゃなどもアメリカに輸出して稼いでいた。
 そのアメリカ向けおもちゃの一部が国内マーケットにまわるという感じで、私の機関車がアメリカンスタイルをしていたのは当然のこと。ついていた車掌車だって、カブースだったから。

 もっと後のことだが、トミックスとはまだ言わず、トミーという名で最初に発売されたNゲージロコもアメリカタイプのDLでしたっけ。

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